ゆっくりしていこうぜ
翌日、俺達が歩いていると家電量販店で新型の音声読み上げソフトの店頭販売を行っている店員がいた。
「大変そうだな。」
「そうだな。どこかの誰かと違って、毎日働いているからな。」
「まるで人のことを無職みたいに言いやがって。」
「まるで、ではなく事実だろう。」
俺達が他愛もない話をしながら、店員の言葉に耳を傾ける。
「こちらの新作発声プログラム、制作者はあの有名な声帯学者で、今回の交響祭の参加者でもあります、ティーヤ氏によって作成されたものになります!」
店員の言葉に耳を疑う。まさかそんな奴まで参加しているのか。
「ラヴェーラ、聞こえていたか?」
「ああ、と言うより、声帯学という分野があることに驚きだ。」
「それは俺も同じだ。少し気になるし、買ってみていいか?」
「それで何をするんだ?」
「こっちの世界の読み上げプログラムの性能を知りたくてな。」
「どうせお前には、イースティア記念博物館を騙して手に入れた金があるのだから好きにすればいい。」
「騙したとは人聞きが悪いな。地球の一国家が扱っていた独自の通貨なんて、この世界にとっては特別な物だろ。」
「相変わらず、そういうことに対しては口が達者だな。」
「そうかよ。」
そう言い、俺はパソコンに該当するものと、例のソフトを購入し、一度ホテルに戻る。
「それで、使い方は解るのか?」
「知るわけないだろ。こういうプログラムを利用した動画はよく観ていたけど、自分でいじるのは初めてだよ。」
とりあえず、ソフトをインストールして早速音声の編集をしてみる。まずはデフォルトで試してみることにする。
〝どうもこんにちは今日も早速解説を始めていこうと思うよ〟
やっぱり、感情の起伏もなくただ文字の羅列を読み上げているだけにしかならない。
「なんだか、変な感じだな。」
「あくまで初期設定だからな。それでも、調整機能が豊富で初心者でも扱いやすい。ちょっと見ていてくれ。」
文章も含めて少しいじって再度音声を流す。
〝どうも、こんにちは。今日も早速だけど、解説をしていくよ。〟
とりあえずダウナー系で調節してみたけど、一応は成功か。それにしても、結構無茶目に調節したけど、耳障りだと感じないのは流石は学者が作ったソフトって所か。それにしても、声帯学者という話を聞いたが、歌の実力はどんなものなのだろうか。
「今、製作者のティーヤについて調べてみたが、20年ほど前には有名な歌手として流行っていたほどらしい。」
既にラヴェーラが調べてくれていたが、有名な歌手か。これもまた強敵だな。




