ショット発見
しっかし、ここは駅構内にコンビニや立ち食い系の飲食店も無いのか。
「マジか…仕方ないから、先に目的地に行って、そっちで何か探すか。」
電車の時刻表を見ると、あと五分で次の電車が来るみたいだから、改札口を通る。
「この世界の電子決済は本当に便利だな。」
共通通貨さえあれば切符を買う必要どころか、そもそも切符って概念すらないからな。
『間もなく、パレスト第7地区経由、ストレン第3地区行きが参ります。青い線の内側で止まってください。』
青か、色覚生涯の人にも見える色を使っているのか。とにかく、電車が来たので俺は乗る。そのまま電車に揺られて二十分、漸く目的地のアナウンスが聞こえてくる。
『間もなく、ストレン第4地区、ストレン第4地区、出口は右側です。』
平日の昼間はどこでも人が少ないな。まあ、普通なら今頃仕事か学校かどちらかには行っているだろうからな。俺は人のいない電車を降りて、改札口から地上に出る。それにしても、ここはどこもかしこもギャンブル場しかないな。他の娯楽が無いんかよ。
「ここから歩いて五分くらいの場所か。」
俺は地図アプリを開いて場所を確認すると、割と近い位置だったからそのまま辺りの散策を始める。すると、気になる細道を見つけたから入っていく。その先にいたのは…
“にゃ~”
“みゃ?”
何匹かの野良マフルと、男の背中だった。
「なんだ、今日はお前達の好物は持ってきていないぞ。」
マフル達に何かを餌付けしている声には聞き覚えがあった。この声、俺達の久しぶりの楽しい夕食を邪魔した声、絶対に忘れない。俺は気付かれないようにそっと近づき、
「なんだ、お前も俺と同じでマフル好きか。」
ショットを驚かせる。
「なんだ、こんな形で見つかるとはな。」
「俺だって、偶然見つけただよ。ま、同じマフル好きとして仲良くしようや。」
俺はマフルの背中を撫でながら言う。
「それは、俺の対戦相手になってから言え。」
「冷たいこと言うなよ。俺はお前について知りたいことがあるんだ。」
「俺はお前に興味の欠片もない。」
「そうか、金なら幾らか出してやるから、ちょっとそこの店で話でもしようぜ?」
「へっ、幾ら出すって言うんだ?」
「そうだな、5万レニーでどうだ?」
「それなら、そこそこの酒も飲めそうだな。べつにいいぜ。」
ショットはなんとか提案にのってくれ、俺達はちょっと怪しげな酒屋に入店する。
「んで、俺の何を知りたいんだ?」
「そうだな、まずは10年前、お前は何の職に就いていた?」
「そんなことに何の意味がある?」
「俺はこの国で何が起きたか詳しく知らない。だから、まずは上位プレイヤーのことから調べることにしたんだ。」
「まるで的外れな気がするが?」
「そうとも言えない。お前達上位プレイヤーには共通点がある。全員10年前の事故で家族を失っているって共通点がな。お前も、奥さんがいたなら定職に就いていただろう。」
「そうだ、俺は確かに昔は内科医だった。あいつとは、元々は医師と患者って関係だった。ただ、あいつは体が弱くてな、それでよく受診しているうちに交際していった。で、あの実験に志願したのはあいつ自身の意見を尊重した。自分のせいで俺の負担にならないように、そんなことを言って。俺は負担なんて思ったことは一度もなかった。それなのに、無茶するから…」
ショットは酒を飲み始めた。




