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ショットの過去

 「無茶って、例の医療実験の志願者になったことか?」

 俺は話を切り出す。

 「ああ、俺だって止めた。まだ動物実験の序盤の、結果も出て間もない頃だったから、そんな実験を妻にさせるなんて事、危険だからやめろと言った。」

 「それでも志願したのには、理由があるのか?」

 「あいつは言っていた。このままだと夫婦としての生活に支障をきたすし、子供を育てることも出来ない。だからこの持病が直る未来に賭ける方が、俺のためにもなるって。」

 「今ひとつピンとこないな。」

 「それは、お前が結婚していないからだろ。夫婦ってやつは、お前が思っているより複雑なんだよ。」

 「なるほどなぁ。それで、バスターのことはどう思う?向こうも奥さんがいただろ?」

 「子供なんて、若いうちから作るもんじゃねぇよ。そりゃ、高齢出産しろとは言わないが、二十歳の頃に子供なんて作って、将来への計画性ってのがないのかって話だ。あいつは学校を卒業してすぐに教師になって、金があるからだろうけど。」

 「そうか。そんなバスターのことだけど、お前のことを定職にも就かない社会のゴミとか、俺のことと一緒くたにして話していたぞ。」

 「定職に就かないゴミか。教師のくせに言葉が荒いな。ガキがまねしたらどうすんだっての。」

 「それには同意見だ。こっちの世界でも、やっぱりバスターの態度は教師として問題があるのか。」

 「当たり前だ。」

 「けどなぁ、あいつのいる学校、バスター先生は子供を亡くして奥さんが病んでしまった可哀想な人って言われて、見て見ぬふりをしているだよな。」

 「だろうな。お前だったら、そんな奴と関わり合いになりたいか?俺は御免だな。」

 「俺だってそうだよ。」

 「そういうことだ。この国はな、十年前からこうなったんだ。だから、俺はこの国のやり方に合わせて生きている。」

 俺がショットの話を聞いていると、ショットは立ち上がった。

 「そろそろ時間だから、行かせてもらう。お前も着いてくるのか?」

 「そうだな。実を言うと、俺はこの国に来て賭博の現場なんて一回しか来ていない。まぁ、やる気なんてないけど。」

 「勿体ねぇな。一緒にやるか?教えてやることなら出来るぞ?俺は上位プレイヤーだからな。」

 「結構だ。俺の会員証じゃ、換金できないからな。」

 「しけた奴だな。それなら、見学していくか?見るだけならタダだぞ?」

 「そうさせてもらう。出来ることなら、お前とはもう少し話したいからな。」

 「決まりだな。」

 俺達は今日一番勝ち金の高い場所へ向かう。


 それから、ショットのプレイをひとしきり見た俺は、ショットと一緒にカジノ場を出る。

 「で、まだ俺に用があるのか?」

 「ああ、聞きたいことがまだ沢山あるんだ。」

 「ちっ、そこまで言うなら食事代を出せ。それくらいいいだろ?」

 「わかった。その代わり、こっちの聞きたいことには答えてもらうからな。」

 「じゃあ、食事代は取材費ってことだな。」

 俺達はそのままレストランに入る。

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