十年前の不作
俺とラヴェーラが二人で歩いていると、門番が言っていた交響祭のポスターやチラシが至る所にあり、力の入れようがよく分かる。
「本当に平和そうだな。」
ラヴェーラの言葉通り、争い事とは無縁そうで平和に見えている。そんな風に考えていたが、あるものを見て立ち止まる。
「ちょっと待て。」
「どうした急に。」
俺はポスターのあるところに指を指す。
「これ、若しかして。」
「ああ、この祭りが一年に一度だとしたら、伝統的な行事でも何でもないって事になる。」
ポスターには〝第十一回〟と書かれていた。これがオリンピックみたいに数年に一度開かれる行事なら、それなりの年数は経っていることになるが、年一度の開催ならまだ十年しか経っていない事になる。
「若しかしたら、この交響祭ってやつに、なにか手がかりがあるかもな。」
「だとしてもだレイ、ただの祭りに何の手がかりがあると言うんだ?」
「それは解らない。だから誰かに聞いて手がかりを掴むしかないだろ。」
そんな話をしながら歩いていると、路地裏で歌っている高校生くらいの男子がいた。
「ちょうどいいからあいつに聞いてみよう。」
俺達は男子に近づく。
「歌っているところ悪いけど、ちょっと教えてほしいことがあるんだ。」
俺の声に気付いた男子は歌を止めて俺達の方を向く。
「貴方達ってもしかして、今話題の救世主様達ですか?」
「そうだけど。」
「俺に答えられることなら何でも聞いてください。」
「交響祭の事なんだけど、あれってどういう切っ掛けで始まった祭りなんだ?」
「あまりいい話ではないんだけど、今から十年前に、大規模な作物の不作になったんだ。国家全体で困っていたとき、国王にあるお告げがあったんだ。」
「お告げ?」
「一年に一度、国から一人の美女と十人の男を選び、男に歌を歌わせ、女性が共鳴した男と番になる時、国は豊作になる。そんなお告げです。もちろん、最初は信じていませんでしたが、飢餓が始まると、国民も木の葉にもすがる思いでお告げを実行しました。すると、恵みの雨が降り注いで大地に作物が実り、このお告げは交響祭と名前を変えて、一年の豊作を祈る祭りになったんです。」
「祭と名前に入っているけど、内容は神事というわけか。」
「シンジ?なんだそれは?」
そっか、こっちの世界には無い言葉だったな。
「俺達の世界の言葉で、神への祈りや祝い事の類を、神への行事という意味を込めて神事と言うんだ。」
まあ、実際はもっと細かい内容になるけど、ラヴェーラ達に説明するには、これくらい緩い内容の方が解りやすいだろう。
「レイのいた世界は随分と神に対しての扱いが特別なんだな。」
「とは言っても、それは俺の住んでいた国での話で、俺のいた世界では国ごとに教えや崇拝する神も違って、それが原因で争いが絶えなかったけどな。」
「そこまでなのか?」
「そうだな。今はそんなことはないが何百年も昔だと、信仰する神が違うからというだけで滅ぼされた民族や国も存在していたほどだ。」
「随分と恐い世界にいたものだな。」
「まあ、今はそこまでではないよ。それより、歌の練習をしていたって事は、交響祭に出るのか?」
俺は話を男子の方に戻す。
「はい!今年の姫巫女は俺の幼馴染みで、学校を卒業して仕事を始めたら結婚しようって決めていたんだ。だけど、姫巫女に選ばれてここしか機会がないから、頑張っているんだ!」
男子は熱く語る。
「そっか、頑張れよ。そういえば、名前はなんて言うんだ?」
「俺?シュクって言います。」
「そうか、名前は覚えた。邪魔して悪かったなシュク。ラヴェーラ、そろそろ行こうか。」
「そうだな。迷惑をかけた。これで失礼する。」
俺達は一人目の参加者、シュクと別れて大通りへ戻った。




