旅立ちは賑やかに
「漸く来たか。」
俺がそんなことを言うと、後部に荷物を蓄えられそうな大型車が停車し、バンが降りてくる。
「放送で見たわよ。あんた、ラフワール様の覇道を終わらせるなんて、信じられないわ!」
予想通りというか、バンは怒りの表情を見せながら俺に迫る。
「仕方ないだろ。三国を纏める唯一の手段だったんだ。ラフワールも、それを理解した上で俺にすべてを任せたんだ。」
「そうよ。私は確かに覇王を名乗ることはやめたわ。でもね、サンレイドの政府は私が初代国家元首になることが決まっているのよ。国の実権を握れるなら、今までと何も変わらないわ。」
「…ラフワール様がおっしゃるなら仕方ないですわね。解ったわ。それで、これがあんたのための自動車の鍵ね。受け取りなさい。」
バンの奴、投げつけることはないだろ。
「ありがとよ。」
「それにしても、こうして会談が終わってみれば、随分すんなりときまっちまったなぁ、救世主さんよぉ。」
グラッドの奴、いきなり絡んできたな。
「そうだな。元々、内紛が原因で国家が分断された訳じゃないんだ。統一する気になれば誰でも簡単にできたんかもな。」
「そんなことありません!」
「そうね、これまでだって、何度失敗したことか、もう忘れたわ。」
「本当に簡単にできたって思っているのか?」
元トップ達は責め立てる。
「出来たとは思う。だけど誰も納得しなかったんだ。」
「あん?どういう意味だ?」
「そうだな、例えばバンが提案してきて、ウェステリアとイースティアは納得したか?」
「それは…」
「出来るわけねぇだろ。」
「そういうこと。三国の誰かが提案しても、他の二カ国は相手にしようとしない。もし仮に他国からの助言だとしても、今度はその国を疑って終わり。第一、この世界と関係の無い俺ですらこんなに手こずったんだ。よその国の助言なんて聞くわけ無いって思っていたよ。だから今までこうして話し合って信頼してもらったんだから。」
「そうですね。これは、私達とは無関係な救世主様だったから出来たのかもしれませんね。」
フルールは笑顔を見せる。
「やっぱり、フルールは笑顔が似合うな。」
「お世辞はよしてくださいよ、救世主様。」
俺とフルールが仲良く話しているとなんか後ろから睨まれている気配を感じて、振り返るとラヴェーラが俺を睨んでいた。
「うわっ!ビックリした…」
「レイ、何楽しそうに話しているのですか。」
「そうよ、気をつけなさい。彼ったら、貴女くらい大きい方が好きって私に向かって堂々と言ったくらいよ。」
ラヴェーラの言葉に便乗するようにラフワールが言うと、ラヴェーラは驚く。
「さて、俺はそろそろこの国を出ようかな。」
俺の言葉を聞いてその場に居た誰もが俺を見る。
「何驚いてんだ?この国の統一って問題を解決したんだから、俺はそろそろ別の国に行かないと。俺を必要としている国がどれだけあるか分からないしな。」
「それはそうですが…」
「何、連絡手段はいくらでもあるんだ。暇なときにでも連絡するさ。」
俺はそう言って車に乗ろうとする。
「ね、一緒に行きたいんでしょラヴェーラちゃん。」
そんな時にフルールはラヴェーラに耳打ちをする。
「それは!?」
ラヴェーラは突然のことで驚く。
「ですが、私はサンレイドの一軍人。その様な勝手なことは…」
ラヴェーラは嬉しそうにしつつも建前からか、まごついている。
「なら、国防軍中央局長の指示。救世主の護衛をラヴェーラに任命する。」
そこにデスベロスが顔を出して指示する。
「それはっ!…その使命、遂行してみせます!」
ラヴェーラは口調こそ普段と変わらなかったが、顔は大分緩んでいた。
「それで、乗るの?乗らないの?」
「待ちなさい!お前の警護は私の使命だ!」
ラヴェーラは急いで俺の車の助手席に座る。
「それでは、この国の安寧に貢献した勇敢なる救世主に旅立ちの拍手を!」
ラフワールの言葉を聞き、国民達は一斉に拍手を始める。
「なんか、恥ずかしいですね…」
ラヴェーラの奴、余計なこと言いやがって。こっちまで恥ずかしくなるだろ。
「ラヴェーラちゃんも、頑張ってね!」
「おねえちゃん、頑張れ!」
フルールとベルの声を聞くのも、しばらくは出来ないのか。そう考えつつ、俺達はサンレイド王国を後にした。




