こっちの世界のVライバー
暫く歩いていると食事時になり、俺達はホテルに戻って広間で食事を取り始める。コース料理と言うほどではないが、食べ応えのある内容で驚く。
「ラヴェーラ、俺の分を少し食べてくれないか?」
「どうしたんだ急に?」
「俺はそんなに食べられないし、ラヴェーラは体を動かしていて俺より栄養を取るべきだと思ったから聞いているんだ。」
「それなら好意に甘えよう。」
俺はそのままナイフで切り分けられる料理の一部をラヴェーラの皿に入れる。
「部屋に戻ったら射影機で情報でも集めよう。」
俺達が話していると、配膳担当のスタッフらしき子がやって来る。
「救世主様、それならインフォの動画配信がオススメですよ。今話題の電脳歌手が今夜重大発表をするみたいですし。」
電脳歌手?Vライバーみたいな奴か。
「こっちの世界にもいるんだなぁ…」
「ん?どうしたんだ?」
「いや、俺のいた世界にも電脳歌手に相当するのがいて、というより大量にいた。」
「ほう、一人で出来る職として認識されるとは、凄いものだな。」
「まさか。生き残れているのなんて企業に所属している奴だけだよ。ここみたいに対抗してくる相手のいない場所なら画期的でそれこそ生業に出来るだろうが、俺の世界では何百と乱立しているから、ちょっといい声だと思って調べると所属事務所ありなんて普通だ。」
「難しい話だ。私には解らん。」
「そうか。嬢ちゃん、その配信って何時から?」
「今から一時間後です!」
「ありがとな。」
スタッフはキッチンへ入っていく。
「じゃあ、食べ終わったことだし、その配信者の動画とやらでも見てみるか。」
配信の前に、どんな歌を歌っているか気になる。
「そういえば、その配信者の名前を聞いていないが調べられるのか?」
「ラヴェーラは軍事的知識はしっかりしているけど、こういう方面はまだまだだな。こういうのって大体、〝電脳歌手〟って検索をかければ一発だ。」
予想通り、“カーン;電脳歌手ミ☆”とかいうチャンネルが出てくる。チャンネル登録者は大体35万人くらいか。
「とりあえず、一番再生されている歌から聞いてみるか。」
俺はトレンド入りしている音楽を流し始める。
「♪だから探しているんだよ キミの無くした思い出 その情熱も…」
声は俺と大差ないくらいの男性の声で、曲調は十年前のJ-POP的な感じか。で、コメントの方は随分と痛いものが多いな。他の曲のコメントも似たり寄ったりで、何かを探している、若しくは気付いてもらおうとしている雰囲気を感じる。そうこうしていると、ライブ配信の時間になり、動画を開く。
「みなさ~ん、こんばんは!カーンの部屋に、ようこそ♪」
この年齢でこの言動に熱を上げる奴がいるのかよ…
「さっそくだけど、今日は重大発表があって緊急生配信にしました!この度、電脳歌手カーンは…」
こういう溜め、好きだよなぁ。
「交響祭の候補者に選ばれました!」
やっぱり、そう来たか。シュク、こいつは強敵だぞ。
「みんな、投げレニーは早いって!みんなが気になっていると思う顔出しはするのかだけど…しません!カーンはいつも通りの手法を貫きます!顔出しは応援してくれているみんなのことを裏切ることだと思っているから、しないと決めました。当日は安心して聞いてね♪」
こっちにもスパチャがあるのか。それより、これは大変なことになりそうだな。




