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賊との遭遇

 「それにしても、街と荒れ地とで落差が激しいな。」

 食事を済ませた俺達はまた荒野を歩いていた。

 「この辺り一帯は研究施設があった場所なので、爆発の影響もあってまだ荒れ地のままなんです。みんなが争わないで、もっと協力出来れば、きっとここも前みたいに穏やかな場所になると思うんです。」

 フルールは穏やかな表情で言う。

 「なんか、新鮮だな。」

 「えっ、どうしたんですか?」

 「いや、俺の住んでいた世界では、フルールくらいの歳の子で、そんな優しい考えを持っている子はあまりいなかったから、珍しいなって。」

 俺はフルールの疑問に答える。

 「そう言えば、レイの住んでいた世界の子供はどんな考え方だったんだ?」

 「そうだな、あんまり褒められるようなものではないな。」

 「そうなのか?」

 「そうだな、それこそ俺が生まれるよりも昔はそうでも無かったが、海外の価値観が入ってくるようになってからは自由と身勝手を履き違える奴が増えてきた。実際、俺だって好き勝手やり続けていたくらいだ。俺の住んでいた国は世界でも裕福な方に含まれていた。だが、裕福なら必ずしも平和で幸せになれる訳ではない。俺の国でも、子供同士の虐めが横行していた。」

 「なんだ、そのイジメってものは?」

 「弱そうな奴や、抵抗してこない奴、反応が面白そうな奴、気に入らない奴を見つけて、一方的に殴り続けたり、所持している物を壊したり、言われたら傷つくことを言ったりする、そこら辺が一般的な事か。詳しく言うと他にも該当する事は幾つもあるが言うのが面倒くさい。」

 俺はラヴェーラの質問に答える。

 「そんなもの、ただの犯罪行為ではないか。学校で行われているのだろう?何故先生は咎めようとしない?」

 「大人は卑怯なものでな、自分が面倒事に巻き込まれたくないから、『そんなものはうちの学校では起きていない』で終わらせる。もしその実態が発覚したら自身の評価が落ちて、辺境の地に左遷されるなんてこともあるからな。」

 「学校が頼れないなら警察に被害届を出せばいいだろ?」

 「それは無理な話だ。俺の国には未成年を法で裁けない少年法ってやつがあって、それに守られているからやりたい放題だ。それに、未成年が罪を犯しても捕まるのは保護者だ。罪を犯すような子供は口煩い奴がいなくなった程度にしか思っていないから平気で次の虐めの標的を探す。一応、そういう子供を更正させる施設もあるにはあるが、大抵は更正したふりをして施設から出るから、大した成果は出ていない。」

 「随分と詳しく語るが、レイもそのイジメとか言うやつに参加していたのか?」

 「いいや、俺は我関せずを徹底していた。虐めをする利点も無いし、ただでさえ標的にされてもおかしくないのに、変に庇って標的にされたくもないからな。」

 「本当にどうしようもない奴だな。それにしても、どうしてそんなことが起きるんだ?レイの国は裕福なのだろう?」

 「裕福だからこそ、なのかもな。」

 「どういうことだ?」

 「動物は常に死と隣り合わせで縄張りを争い、討ち取った敗者を肉とする。当然、人間にもそれは本能に残っている。だが、食料は安定して入手できる。縄張りは家という形で存在しているから争うこともない。その結果、争いたい本能だけが歪な形で残り、それを自制できない子供が、狩猟の真似事のように虐めを行う。そんなところだろう。」

 「とは言ってもだな…」

 俺の話を聞いてラヴェーラは腑に落ちないところがあったのだろう。そんなことを話しながら歩いていると、

 「おっ、こんな所で売れそうな奴がいるじゃねえか!」

 「イースティアで救世主が生まれたって話を聞いて、まさかと思ったが、やっぱり救世主に縋るガキがいたか。」

 「親分、あん中で売れそうなのは二人しかいやせんぜ!」

 デブ、のっぽ、チビの三人組が現れる。どうやら、デブがリーダーらしい。

 「それだけいれば充分だ。あの小っこいがきんちょは今のうちから育てればいい労働力になるだろう。それに、あっちのメデューな嬢ちゃんは出るところが出てるし、顔も童顔で受けもいいだろう。なんなら、俺達で味見してから売るってのもアリだな。」

 デブは下品な目でフルールを見る。どうやら、人身売買を商売にしているらしいな。

 「フルール姉さんとベルのことを色々と言っているようだが、私には何かないのか?」

 そんな中、ラヴェーラはデブ達に疑問を投げかける。

 「は?あるわけ無いだろう。髪の毛だけは綺麗だから、老婦用のカツラにするって選択肢はあるが、設けにはならないな。その貧相な身体じゃ、一部の物好きにしか売れないしな。だったら、ここで殺して身ぐるみ剥いで売っ払うてところだ。」

 デブはラヴェーラを見て笑う。

 「そうか。見た目でしか人の価値を計れない愚か者か。ベル、奴らを成敗するぞ!」

 「ラヴェーラお姉ちゃん、わかった!」

 ラヴェーラは薙刀を構え、ベルは何処からともなく槍を取り出す。

 「フルール姉さん、レイを頼みます!ベル、小柄な方は任せましたよ!」

 「りょーかい!」

 ラヴェーラはのっぽに突撃する。

 「自ら死にに来るとは、度胸だけは認めてやるよ!胸は無いけどな!」

 のっぽはラヴェーラの薙刀を双剣で受け止める。

 「おいおい、槍が二人とか、無策な奴らだな!」

 チビはダガーナイフを逆手で持ち、素早い動きでベルの攻撃を避ける。

 「お前達、距離は考えろよ!」

 でぶは弓を構えながらのっぽとチビを叱る。

 「分かりやしたぜ、親分!」

 チビはベルの攻撃を避けると、俺達に向かって突撃してくる。

 「救世主様には指一本触れさせません!」

 フルールは両手で大ぶりな剣を握り、チビの攻撃を受け止める。

 「ぅおおおらぁっ!」

 ラヴェーラはのっぽ達の言葉に怒っているのか、凄まじい勢いでなぎ払い、のっぽは咄嗟に双剣で受け止めようとするが、薙刀の刃の勢いで双剣は砕け散る。

 「のっぽ、大丈夫か!」

 チビはのっぽに気を取られる。それなら、俺に出来ることは一つだけある!

 「これでも、くらえ!」

 俺はラヴェーラの荷袋でチビの脇腹を思い切りぶっ叩く。勿論、中の大量の砥石を入れたまま。

 「ぅぐ!」

 荷袋はチビに見事にヒットし、チビは呻き声をあげながら倒れる。

 「お前達、大丈夫か!」

 デブはチビを背負い、のっぽに肩を貸す。

 「てめぇら、覚えていろよ!」

 デブ達は煙幕を展開して退散した。

 「レイ、なかなか思い切った事をしたな。まさか、私の荷物を鈍器にするとはな。本来なら血祭りにあげているが、フルール姉さんを守ったんだ、許してやろう。」

 ラヴェーラは笑顔を見せる。

 「そういえば、あいつらの言っていたメデューってなんだ?」

 俺は聞き馴染みの無いこの世界の言葉について質問すると、恥ずかしさからか、フルールは顔を真っ赤にして俯く。

 「レイ、女性にそれを言わせようとするとは、やはりただの変態か!」

 一方ラヴェーラは怒りで顔を赤くして俺の胸ぐらを掴む。

 「ラヴェーラお姉ちゃん、落ち着いて!お兄ちゃん、メデューって言うのは、子供みたいな見た目でおっぱいが大っきい人のことをそう言うんだよ。」

 ベルは自信満々に言う。マジか、流石にそれはまずいな。

 「非常識なことを聞いてすまない!」

 俺は咄嗟に謝る。その後、なんとかラヴェーラの怒りは収まってくれて、俺はこの世界の言語をまた一つ学んだ。

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