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胡散臭い話

 俺達が受付で待っていると、見た目五十代半ばな小太りのオッサンがやって来る。

 「貴方方が、我が国にやって来られた救世主のご一行でございますか?」

 「そうだけど、あんたがこの国の行政局長さん?」

 「はい、私が第128代国家行政局長、ナガレと申します。」

 「へぇ、暫く世話になるけど、よろしく。」

 俺は軽く握手を求める。

 「こらレイ、失礼な態度をするな!」

 ラヴェーラの奴、また煩いことを言うな。

 「どうかお気になさらず。確か、救世主様の生まれの土地では、互いに手を握り合う習慣があるのでしたね。」

 ナガレは快く握手に応じてくれたが、なんか胡散臭いんだよな。

 「早速だけど、あんまり人に聞かれたくない話がしたい。場所を移せないか。」

 「それは勿論。それでは、此方の部屋へどうぞ。」

 ナガレは秘書を先頭にして俺達を案内する。

 「さ、此方へ。君、先に荷物の移動を頼む。」

 ナガレは秘書に指示を出して部屋から出す。

 「それで、聞かれたくないお話とは、何でしょうか?」

 「そうだな、まずはなんでこの国は国民総賭博師法なんてものを制定したのか、からだな。」

 「それは、国民の心の健康を第一に考えてのことです。常に仕事や学業で圧迫された生活では心が押し潰されてしまいます。そこで、賭け事の積極的な参加を行うことで心に余裕を作ることにしたのです。」

 「なるほど、そのような考え方もあるのですね。」

 ラヴェーラの奴、簡単に感化されやがって。

 「それで、その法はどれくらい昔から発布されたんだ?」

 「今でも覚えていますとも。あれは今から十年前でした。当時の我が国は医療の最先端を進んでいた国でした。当然、様々な国からも期待の眼差しが向けられていました。そんな中でした。新型医療機器の大規模失敗が起きたのは。」

 また十年前かよ。偶然ってあるんだな。

 「医療機器の事件が起きて以降、我が国は信頼を失い、医療機器が失敗した理由を調べました。」

 「それで、心に重圧が掛かっていた、と?」

 「そうです。ですから、国民の心の負担を減らすために国民総賭博師法を制定したのです。」

 「それで、その賭け事の資金ってどう利益に計上されているの?」

 「賭け事で発生する利益、損益は全て国家での買い取りを行っています。なので、国民の生活が苦しくなることはありません。」

 「損益も買っているなら、国家予算が厳しいんじゃないのか?それが物価に転嫁されたりしていないよな?」

 「当然ですとも!」

 「話は大体分かった。とりあえず、暫くの間はここで過ごす。気になることがあったら会いに来て大丈夫か?」

 「勿論構いません。仕事中と賭博中でなければ何時でも構いません。」

 「そうか。ラヴェーラ、今日は帰るぞ。」

 「…ああ!分かった。申し訳ありません、レイが不躾なことを言い。」

 「心配しないでください。救世主様ならあれくらい大胆な方が安心できますよ。」

 俺達は部屋を出て、ナガレの案内を受けて出入り口に向かう。すると、

 「あんたが、この国に観光に来た救世主?」

 まるで昭和のチンピラみたいな格好の男が目の前に現れる。

 「君か。今度は救世主様に迷惑をかける気か?」

 「迷惑、ねぇ…別に。ただ、サンレイドの統一のことで取材したいだけだ。」

 「充分迷惑をかけるつもりではないか。」

 なんか変な感じだな。

 「どうしたんだ?」

 「これは救世主様、この男のことは気になさらず。この男は記者を辞めた身なので。」

 「随分綺麗な言い方するじゃん。人の記事捻じ曲げて、事件そのものをなかったことにしようとしたくせに。」

 なんだなんだ、随分物騒な話だな。そんな風に思っていると、見た感じ大学生くらいの男子がやって来る。

 「あなたはいつまで、そうやって捏造記事で行政局長に迷惑をかけるんですか?」

 「だからさ、何時も言ってんじゃん。事実は何時も、闇の中にしかないって。」

 「そうやって、あなたは何時も話をはぐらかしますよね。」

 「何も知らない、与えられた情報しか真実がない、そんなお子ちゃまのすごみなんて誰の胸にも響かないぞ。じゃ、救世主さん。俺と話がしたかったら例の賭博場で。」

 チンピラみたいな男はサングラスをかけ直すと、何処かへ行ってしまった。

 「あいつは?」

 「あの男は、十年前の事故をナガレ局長が黒幕だって事実捏造した記者の風上にも置けないような男です。」

 男子は俺に丁寧に説明してくれた。

 「さ、救世主様はもうお休みになられては如何でしょうか。」

 「そうだな。ラヴェーラ、今日はもう宿に向かうぞ。」

 俺はラヴェーラを連れて行政局を後にした。

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