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その頃、ゼンリンは…:宙吊りの回想3

 それからは本当に辛い日々だった。ダイスは俺のことを嘘つきの国家内乱者だと触れ回って、記者としての俺の信用を奪っていった。

 「俺達のことを口外すればどうなるか、賢い君なら解るだろう?」

 俺はそれに従うしかなかった。そんな事から五年経つ頃だった。イースティアで救世主が降臨したという話を聞いたのは。

 「近々、我が国にも救世主が訪れるだろう。君には情報屋として活動してもらいたい。もちろん、レリーフとしての活動は続行してもらうが。」

 救世主、今はまだ三国を統一するために奮闘している最中だってのに、もうこの国に来ることの算段を立てているのか。

 「解りました。お仕事いただけること、ありがたく思います。」

 俺は深々と頭を下げる。そう、救世主と接近させてもらえるなら、この国の国民の目を醒めさせる事が出来る。そう思っていた。それから数ヶ月後、射影機で三国統一の光景が映されていた。

 『緊急速報です。十年前、科学施設の爆発事故で分断されていたイースティア、サーティアス、ウェステリアの三国が救世主主導の下、連名協議書に署名がされ、新生サンレイド公国として、国家統一されました。』

 射影機に映る救世主の顔は間抜け面で、とても信用して良いものか悩んでいた。そんなことを考えて二日後、救世主はセイスティアにやってきた。

 「来たぞ、君の役目は解っているな?」

 「あの救世主が気付く前に、真実に近づけないこと、ですか?」

 「察しがいいな、頼むぞ。くれぐれも、真実に近づけないようにしろよ。」

 俺はダイスからの指示を受け、救世主に近づく。ただ、真実から遠ざけるつもりはない。俺はずっと待っていたんだ。救世主伝説は嘘だと思っていた。今まで降臨した救世主の話は聞いていたが、各国が自身の覇権を誇示するためにでっち上げているものだと思っていた。でも、レイの働きを見てこいつは救世主で間違いないだろうと思った。だから、俺は情報を小出しにして少しずつ真実に近づけるように、騙されている国民を救世主に救ってもらうために尽力した。

 「この国に関する事実を何故救世主に話した?」

 「事実はほとんど話していない。それに、話した内容の大部分が嘘なのはミラージュが一番解っているはずだ。一部の事実に大部分の嘘を入れるのは効果的なんだ。」

 「流石は元記者といった所か。引き続き頼むぞ。」

 それからも事実を伝えることに必死になり、救世主は応えてくれた。そして、国の中で発言力のある上位プレイヤーを二人までは懐柔した。あとは、ナガレ局長の甥っ子をどうにか出来れば、きっとこの国の未来は明るくなる。─


 回想を終え、ゼンリンは立ち上がる。

 「さて、そろそろ決着が近づいてきているな。ブレイ、お前の仇も取れるからな。」

 ゼンリンは弟と最後に撮った写真を見ながら歩き出した。

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