心、潤っている?
「なあレイ、あのゼンリンとかいう男の話、何処まで信じられる?」
帰りの車の中で、ラヴェーラは聞いてくる。
「ん~、真実二割、嘘八割って所か。第一、記者なんてやっていた奴なんだ。こっちに事実を明かすとは思っていない。」
「なんだそれは?記者なら事実を伝えるのが仕事だろ。」
「こっちでも、記者って奴を信じている奴は一定数いるんだな。」
「なんだと、私を馬鹿にしているのか!」
「違う違う。俺のいた世界では記者なんて碌でもない奴しかいなかったって話だ。俺のいた世界じゃ、特に政界系の記事なんて捏造の無法地帯になっていた。自分達にとって都合のいい政府と都合の悪い政府とでは事案の内容が真逆の態度で扱われるほどだ。」
「都合の悪い政府ということは、それだけ国民に被害を出しているということだろう。」
「やっぱりそう考えちゃうか。残念ながら、国益となる政府に対して攻撃してくるのが、俺達の世界の記者だ。」
「何故そんな不利益になるようなことを?」
「ここまでの話でまだ分からないか。俺達の世界で記者っていうのはただの隠れ蓑で、やっていることはスパイレストの活動そのものだ。国民に政府に対して不信感を抱かせて、国家の機能を停止させて、機能しなくなった国に物量攻めで侵略して国を乗っ取る。よくある手段さ。実際、それで幾多の国が乗っ取られ、滅んだか。それに、現在進行形でいくつもの国が侵略されている。」
「それなら、記事の真偽を国で見定めればいいだろ。」
「それは無理だ。そんなことをしようとするなら言論弾圧だって騒いで『正義のための暴力』とか言うものをやってくる。俺の住んでいた国なんて、それの所為で何人もの優秀な政治家が無実の行為で政治家としての道を絶たれた。だから俺は記者なんて奴の言葉は信用しない。さ、それより明日から国民に話を聞いて、色々情報を集めよう。」
予約していた宿に着いた俺達はチェックインを済ませてそれぞれのベッドで体を伸ばす。
「ここの宿は寝具がいいな。」
「そうだな。柔らかいから体が楽だ。どっかの72とは偉い違いだな。」
なんて言うと、ラヴェーラがげんこつを俺の後頭部に放っていた。
「痛えな!」
「誰の、何が72だって?」
「別に誰とか言っていないだろ!」
「だったら、なんで私を見ながら言ったんだ。」
「えぇぇ、何の話ぃ?」
「…もういい!とにかく、明日はセイスティアの情報収集をするんだ。もう寝るぞ!」
やっべぇ。ちょっとやりすぎたかな。とりあえず、お休み。
翌日、俺達はショッピングセンターでスーツを探していた。
「それで、これは何のために必要なんだ?」
「こいつを着ないと変な勘ぐりを入れられる。救世主が国民に政府への質問を聞いて回っていたら怪しまれるだろ?だから変装するんだ。」
「そうか、それでは私も自分の背丈に合う服をスーツを探してこよう。」
「眼鏡を忘れるなよ!」
俺とラヴェーラは二手に分かれて服を買い揃える。
「それじゃあ、一旦宿に戻って着替えるか。」
俺達は宿に戻って着替えてから再度出発する。
「ラヴェーラ、短い髪も似合っているな。」
ラヴェーラには短髪のかつらを着けてもらっている。
「よせ、褒めても何も出ないぞ。」
「こっちも、久しぶりに遮光眼鏡を外して普通の眼鏡を着けたけど、やっぱりスキルが発動しているか。」
予想通り、町の女性が皆裸で歩いているように見えている。ホントにこのスキルの効果を見ないで発動したことを後悔している。
「そうだったな。お前の目は変態御用達の目だったな。私が運転していて正解だったな。さて、最初の区画に着いたぞ。」
「着いたか。それじゃあ、最後の打ち合わせだ。俺達は新聞会社、サイレントサタデーの記者で、政府への世論調査ということで質問する。作戦名は『心、潤っている?』だ。」
俺達は車から出てインターホンを鳴らした。




