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ゼンリン出現地点で…

 アフターファイブ、俺には無関係の世界だと思っていた。大学卒業してからは診断書を利用して働かないで生活保護の生活だった。昔はアフターファイブは上司の接待で新人がぶっ壊れるなんて話をよく聞いていたが、実際そうみたいだな。ゼンリンに指定された施設に行くと、明らかに上司をおだてているだろう会社員の声が多数聞こえてくる。

 「まるで、三十年くらい前の俺の世界みたいだな。」

 「なんだ、レイの世界では賭博は流行っていたのか?」

 「流行っていたかでいけば、それなりって感じだが、重要なのはそこじゃない。雰囲気の話だ。仕事が終われば酒飲みに付き合わされて、新人会社員は精神を病んでいたって、学校で習った。それが酒だけじゃなく賭け事が追加されているって話。まあ、賭け事もやっていた奴もいただろうけど。」

 実際、当時の漫画とかでも、麻雀に付き合わされている描写とかあるしな。そんなことを思っていると、結構目立つルーレット台にゼンリンとエンジンを含めて四人のプレイヤーが座っていた。

 「ゼンリン、お前最近例の救世主とか言う奴と遭っているらしいな。一体何が狙いだ?」

 なんかぶっきらぼうな奴がゼンリンに話しかけている。

 「ちょっとした話のタネってやつ。」

 「どうだかな。お前は嘘つきだから、何が目的か聞いても答える気が無いことは解っている。」

 今度はスーツ姿の奴まで言うのか。よっぽど嫌われているんだな。

 「そう冷たいこと言うなよ。ここに居る俺達四人、あの十年前の件では同じ立場なんだから。」

 ゼンリンはそれでも態度を変えないのは、流石だな。

 「同じですか?あんなでたらめな記事を書いて僕達の神経を逆なでした貴方と、僕達は同じ立場ではありません。貴方はただのレリーフ、僕達の敵です。」

 エンジンはなんか妙に食ってかかる態度を見せているけど、なんだありゃ?

 「レイ、私は外で調査の続きをする。ここに居ても気分が悪い。」

 「解った。無茶はするなよ。」

 「レイこそ、変なことをするなよ。」

 俺達はまた分かれて調査をすることにする。

 「さあさあ皆さん、落ち着いて。観客の皆さんも注目していますから。」

 ディーラーの男が場を落ち着かせようとする。

 「それはどうも、社長さん。」

 ゼンリンの言葉で思い出したけど、ディーラーの正体はミラージュだった。

 「さ、始めましょうか。」

 ミラージュの言葉を聞くと、観客は盛り上がる。

 「頑張って、エンジン君!応援しているわ!」

 なるほど、エンジンは主婦層に人気なのか。まあ、ぱっと見あれだけ真面目君なら世のお母ちゃん連中は息子みたいに可愛がるか。

 「バスター先生、応援してます!」

 あのスーツ姿のイケメンはバスターっていうのか。やっぱ、ああいうクールなイケメンって何処でも女性に人気なんだな。

 「ショット、応援しているぜ!」

 あのぶっきらぼうな奴はショットか。あいつは幅広い年齢層に人気だな。で、ゼンリンは人気ゼロか。そりゃそうか。あいつはレアキャラ、国民の敵って事になっているからな。

 「なあ、あんちゃんは誰が勝つと思う?」

 いきなり五十近いオッサンが話しかけてくる。

 「もしかして、それも賭けの一種?」

 「ったりめーよ!んなことも知らんのか?」

 「取材旅行なのでね。」

 「なるほどな。だから聞いたことも無い新聞社だったんか。」

 「おや、まだ調査していませんが。」

 「今日の昼頃、かみさんから電話で聞いたんだよ。なんだ、取材旅行か。いいねえ、俺もいつかかみさんと外国旅行に行きたいなぁ。」

 「丁度いいので、ここで少しお時間いただいても…」

 「いいぜ、俺は今の生活に満足しているし、犯罪なんて、負け犬の悪あがきとしか思っていない。以上!」

 「簡潔な回答、ありがとうございます。」

 面倒なオッサンだったな。それより、向こうのルーレットはどうだ?

 「止まった場所は赤の29です。」

 ミラージュの言葉を聞いてショットが指さしポーズをする。

 「俺の勝ちみたいだな。」

 ショットは赤の29にベットしていたようで、コインを総取りする。

 「今回は偶然だ。俺はお前には負けない。」

 「そう言って、いつも最後に負けているのは何処の誰だったかな。」

 バスターの強がりにショットはおちょくるような言い方で返すけど、あいつら仲悪いのか?

 「やるねぇ、まあ俺はレリーフとしてしっかり仕事すればいいだけだけど。」

 あっさりコインを渡すゼンリンを軽蔑する目でエンジンは見る。

 「とりあえず、最低限の時間は過ぎたので、僕はここら辺で失礼します。」

 エンジンはそのまま鞄を持って外へ出てしまう。俺はすかさず後を追う。

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