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相談する相手を間違えたか?

 翌日、俺は再びウェステリアに入国し、特別隔離施設に入れられているフリル達に会いに来ていた。

 「悪いな、俺を庇って捕まえられて、こんな場所に放り込まれるなんて。」

 「気にするな。俺達の仲だろ?」

 「だけど…」

 「まさか、ボクまで投獄されるとは、予想外だね。」

 「仕方ないじゃん。王様に盾突いたんだし。」

 「そうだね。グラッド王はこういうことには厳しいからね。」

 「本当に、済まなかった。」

 俺は繰り返し謝るが、

 「気にするなって言っただろ?俺達マッフル同盟は例え生まれた国は違っていても、マフル様をモフモフしたい気持ちは一つなんだから、それを果たすまでは俺達が協力するのは当然のことだ。」

 いやフリル、そんな誇らしそうに言われても、一つ突っ込ませてもらいたいことがある。

 「何なんだよ!そのマッフル同盟って!?」

 「まったくだ。何だい、その妙ちくりんな同盟は?」

 「決まっているだろ。俺と、そこの救世主と、シャドウと、後は救世主と一緒に居た胸の小さい黒髪。」

 おいおいラヴェーラの奴、こんなガキにすら貧乳認定されていて可哀想だな。

 「まったく、一体何時、ボクがそんな団体に入ったんだ。」

 「はぁ?だってシャドウもマフル様大好きだろ?この間だって、マフル様のお腹をもふもふして幸せそうにしていただろ。」

 「キミ、見ていたのか。随分悪趣味だね。」

 「何が悪趣味だ!俺だって好きで見た訳じゃねえよ!マフル様を探していたら偶然見かけただけだよ。悪趣味はむしろお前の方だろうが。」

 「ボクが悪趣味?どこが?」

 「あんな薄暗い書庫にモゾモゾといて、見た目に無頓着で言葉も女っぽさを感じさせないで、一日中本とにらめっこ。そんなことしていると、婚期を逃すってーの。」

 「随分な言われようだね。」

 「だって、事実だろ?」

 「民事訴訟法第157条原文、他者に対して著しい罵倒、誹謗中傷を行った者は人格否定罪と定める。」

 「けっ、そーやって小難しいこと言ってすぐ逃げる。」

 もしかしてこれ、相談する相手を間違えたか?

 「兎に角、俺はもう一度グラッドと話をしようと思っている。」

 「おいおい、本気か?」

 「やめておいた方がいい。」

 「どうしてだよ?」

 「今は王様の怒りが静まるのを待った方がいい。」

 「それはボクも賛成。」

 「そうは言っても時間がないんだ。三国の次の会議は明日なんだ。今日中に意見を纏めないと統一の件は実現できなくなる。」

 「それで、そもそも何が原因でお前は首を狙われていたんだ?」

 「それが、今度の会議の権限をすべてウェステリアに渡さないなら俺の首を落として二カ国を侵略するって言って、俺の意見を聞こうとすらしていなかった。あれは一度しっかり話す必要がありそうだ。」

 「あちゃー、王様、そこまで言っちゃったか…」

 「君は既に他の二カ国に統一の流れを話しているのだろう?それをボク達の国の都合で変えろっていうのは、確かに非現実的だね。それで、グラッド王に会ってどうするつもりだい?」

 「グラッドには一応、統一後も王位に就いてもらうことは言っておいたが、何処まで聞いてくれているのやら。」

 「成る程ね。キミの考えはある程度聞けたから大丈夫かな。ということだ。レイと会うことは出来ないかな、グラッド王?」

 シャドウは突然天井の隅を見ながらグラッドの名を呼ぶ。俺も気になってそこを見ると、よく見れば分かるくらい小さな穴があった。

 「なあ、あれってもしかして…」

 「ああ、ボクがここの施設の所長に頼んで作っておいた囚人監視用の小型撮影機だ。」

 「じゃあ、俺達の会話は丸聞こえだったんかよ!」

 「ああ、そうだが。そういえば、さっきボクのことを根暗だのジメついた女だの行き遅れ寸前だの言っていた坊やがいた気がするが、どうしたものだか。」

 「行き遅れとまでは言っていないだろ!そんなに根に持っていたんかよ!」

 「そうだったかな?それより、レイはグラッド王の所に行ったらどうだい?」

 「ああ、そうだったな。」

 俺は後ろを振り向いて施設を出ようとするが、

 「俺ならここに居るぜ?」

 目の前に急にグラッドが現れてビックリする。

 「フリルもシャドウも御苦労だったな、後は任せろ。」

 グラッドは二人を閉じ込めている扉を開けて解放する。

 「それで、俺を王に据えるとか言っていたが、何が狙いだ?」

 「そうだな、グラッドは王であることには拘っているが、王政政治を復権させたいわけじゃないんだろ?」

 「当たり前だ。誰がやるか、そんな面倒くせえ事。」

 「だから、グラッドには称号としての王のままでいてほしいんだ。血統としての王が健在な国は外交で役に立つ。ただし、これまでみたいに政治に口出しは不可能になるが。」

 「つまり、国王は名前ばかりのものになるってことか。そんなことして俺に何の得があるんだ?」

 「仕方ないだろ。ウェステリアに利益を与えつつ妥協してもらえる可能性を考えて、出てきた方法がウェステリアの王を統一後の新生サンレイドの王にすることぐらいだったんだから。他の二カ国には既に今までの政治は出来ないって諦めてもらったんだ。ウェステリアにも、王の生まれ故郷という特別待遇を与えるんだから、そこら辺は諦めてくれ。ラフワールは今回の統一のために覇道を諦めたんだぞ。仮にも覇王と名乗った者が折れたんだ。それに対して義を以て返すのが、真の王の資質だと思うが。」

 「…ちっ、そんなこと言われて、食い下がれるわけないだろ。わかったよ。お前の口車にノってやるよ。」

 「よかったぁ…漸く話がまとまりそうだ。有難う。」

 これで、明日の会議もなんとかなりそうだ。

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