その頃、ゼンリンは…:宙吊りの回想2
新聞の一面を飾ったのは良かった。そこまでは今までと変わらない。これで国民の目が覚めれば、国会で審議の追求がされれば、みんながセイスティアの異常性に気付いてくれる。そう思っていた。だけど、現実は甘くなかった。
「どういうことだよ、これ…」
翌日、俺の勤めていた新聞社は会社倒産、資料はすべて差し押さえ、昨日の新聞は自主回収になっていた。唖然としている中、俺のインテリジェンスフォンに一本の電話が入ってきた。
「はい…」
『非通知での通話で申し訳ない。国家行政局長のナガレと申します。』
電話の声の主はナガレ局長だった。まさか、局長が会社を?考えすぎか。
「局長が何故自分なんかに電話を?」
『詳しい話は電話ではなく、直接会ってお話ししよう。もうじき迎えが来るだろうから、待っていてほしい。』
電話はすぐに切られる。嫌な予感がしていたから、直ぐに録音機能を入れ、迎えとやらの到着を待つ。それから五分後くらいに一台の車が到着する。
「動きは監視済みってことか。」
車から一人の男性が俺の所にやって来る。
「お待たせしました。こちらへ。」
男性の案内を受け、俺は車に乗り、その車は国家行政局に向かう。
「ここで間違いないんだな?」
俺の言葉に男は答えることなく扉を開け、俺に出るように促す。
「待っていたよ、ゼンリン君。さあ、こっちへ。」
俺はナガレ局長の誘導を受け、会議室に入る。
「やあ、初めまして。」
中にはダイスの奴がいた。
「どんな茶番だ。」
俺は悪態をつきながら椅子に座る。
「さて、私とミラージュ氏との不正な取引、違法献金があるという話だけれど、具体的にはどう違法性があると考えているのかね?」
「早速本題ですか。ダラーミレニアム社が国民総賭博師法で得た利益を国家での買い上げを行うことが法で約束されていますが、法制定から今年までのダラーミレニアムの利益と本法における国家支出額に著しい乖離性を確認いたしました。それも、億単位で。この億単位の金額はどこから捻出されたのですか?そして、その動いた金の所在は現在どちらに?」
俺の質問に口を開いたのはダイスだった。
「ゼンリン、君はこの場を記者の単独取材の場と勘違いしているのか?身の振り方は気をつけた方がいい。」
「そういうことかよ。それで何が目的だ、ダイス?」
「人違いだ、俺はミラージュであって、ダイスではない。ただ、君の疑問に答えるなら、現状の法では賭け金の移動が少ない。そこで、君には賭けを大きく動かす敵、レリーフになってほしい。」
「レリーフに?ならないって言ったら?」
「君はそこまで馬鹿だったか?俺の知っている君は事実を突き止めることに貪欲だったはずだけれど。」
こいつ、どこまでもミラージュとして生きていくつもりなんだな。
「つまり、生きていたいならお前らの手駒になれって事でいいのか?」
「何もそこまでは言っていない。ただ、今この場には私達三人しか居ないこと、それから録音は出来ないように電波を流しているから生半可な返事で逃げて、嘘の情報を流すことは出来ない、それだけは頭に入れておくといい。」
俺の質問にナガレは穏やかな表情で話す。ただ、その目には冷たい何かを感じた。
「…解りました。レリーフとしての役目、担わせてください。」
俺は頭を机につける勢いで下げる。
「君らしくない。何処までも俺達に食ってかかると思っていたが。」
「命と事実を天秤にかけて、命を優先しただけだ。俺は唯一の跡取りだから、生きていないといけないだけだ。」
そう、生きていればまだこの事件の真実にたどり着ける。それなら、コイツらの言いなりになる振りをしていればいい。こうして、俺はレリーフとしての仕事をしながら、時には上位プレイヤー達に情報を流す情報屋としての仕事も渡された。




