ショットとの契約
「で、俺の何を知りたいんだ?」
「まず、十年前のことについて詳しく知りたい。」
「十年前の何についてだ?」
ショットは相変わらずつっけんどんな態度だな。
「そもそも、この国がどれだけ医療が発達していたか、異世界から来た俺も、外国育ちのラヴェーラも知らないから解らないんだよ。歴史を調べようと図書館に行ってもその十年前の前後五年間がまるですっぽり抜け落ちていて調べられないんだ。」
そう、何故か医療実験の辺りの事が全部ロックされているんだよな。
「あの頃か。確かに、医療先進国としてセイスティアは名をはせていた。外国の要人が手術の依頼をしてくることも普通にあった。」
「凄いな。俺の故郷も医療大国と言われていたけど、そこまでじゃないからな。」
「お前の故郷も医療が発達していたのか。」
「先進国の中では、安定した診察も受けられるし、保険制度もしっかりしている。」
「保険制度に関しては、この国は少し遅れていたが、機材の維持費を考えると仕方なかった。」
そういう見方もあるのか。
「それであるとき、ロストミレニアムの社長さんが自ら作った機材の実験をすると言った。それが例の冷凍保存施設だ。」
「そこら辺は情報が出てくるから知っている。」
「そこから先のセイスティアの医療に関しては、俺も詳しく知らない。俺もあの事故があってすぐに医師を辞めたからな。」
「そうか。それで、五年前の記事について、ショットはどう思う?」
「どの記事?」
「ゼンリンが書いたダイスとミラージュが同一人物ってやつ。」
「だろうな。」
「じゃあ、解っていてこんな下らないことをしているのか?」
「下らないだ?」
「そうだろ。こんな依存性の高いものを国の最重要事項にすることが真っ当な国のすることか?」
「それもそうか。」
「俺は、この国の裏を暴いて、さっさとこの国から出て行きたいんだ。」
「そんな事しなくても勝手に出て行けばいいだろ。」
「俺だって救世主だ。そんな事は出来ない。それに、何も知らないで踊らされている奴らが哀れに見える。俺が国民の意識調査をしているのは知っているだろ?」
「ああ、噂になっているな。外から来た記者が色々嗅ぎ回っているってな。」
「その質問結果が、明らかに異常だったのが見ていられなかった。まさか、今のこの国の異常さに気付いているのが一割いるかいないかなんて思わなかった。」
「へぇ、なかなか面白い結果だな。」
「そうだ。ショットとは他の上位プレイヤーと違ってまともな会話が出来るみたいだから、俺から提案がある。」
「提案?話くらいなら聞いてやる。」
「俺に雇われる気はないか?勿論、相応の報酬はやる。」
「雇うって、どんな仕事だ?」
「そうだな、かつての医療従事者としての知識と知恵を貸してほしい。」
「その程度か。医師を辞めて結構経つから役に立つかは分からないが、500万レニーでいいなら、雇われてやるよ。」
ショットの奴、結構悩む金額を提示してきたな。500万って額は一見すると馬鹿みたいに高くみえるけど、やる事っていえば国家転覆の片棒担ぎみたいなことだから、明らかに破格な金額なんだよな。まあ、2億以上持っているから、500万なんて払う気になれば払えるけど。
「500万を成功報酬として後払いで支払うことに問題がなければ、このまま契約することでいいか?」
「後払いか、失敗したら払わないってことは無しで、頼むぞ。俺だって危険なことをするんだ。失敗でも200万レニーは渡すと約束するなら構わない。」
「やっぱり後払いだと踏み倒される可能性を考えるよな。分かった、失敗しても200万渡そう。」
「契約は成立だな。よろしく頼むぜ、救世主さん。」
明らかに煽るような言い方だな。でも、漸く協力者が手に入った。




