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ウェステリアからの脱出

「…で、これは何の冗談だ?」

 ウェステリアに入国し、グラッドの城に案内されるなり、八方から剣を突きつけられる。

 「冗談でも何でもない。唯一の王家である俺を差し置いて下らない平和主義国家や名乗る価値のない覇王を騙る国を優先したんだ。そんな下らないことをやる奴は救世主としての価値が無い。だが俺とて馬鹿ではない。お前が三国統一の指揮権を俺に一存することを確約するなら、今は生かしておいてやる。」

 随分滅茶苦茶なことを言うじゃねえか。これがラヴェーラの言っていた暴君って話か。ただ、流石にこの状況を打開する方法は俺には無いから、ここは上手く話を逸らすか。

 「それで、ここで俺の首を落とした後はどうするつもりなんだ?」

 「決まっているだろう?あの二カ国を攻め落とす。」

 「そいつは無理だろうな。覇王ラフワールは俺のやり方に賛同している。下手な真似はしない方が身のためじゃないか?」

 「知るかよ。全部倒して俺の物にすればそれで終わりなんだからな。」

 「話は平行線になりそうだな。」

 「お前が俺の下に着けば解決する話だ。」

 「そういうわけにもいかないだろ。他の二カ国はそれぞれ妥協してもらうことで話をつけてきたんだ。ウェステリア一カ国だけ何も妥協しないというのは不公平だ。」

 「俺は平等とかいうのは下らないと思っている。兎に角、俺にすべての権限を渡す気が無いなら、ここで死んでもらうぞ。」

 色々話を引き延ばしていたけど、流石にそろそろ限界か。諦めるように俺は目を瞑る。すると、

 “ボンッ!”

 何かが破裂する音と共に煙が立ちこめる。

 「ゲホッゲホッ!うぅぅ、目にしみるぅ…」

 煙が器官に入ったみたいで、咳ごんでしまうが、

 「こっちだ。」

 誰かが小声で俺に囁き、俺の手を引っ張りながら何処かへ連れて行く。

 「ちっ、フリルの野郎!余計なことしやがって!」

 グラッドの言葉で、俺を助けてくれたのがフリルだと漸く気付けたが、そんなことはどうでもよかった。


 「まったく、あの状況で逃げないなんて、お前は命知らずなんか?それとも馬鹿なんか?」

 フリルは呆れるように言う。

 「俺はお前みたいに特別な訓練を受けているわけでもないし、武術の嗜みがあるわけでもないんだ。簡単に逃げられるわけ無いだろ!」

 「そうかよ。」

 「それで、どうして俺を助けた?お前だってウェステリアの国民だろ?こんなことして、グラッドに裁かれないのか?」

 「もしかしたら、投獄されるかもな。」

 「ならどうして!?」

 「マフル好きに悪い奴はいない。俺とお前はマフル様の仲だ。マフル様は仲間を見捨てない。だから俺は仲間を見捨てなかった。」

 「そんなフワッとした理由で…」

 「フワッとしている…まるでマフル様みたいだろ?」

 流石にこじつけが凄まじいな。思わず笑っちまったよ。

 「確かにそうだけどさ。」

 俺達は追われていることを忘れて笑っていたが、

 「見つけたぞ!」

 「逃がすな!」

 「二人とも公開処刑にしてやる!」

 数人の兵士に見つかってしまう。

 「こっちだ!」

 俺はフリルに案内されるがまま獣道を通っていく。


 「待っていたよ、救世主レイ。」

 フリルに案内された先にはシャドウが待っていた。

 「本当はこんな慌ただしい遭い方じゃない方が良かったんだけど、兎に角急ごう。ここから緊急用の出口に繋がっているから。」

 シャドウとフリルは一生懸命に俺を案内する。

 「暗いな。」

 「あまり喋るな。声が反響するだろ。」

 「二人とも煩い。」

 隠し通路ということで気が緩んだ俺達はついつい無駄話をしてしまうが、

 「やっぱりこの隠し通路を使うか。」

 既にグラッドが単身で先回りしていた。

 「王様…」

 「国王…」

 フリル達は身構える。

 「まさか、お前らが揃って俺を裏切るとはな。」

 グラッドは剣を構える。

 「俺は常にマフル様の味方だ。マフル様が御身を許すこいつは助けないとマフル様が悲しむ。」

 「ガキが何下らないことを言っているんだか。こんなことなら、しっかり学校に通わせれば良かったな。それはいいとして、まさかシャドウまで裏切るとはな。」

 「裏切ってはいない。ただ、大事な交渉の札を自ら手放すことに疑問があっただけです。」

 「疑問だぁ?」

 「レイの言うようにサーティアスがレイのやり方を支持しているなら、おそらくレイの行動は筒抜けでしょう。そうなれば、レイが死ねばサーティアスとイースティアは結託して我が国を攻めてくるでしょう。いくら空戦最強といえど、陸地を蹂躙されては勝ち目は消えます。それならば、今は生かす方が都合が良い、という判断に至っただけです。」

 「なるほどな。お堅い司書長様らしい考えだな。とりあえず、そいつを殺すのは保留にしてやる。おい、レイ!命拾いしたな。今はここを通って逃げることを許してやる。その代わり、次遭うときはいい返事を待っているぜ。」

 グラッドは剣を下ろす。俺はそのまま走り出す。

 「そうだな、最低限お前を王のままにはしておくつもりだ。」

 俺はグラッドにそう言いながらウェステリアから脱出した。

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