表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/77

エンジンとのお話

 「よぉ、坊ちゃん。ここに来たとき以来だな。」

 俺はサングラスに付け替えてエンジンに話しかける。

 「お久しぶりですね、救世主さん。それで、その服装は?」

 「ここで行動するために買った。あの服装はここじゃあちょっと目立つからな。」

 「よかった、真面目な方で。」

 「そんなこと無いけどな。」

 「救世主さんの初めてのご活躍は投映機で見ましたよ。あれだけ政策と価値観の違う三国を統一できたなんて、本当に凄い偉業だと思います。」

 エンジンは俺のことをべた褒めしてくるけど、そんなに凄いことか?

 「俺自身は大したことはしていねえよ。ただ、折り合いの付け方を示しただけだ。それを受け入れられたかどうかの話だから、あいつら自身の心の持ちようの話だ。」

 「それでも、その提案が出来ることが凄いことです。」

 「そうか。それで、坊ちゃんは学生みたいだけど、何を目指しているんだ?」

 「そうですね、将来は小学校の先生になろうと思っていまして。」

 「なんでまた。」

 「僕自身、子供好きですし。やっぱり、バスター先生みたいな、人に頼られるような立派な人になりたいなって思いまして。」

 エンジンは目をキラキラさせながら語る。

 「立派、ねぇ…。それで、勉強は捗っているのか?」

 「はい、とは堂々と言えないですね。やっぱり、賭博の時間もありますし、その分勉強の時間も減りますから。でも、いい気分転換にはなっていますから、悪いこととは思っていません。」

 なんか、妙に引っかかるな。

 「そういえば、さっきちょっとルーレットの所にいたときに聞こえていたけど、坊ちゃんとゼンリン、それからあの二人は同じ境遇って何のことだ?」

 「そのことですか。僕とバスター先生、ショットさん、それからあの人の四人は十年前の医療器具の誤作動で大切な人を失っているんです。僕は父を、バスター先生は娘さんを、ショットさんは奥さんを、あの人は弟さんを。まあ、あの人のことですから、それも嘘かもしれませんが。」

 本当にゼンリンは嫌われ者だな。

 「じゃあ、坊ちゃんはずっと片親で育ってきたって事か。」

 「そうですね。ただ、そんな母も僕が高校を卒業する頃に病気でもう…」

 「そうか、悪かったな。」

 そう、全員が俺みたいに家族が居なくてもどうでも言い、家族との繋がりを蔑ろにする奴では無い。むしろ、エンジンの反応が普通だ。

 「それでも、僕の後見人になってくれた叔父には感謝しています。」

 「それならいいんだが。それで、やっぱり気になっていたことがあるんだが。」

 「なんですか?僕で良ければお話しください。」

 「十年前と比べて、犯罪が増えたとかそういうのって感じたことはあるか?」

 「そうですね、窃盗や名誉毀損が増えたかなって思うことは時々ありますね。」

 「名誉毀損は、例えばどんな感じだ?」

 「あんまり僕自身の口で言いたくありませんが、勝てない奴は仕事も出来ないとか、弱いから女性に見捨てられるとか、とにかく賭け事に関係することですね。」

 「それに疑問を抱いたりしないのか?」

 「だって、それがこの国のあり方ですので。」

 「そうだったな。余計なことを言って悪かったな。さ、先生を目指しているんだろ?そろそろ勉強したいんじゃないか?」

 「そうですね。失礼します。」

 「こっちこそ、長々引き留めて悪かったな。」

 俺とエンジンは分かれる。それにしても、教師を目指す奴があんなんじゃ、やっぱりこの法律はどうにかしないといけないな。とりあえず、また眼鏡を掛けて中に戻るか。

 「興が冷めた。俺は帰る。後はお前達で好きにしろ。」

 俺が店内に戻ると、ショットが帰る準備をしていた。

 「それなら、俺も帰るか。今日は十分な勝率だったからな。」

 ショットの対応に合わせてバスターも帰るみたいだった。

 「お疲れさん。いやぁ、今日は負けたなぁ。」

 ゼンリンはあれから大敗したらしいが、あっけらかんとしている。

 「黒の10番にしか賭けていないのですから、負けるのは必然でしょう。」

 ミラージュは呆れるように言っている。

 「んじゃ、今日はこれで充分か、社長さん。」

 ゼンリンは小声で言う。

 「ここではその話はしない約束ですよ。それとも、消されたいのですか?」

 「まさか。んじゃ、俺も帰るわ。」

 ゼンリンも席を立ち、店から出て行く。俺は跡をつける。

 「で、俺を追いかけて何が目的だ、救世主さん。」

 ある程度離れた場所でゼンリンは立ち止まり、俺の方に振り向く。

 「ちょっと気になったことがあった。」

 「気になったこと?」

 「さっきの三人。」

 「ああ、上位プレイヤーか。」

 「あいつらは強いのか?」

 「どうだか。仕込まれているのか、仕込まれていないのかは俺じゃ分からない。ただ、強いプレイヤーは注目の的になるだけだ。レリーフにならない限りな。」

 ゼンリンはヘラヘラしながら言う。

 「そろそろ教えてくれよ。十年前の新型医療機器がどんなやつなのか。」

 俺は気になっていたことに踏み込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ