ゼンリン出現地点で…:事故の情報
「へぇ、やっぱり気になっちゃう?」
ゼンリンは口調こそヘラヘラしつつも、表情は本気だ。
「そりゃな。まずは過去に何が起きて、どんな実験があったのか知らないと、問題の解決なんて出来ないからな。」
「俺のこと、信じられるんか?」
「少なくとも、あの局長やがきんちょ、社長さんや上位プレイヤーよりは、な。」
「そうかい。新型医療機器については、この国の新聞で実験前に大々的に報じていたから嘘は言えないが、話によると人を仮死状態にして冷凍保存して未来の技術に託す延命装置だ。」
「なるほど、冷暗施設か。」
「知っているのか?」
「俺の世界では、俺が生まれる前には既に確立していた技術だ。」
「便利だねぇ。ま、そこで俺の弟も実験に参加することになった。俺の弟は生まれた頃から肺が弱くてな、入退院を繰り返していたんだ。だから、安全に治療できるように冷暗施設の研究に参加した。」
「そして、実験の日に施設で何かしらの事故が起きた、ってことか。」
「そう。だから俺は調べている。あの事故が故意なのか、それとも本当に未知のプログラムからの攻撃なのか。」
「未知のプログラム?」
「ああ、ダイスは当時、あの事故は未知のプログラムからの電子攻撃だって言っていた。それが本当なら、どうしてダイスは自殺したことになって、ミラージュとして生きているのか。どうしてあの時攻撃された冷暗施設をまた復活させようとしているのか。俺はそれを知りたくて、生きる道を選んだ。」
「確かに、一度攻撃を受けた施設をもう一度、それも今回は局長も一緒になって裏でコソコソ再開しているんだ?むしろ、表だって再開して、問題のプログラムへの対策を練り込んでいると大々的に発表しておく方が都合がいいはずだ。それにしても、あの局長も信用ならないのに、なんであの坊ちゃんは信用しているんだか。」
「それについてだが、後で紙を渡すから、それを読んでくれ。俺のインテリジェンスフォンには盗聴器が仕掛けられている。当然、今までの会話は全て聞かれている。」
「おまっ、大丈夫なんか!?」
「平気平気。聞かれて困ることでもないし、どうせこんなこと言っても虚言で済まされる。それより、監視機器には気をつけろよ。んじゃ、俺は次の出現地点に行かないといけないから、気をつけて帰れよ。」
ゼンリンは手を振りながらどっか行っちまった。そう思っていたらラヴェーラがこっちに来た。
「レイ、こんな所で何している!」
「痛い痛い!耳引っ張るな!」
「だから何をしているって聞いているだろ!」
「さっきまでゼンリンと話していたんだ!」
「ゼンリンと?一体何を?」
「十年前の新型医療機器と、その事故に関して。どうもサンレイドの時と状況が似ていてな。気になっていたから話し込んでいた。」
「そうか。私にも詳しく聞かせてくれないか?」
「当然だ。情報共有はしておきたい。」
俺達は車に乗り、ホテルに帰る道で敬意をざっと説明する。
「未知のプログラムからの攻撃、確かにサンレイド中央科学都市の電子攻撃によく似ている。あの時も確か、発信地不明の場所から攻撃を受けたと親から聞いている。」
「つまり、ありえるのは人の技術の発展を邪魔している誰かが、こんな手の込んだ事をしているって事だ。そして、セイスティアでは被害が小さかったからもう一度施設を作ろうとしているって事だ。」
「だが、本当に局長とあのエンジンという学生の関係性は事実に裏付けがとれるのか?」
俺はゼンリンから渡されたメモを広げているが、そこには、
『ナガレ局長とエンジンは叔父と甥の関係であり、十年前の事故の時、エンジンの身元引受人兼後見人になったのが、ナガレ局長。戸籍で調べようにも戸籍保護法があるから確認は不可能。当時、一定数の身元引受人が役所に押しかけたときに、エンジンの身元引受人として署名していた事は監視機器の過去映像をほっくり返して調べた。エンジンはナガレ局長から自身の関係を隠すように言われているから確認は諦めてくれ。』
そんなことが書かれていた。
「読む限りだと調べる方法が無いみたいだけど、相当慌てて書いたのか、文章に纏まりも無いし、書きたいことをただ書いておいた、そんな雰囲気ではあるな。そうなりゃ、やることは一つだろ。」
「どうする気だ?」
「エンジンの通っていた学校や昔の交友関係を調べる。十年前ならエンジンだって既に小学校に通っているはずだから、当時の教師とかを探して聞いてみたりすれば事実かどうか調べられる。後は、今の学校での評判とかも調べる必要があるな。兎に角、明日からはエンジンについて本格的に調べつつ、意識調査の続行だ。」
これで当面の方針は決まった。




