賭博都市
「はぁ~あ、せっかく女の子との二人旅だってのに、相手がこんな胸は無い、筋肉しかない奴だと、ムードの欠片も無いな。」
俺は車を運転しながら独り言を言う。
「むーどというものが何かは分からないが、お前は何時もそうやって品の無い話ばっかりだな!」
「痛ぇなおい!こめかみの所をグリグリするな!」
「だったらお前がそういう発言をしなければいいだけだろ!」
「危ねえな!運転中に暴れるな!」
「だったら静かに運転しろ!」
「悪かったって。それで、このまままっすぐ行った先に本当に国なんてあるのか?」
「ああ、旧サーティアス領と取引のあった国だ。お前も、サンレイドを出国する前にラフワール国家議長から会員証を渡されただろう?」
「そう言えば、そんなのもあったな。」
俺はポケットから黒地に紫のラインが入った小洒落た俺名義のカードを渡されていたけど、気にもしていなかったな。
「それで、これって何の会員証なんだ?」
「お前、それを知らないで貰ったのか!?」
「そうだけど?」
「それは今向かっている国の中で一番栄えている賭博施設の会員証だ!」
へぇ、会員制ギャンブル場の入場券か。
「それで、次の国ってどんな感じの国なんだ?」
「そうだな、聞いた話だと国民総賭博師法だとかいうものがあるらしく、仕事後の個人の時間も惜しんで賭博に明け暮れているとか聞いたことがあるが、詳しくは分からないな。」
国民全員がギャンブラーねぇ…そんな財政破綻待ったなしな国が本当にあるのか?
「ま、行ってみれば分かるさ。もっとも、本当に着けるならな。」
「だいたい、出国してまだ三時間程度なんだ。そう簡単に着けるはず無いだろ。お前の運転は鈍いんだから。」
「俺は俺のいた世界の規則に沿って運転しているだけだ。そこまで言うならラヴェーラが運転しろよ!」
「始からそうしろ!」
結局、ラヴェーラに運転を任せることにしたが、やはりというか、速度は高速道路の法定速度を超えるスピードを出していやがる。
「道路交通法って、大切だったんだな…」
俺の呟きもラヴェーラは無視して運転に集中している。スピードは恐いが、ラフワールみたいに喋ったりしないで集中してくれているだけマシだな。
ラヴェーラの運転に揺れること四時間、下品なネオンライトの光が見えてくる。
「ラヴェーラ、もしかしてあれがお前の言っていた国か?」
「そうだ。あれがセイスティア共和国だ。」
ふ~ん、そんな名前の国なのか。
「そこの自動車、止まりなさい。」
関所の役人の声を聞き、ラヴェーラは車を止めて窓を開ける。
「失礼、私はサンレイド公国の国防軍中央局のラヴェーラ、位は陸軍少佐だ。」
ラヴェーラはいつも通りの口調で会話を始める。
「それで、本日はどのような御用件でしょうか?」
「此方の者がこの国に用があるとのことで、その護衛として着いてきました。」
ラヴェーラは俺のことを役人に見せる。
「これは!まさか我が国に救世主様がおいでになられるとは!今、行政局長にお伝え致します。お手数でしょうが、少々お待ちください。」
役人は電話で誰かと話を始め、それが終わると俺達の行く場所を説明してくれた。
「すまない、どれだけの滞在期間になるか分からない。それだけは理解いただけないだろうか。」
「それは勿論、構いません!」
「それでは、失礼する。」
ラヴェーラは窓を閉めて運転を再開する。
「しっかし、国の中枢に向かえば向かうほど場所も大きくなるな。」
「場所とは?」
「賭博場のことだよ。賭け事の何がいいのやら。」
って、地球に居た頃はソシャゲでガチャ課金しまくりな奴が言っても説得力なんて皆無か。
「そうだな、賭け事なんてそんな退廃的なこと、馬鹿馬鹿しい。これに関してだけは、ラフワールと意見が一致していたな。」
「意外だな。あの強欲の権化みたいなラフワールが賭け事を退廃的と思っているとはな。」
「なんでも、手には入るか分からないものに魅力は無い、とのことだ。」
相変わらず、何を考えているか分からないな。
「さて、着いたぞ。」
ラヴェーラは役人に案内された通りに、国家行政局に車を止める。
「それで、ここの国家行政局長ってどんな奴なんだ?」
「聞いている話だと、厚生労働関係の役職の経験者と聞いているが。」
そうか、兎に角会ってみれば分かるか。




