解決はあっけなく…
バックルームの廊下を走っているとダイスの独り言が聞こえてくる。
「この部屋だ。この部屋に人一人くらいは余裕で入ることの出来る機材が置いてあった記憶がある。」
俺達はダイスの声が聞こえる部屋に入る。
「とうとう見つかってしまったか。何が目的だ?俺はこれから研究の最終段階に入るつもりだ。用があるなら手早く終わらせてくれ。」
ダイスの奴、こんな状況でも自己中な事を言うのかよ。
「ダイスさん、叔父さんはこれから自首します。」
「知っているさ。三日前、君を追い出してから直ぐに連絡が来たからな。」
「ダイスさんも自首して、罪を償いましょう。」
「罪の意識があるなら、最初からこんなことはしないと思わないのか?」
こりゃ、説得は無理そうだな。
「おいダイス、そのでっかい機械は何だ?」
ゼンリンは俺の聞きたいことを聞いてくれる。
「相変わらず好奇心旺盛だな。十年前、国家主導で行われた大規模実験があった。お前達も記憶に新しいだろう。」
「それがどうした。」
「この装置は、その時の問題点を改善した完成品さ。」
こいつ、コールドスリープの技術を開発したんかよ。俺達の世界でも完成には至っていないぞ。
「何を馬鹿なことを言っているんだ。人を冷凍保存して病気の進行を遅らせることは、どんな医療でも不可能だって結論が出ただろ。」
そういえば、ショットは元医者だったな。
「お前達医師会はそうやってすぐに医学の欠点から目を逸らす。俺の両親の時だってそうだ。」
「両親?ショット、何か知っているのか?」
その情報は流石に初耳だ。
「ダイスの両親は、現代医学では説明できない謎の病に侵されていた。」
「謎の病?ふざけるな、悪性細胞増殖症の症状が出ていたのを、お前達はこの年齢で発症するのは有り得ないと言って見殺しにしただけだ。」
癌患者だったのか。癌なんて、人によっては三十代で出る人もいるから、年齢で判断は出来ないよな。その程度で医療国家を名乗っていたのかよ。
「なるほどな。で、ダイスはどんな病気を患っているんだ?話を聞く限り、頭の病気か?」
「レイ、失礼にもほどがあるぞ!」
やべっ、言い方に問題があった。
「脳腫瘍だ。それも、小脳に近い場所で、現代医学では摘出方法が無い。だからこそ、俺は両親を死なせた現代の医学ではなく、遠い未来にすべてを託す道を選んだ。その為にこの国を利用した。そして、完全な冷暗装置を完成させることに成功した。さて、話はここまでだ。ここまで長かった。十年前、あの時に謎の電波攻撃を受けなければ、年を取ることもなかった。本当に、医学の世界には失望したよ。」
ダイスは装置に入る。
「おい、ダイス!」
ゼンリンは近づこうとするが、ダイスは円筒を投げて妨害する。
「お別れだ、栄誉ある上位プレイヤー、我が親友ゼンリン、そして愚かな救世主様♪」
ダイスは俺達を嘲笑うように言い、装置の扉を閉め、装置を起動させる。
「ダメだ、開かねぇ!」
装置の扉は頑丈で、俺達全員で引いても、ラヴェーラの武器でも壊すことが出来ず、すべてが闇の中に消えてしまった。
それから数時間後、ナガレによる記者会見が開かれた。内容をザックリ纏めると、十年前に起きた事件の後、ダイスの実験を継続させるためにミラージュという架空の人物を作り上げ、ミラージュの経営する会社に国庫金から横流し。それをすっぱ抜いたゼンリンの勤めている会社を倒産させて、その上でゼンリンの人権を踏みにじったこと。それらの責任を負うために国家局長を辞任し、警察へ自首すること。そして、最後の局長権限で、国民総賭博師法を撤廃することだ。
「救世主さん、もう行ってしまうんですか?」
俺達の見送りに、エンジン達元上位プレイヤーやその関係者達が集まっていた。
「忙しいからな。それより、折角追っていた夢を諦めて良かったんか?」
「はい。悪いことをしっかり悪いと言えない人が、教師になって人に善悪を教えられませんから。」
エンジンはしっかり者だなぁ。
「だってさ、バスターさん。」
「うっ、それは…」
なんか、ダスターとダークの雰囲気がちょっといい感じになっているんですけど。
「おや?お熱いですねぇ?」
ちょっと茶化してみる。
「私、もう一度バスターさんと向き合ってみようと思います。向き合って、割れ物を扱うような扱いをすることが大切にする、愛することではないと説得してみせます!その一歩を踏み出させてくれたのは、間違いなく救世主様です。本当に、ありがとうございました。」
ダークの深々とした礼を見て、こっちが恥ずかしくなる。
「どうやら、これでこの国も救えたみたいだな。それじゃあ、世話になったな!」
ラヴェーラに指示を出して車は進み、城壁を出てセイスティアから離れていく。
「この国でも、十年前に事件があったのか。これで次の国でも十年前に何かあるようなら、この星の秘密が、何か集中しているかもしれないな。」
「レイにしては冴えているな。それなら、次はここから一時間ほどで着くことの出来るロバルテオという国に向かおう。」
なんか一言多いけど、ラヴェーラは車の速度を上げて荒れ地を進んでくれた。




