擦り合わせ中の乱入者
俺達は今、レストランの個室で食事を取りながら互いの成果を話している。
「俺達が調査を開始してから四日間、ラヴェーラはどれだけの世帯に調査してきた?」
「今のところはストレイの全区画と、パレストの第1区画と第2区画は全部調査が済んでいる。」
「早いな。」
「軍人の体力を甘く見るな。それで、レイは上位プレイヤーの情報をどれだけ入手できた?」
「まずバスターとダークの二人についてだけど、バスターは十年前の事件以来、死んだ娘への罪滅ぼしからか、ダークに対して過剰を超えて異様とも言うべき愛情の向け方をして、ダークとの間が険悪になりかけていたところで、五年前の記事の一件で夫婦関係が完全に破綻。そのまま離婚したが、その現実を受け入れたくないからか、記事を書いたゼンリンの所為にしたいって感じだ。」
「異様な愛情とは、どういうのだ?」
「奥さんの為を大義名分に、やっていることはただの軟禁状態だ。おそらく、事件以降から既に限界を超えていたんだろう。それから、どうも人に当たり散らす様にもなったって言っていた。俺に対して『救世主を名乗るな。児童の教育に悪い。』とか言ったのも、それが原因だろ。」
「レイ、お前が子供の教育に悪い救世主なのは誰が見ても明らかだぞ。」
「非道くない?」
「そうか?兎に角、バスターのことは分かったが、エンジンの方はどうだ?」
よかった、ラヴェーラが話を変えてくれた。
「結構重要だ。ナガレ局長とは親族だって話があったと思うが、どうも事実だってことと、そのナガレ局長の経歴が、教育委員会から文部省の大臣、そして局長に就任という話だ。」
「一見すると教育関係に熱心な人物にみえるな。」
「そうだ、一見すると、だ。だけどおかしくないか?それだけ教育の事を考えているなら、どうしてこれだけ貧富の差が激しく生まれ、そこから子供同士の貶し合いが激しくなりそうな国作りをしているんだ?」
「確かに、意見の中にも『子供の教育に悪いから早く帰ってきてほしい』とか『勝ち負けを誇らないでほしい』とかあった。」
「明らかにおかしいだろ?俺にもっといいスキルがあればこんな時に便利なんだろうけど、俺のスキルじゃどうにもならないからな。」
こんなことならクレシェンドに異世界チート無双が嫌いとか言わなければ良かったな。まさかここまでどうしようもない状況とは思ってもいなかったからな。てかラヴェーラ、食い過ぎなんだよ。確かにイースティアやウェステリアの料理と違って美味いけど、がっついて食べても味わえないだろ。
「お~い、聞いているか?」
「聞いているが、そもそもスキルに頼らないみたいな事はイースティアでも言っていただろう。今更状況を憂いでも変わらないのだから、今できる手段で最善のものを選べばいい。」
「それ、口の周りを汚している状況で言っても間抜けなだけだぞ?」
「レイ、恥ずかしいことを言うな!」
ラヴェーラの奴、ペーパーで口を拭きながら言ってももご着いているって思わないのかな。そんなことを話していると、
「レイ様、失礼致します。こちらのお客様が、レイ様にお話しがあると。」
店員が入室し、俺達に用のある奴を案内してくる。そいつの顔を見て俺は驚く。
「よぉ、救世主さん。」
馬鹿にする態度で俺達に話しかけてきたのは明日会おうと思っていたショットだった。
「そっちから来てくれて助かる。探す手間が省けた。」
「俺はお前言いたいことがあって来た。お前、俺達の周りを嗅ぎ回っているみたいだな。」
「それがどうした?」
「俺達上位プレイヤーに近づくな。これは忠告だ。命が惜しいならな。」
「命が惜しくて救世主をやっているわけないだろ。それより、お前のことも聞かせてもらおうか。」
「やなこった。俺に話を聞きたければ、今日以外の別の日に、俺を探し出して直接聞け。じゃあな、無力な救世主さん。」
ショットの奴、言うだけ言っておさらばとか、やってくれるじゃん。こうなりゃ、明日は鬼ごっこかな。




