強くてスケベでやべー奴
俺がこの世界に来て大体三日。俺も少しずつではあるが、この世界のことを理解し始めた。
「そういえば、この星に名前ってあるのか?ずっとこの星としか言っていなかったけど。」
荒野を歩いていた俺はふと思い出したかのようにフルールに質問する。
「いえ、みんな昔からこの星としか呼んでいなかったです。」
「なるほど、天文学はそこまで発達している訳では無いか。」
「天文学はそれなりに発達しているとは思います。ただ、この星は私達に身近すぎるせいか、あまり星の名前に拘ろうとしないのですよ。」
フルールは笑顔で答える。
「そうなのか。」
俺達は談笑を盛り上げている。すると、前方からものすごい数の車が現れ、俺達の前で止まる。
「なんだ、この車?」
俺が疑問に思っていると、ラヴェーラは露骨に嫌な顔を見せる。
「この車、あいつか…」
ラヴェーラが呟くと、車の中から見た目高校生くらいの少女がベルとたいして歳の変わらない少女を連れて現れる。
「久しぶりね、ラヴェーラ。私のモノになってくれる覚悟は出来たかしら?」
「相変わらずおぞましいことを言うな、ラフワール。」
少女の言葉にラヴェーラは嫌悪感をみせる。
「なぁラヴェーラ、あいつ誰?」
「あいつはラフワール。サーティアスの覇王を名乗っている奴だ。」
ラヴェーラは俺の質問に小声で答える。
「じゃあラヴェーラが言っていた戦闘狂の色狂いはあいつってことか。」
俺はそんなことお構いなしに喋る。
「ちょっと、レイ!」
ラヴェーラは慌てる。
「はぁ、これだから男は。いい?此方に居られるは、サンレイド復興と統一のためにその身を犠牲にしてでもと立ち上がりし私達の王、ラフワール様でございます!男が愚弄してよいようなお方では無いのよ!」
従者の少女は誇らしげに言う。
「バン、貴女はいつも誇張表現が過ぎるわ。ねぇラヴェーラ、あなたの隣にいるその男が、この星の救世主とかいう男なのでしょう?」
「そうだが、それがどうした?」
「一人が寂しくて不安なら、その男も私が招き入れてあげるわ。だから私のモノになってよ。」
「いや、レイの存在の有無は関係なく貴様のモノになる気は無い!」
なんか、俺のことをお菓子のオマケみたいに扱うラフワールもだが、はっきりどうでもいいみたいに扱うラヴェールの対応にも悲しくなってくる。
「そう、仕方ないわね。なら、力尽くでも私のモノになってもらうわ。」
ラフワールは車に仕舞い込んであった戦斧を取り出す。そして、そんな巨大な武器を持っているとは思えないスピードでラヴェーラに突撃する。
「はぁっ!」
ラフワールはラヴェーラの薙刀を砕くために力を込めた一撃を放ち、それを読んでいたラヴェーラは咄嗟に屈んで攻撃を避け、後退する。
「ラヴェーラちゃん!」
「ラヴェーラお姉ちゃん!」
フルールとベルはラヴェーラをフォローするために武器を構える。しかし、
「ウィンド、グランド、行きなさい!」
バンが指示を出すと、トンファーを構える男と巨大な大剣を軽々と振るう男が現れ、トンファーの男はフルールを、大剣の男はベルを攻撃する。
「ベル殿、相手は俺だ!」
「グランド、相変わらずしつこい!」
大剣の男、グランドは迫るようにベルに大剣を叩きつけようとするが、ベルは必死に攻撃を躱す。
「フルールさん、貴女に恨みは無いが、俺達もラフワール様の寵愛を受けられるかが掛かっている。手加減はしませんよ。」
双剣の男、ウィンドは素早い剣捌きでフルールを圧倒する。
「どうしたのかしら、ラヴェーラ?貴女の実力はそんなものでは無いでしょう?」
ラフワールは戦斧を持っているとは思えない軽快な動きでラヴェーラを圧倒し、ラヴェーラは防戦一方となってしまう。
「ラヴェーラ、今助けに!」
俺はラヴェーラを助ける為に突撃しようとする。しかし、バンが口笛を吹くと、何が俺にぶつかってきた。
「痛ぇ…一体何だ?」
俺が頭をあげると、そこには俺と同じくらいの背の少女がいた。
「ラフワール様には、指一本触れさせない!」
背の高い少女は拳を構える。
「だったら、先手必勝だ!」
俺は勢いよく少女に飛びかかり、殴ろうとする。拳は確かに少女の腹部を殴っていた。しかし、少女は眉一つ動かさない。
「鍛え方がなっていない。いや、そもそも鍛えてすらいないか。」
少女は冷ややかな視線を向ける。
「なんの、これでどうだ!」
俺は何度も少女の腹部を殴るが、少女は俺の手首を掴むと、俺を持ち上げた。
「軽いな。それに筋肉の量も足りていない。」
少女はそう言うと俺をラフワールの所に投げる。
「デスベロス、よくやったわ。今日の一番最初は貴女ね。」
ラフワールは上機嫌になり、俺を踏みつけながら言う。
「デスベロスの奴、今日の一番を手に入れるなんて。それにあの男、私だって踏まれた事は数回しかないのに、初対面で踏んでもらえるなんて、羨ま…けしからないわ!」
バンは俺のことを睨みつける。
「さぁラヴェーラ、大人しく私のモノになるか、救世主を私に差し出すか、選びなさい?」
ラフワールは笑顔で言う。
「私は…」
ラヴェーラはラフワールに近づこうとする。
「やめろ!ラフワール、連れて行くなら俺を連れて行け!お前に踏まれるの、確かに気分がいい!」
俺はラヴェーラが惑わされないよう、咄嗟にそんなことを口走る。
「レイ…貴様がそこまでの変態だなんて!見損なったぞ!ラフワール、そんな変態ならいくらでもくれてやる!」
ラヴェーラは泣きながら叫び、フルールとベルを連れて逃げていく。
「貴方、もしかして自分が思っているよりお人好しかしら?自ら嫌われて、逃げてもらうなんて、性根の腐った奴には出来ないわ。」
ラフワールは倒れている俺のことをのぞき込むように見る。
「よせよ、本当にお人好しなら、最初から自分を差し出しているだろ?俺はただ、サーティアスとお前のことが気になっただけだ。なにより、サーティアスにはお前の選んだ美女がいるんだろ?そいつも全員見てみたいからな。」
俺はニヤけながら言う。
「面白いわね。いいわ、今夜は私が直々にサービスしてあげるわ。ようこそ、サーティアスへ。」
ラフワールは笑顔で言った。




