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電話会談

 「…ってわけで、なんとかウェステリアから脱出できたんだけど、替わりにフリルとシャドウがとっ捕まったんだ。どうにかならないかねぇ。」

 土煙を被りながらなんとか脱出できた俺はインテリジェンスフォンでラフワールに連絡していた。

 “どうかしらね。それで、グラッドは貴方にどんなことを言っていたのかしら?”

 「三国統一の件をグラッドに一任しないなら俺の首を打ち落とすってさ。」

 “相変わらず道理の通っていないことばかり言うのね。”

 「そうだな。で、俺の首を落としたらサーティアスとイースティアを侵略するって言っていたもんだ。本当、フリルが助けくれなかったら今頃死んでいたよ。」

 “あら、死んだら死んだで、その時はその時って言っていなかったかしら?”

 「勿論、こっちに飛ばされてきた頃は思っていたさ。でも、こうしてこの世界で暮らして、考えも変わってきた。くそったれな世界で生きていてもつまらないとか思っていたけど、どうしようもなかったり、腐りきったりしている世界なのは、何処も一緒なんだなって思って、それなら死ぬまでは頑張って生きようって思えてきた。」

 “そう、私達の世界を愚弄するのは気に食わないけれど、生に執着していない救世主の価値観を変えられたのは嬉しい話だわ。”

 「そうかよ。それで、こっちの世界の砂埃って凄いな。今も咳でむせそうだ。」

 “そうね。砂埃は舞いやすいからね。”

 「砂埃が舞う度に咳ごむのは困るな。」

 “それこそ、スキルが新しくもらえることを願えばいいじゃない。”

 「ラフワールだって知っているだろ、俺のスキルは碌でもないものにならないって。」

 “それでも、流石に砂埃が起因の咳ごみを対処するくらいなら変なものにはならないでしょう。”

 ラフワールは笑いながら言っているけど、文字が読めても意味が分からない言語解読のスキルを渡される身にもなれって話なんだが、兎に角この咳と鼻炎はどうにかしたいもんだ。そんなふうに思っていたら、何か新しいスキルを託された。どうせ碌でもないものだろうと思い、中身を確認する。妖視単例の時みたいに解除不能なデメリットスキルだったら堪らないからな。

 『噴燼漠溌

 効果:ありとあらゆる形で発生する鼻炎、咳の生理現象を防ぐ。解除不可。』

 ええと、解除不可ってことは、一度発動すると解除できないからまだ発動しないでおこう。

 “ちょっと、返事がないけど大丈夫かしら?”

 「すまない、新しいスキルをもらったから効果の確認をしているから少し待っていてくれ。」

 “解ったわ。どんなものか後で教えなさいよ。”

 「おう。」

 とりあえず、ありとあらゆる形って所が引っかかるよな。まず思いつくのは今の現状だろ。それからハウスダストのアレルギーや花粉症か。それならあると便利か。だったら使っても…

 「って、よくよく考えたらダメじゃん!」

 そう、このスキルの致命的な欠点に気付き、思っていたことをついつい口に出してしまった。

 “あら、どうしたのかしら?”

 「いや、新しいスキルの効果に致命的な欠陥があって、使うのをギリギリで踏みとどまったところだ。」

 “そうなの?それで、意味をいちいち調べないといけない言語翻訳に男の妄想の具現化、そして出来もしない料理に関するスキルの次は何かしら?”

 「そうだな、発動したら解除できないスキルで、鼻炎と咳を防いでくれるスキルだ。」

 “それの何が問題なのかしら?”

 「それが、病気の症状で出る咳も出なくなるとしてもか?」

 “あー、そういうことね。確かに、それは致命的どころか、生死に関わりかねないわね。”

 「解ったか。」

 そう、このスキルの問題点はこの“ありとあらゆる”が足を引っ張っている。病気の症状による咳やくしゃみが出なくなるとそもそも本当にその病気を患っているか確認が困難になる。それで対応が遅れてとんでもない状態になったら最悪命に関わってくる。こんなの、一見良スキルに見せかけたデバフ効果だから、使わない方がいい。

 “相変わらず、手に入るスキルは運が良ければ使いこなせない。最悪の場合は致命的な欠陥があるのね。本当、女神クレシェンドは何を考えてそんなスキルばっかり渡すのかしらね?”

 「さあな。救いようのない屑だから俺を救世主に抜擢したくらいだしな。」

 “それはいいけど、ウェステリアは結局どうするのよ?”

 「そうだな、少なくともグラッドは公平な話し合いをする気が無いみたいだから、臣下たちと上手く話をつけるしかないだろ。進化の話なら最低限聞いてくれるみたいだし。」

 “それで上手くいくといいのでしょうけれど、相手はあの男でしょ?上手くいくのかしらねぇ?”

 「上手くいくかじゃないだろ。俺もさっさと三国を統一させて次の国に行かないといけないんだから。」

 “ちょっと、私達の国のことはついで程度の扱いってこと!?”

 「そうじゃない。救世主はゆっくりもしていられないんだ。それじゃあ、そろそろウェステリアにもう一度行ってくるから。」

 “頑張りなさい。期限は今日までなんだからね。”

 「解っている。それじゃあ。」

 俺は通話をやめ、インテリジェンスフォンをポケットにしまうと、再びウェステリアに入国した。

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