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晩餐会

 「それが、外交時のラフワールの正装か。」

 「あら、似合わなかったかしら?」

 「そんなことはない。ただ、こうしてみるとイースティアとは全く違うなと。」

 「イースティアではどうだったのかしら?出来ることなら今後の参考にしたいわ。」

 「いや、こういう外交関係の事が一切無かったって話だから、参考にはならないぞ。」

 「そうでもないわ。イースティアのあり方がよくわかるもの。会議に必要不可欠な救世主が三国を順に訪問するということは、簡潔に纏めるなら、各国の価値観の確認と統合のための最終調整でしょう。そこで個人の感情を優先しているようでは、国の主導者として問題があるわね。」

 「まったくだ。やっぱりこういうことはサーティアスと話すのが一番やりやすい。」

 「あら、そうかしら?こうして自分の切り札を増やそうとしているのは汚い手段って言われそうなものだと思うけれど。」

 「何を言っているんだ。外交で重要になるのは他国との交渉に役立つ札を持つことだろ?それなら、ラフワールのやり方は国の上に立つ者としては問題なさそうに思うけどな。」

 「そう、それならよかったわ。兎に角、まずは食事を済ませましょう。冷めたら作ってくれた料理人達に申し訳ないわ。」

 俺達はなんだかんだで長話をしていたが、ラフワールの言うように、このままだとせっかくの豪華な食事が台無しになってしまいそうだ。

 「そうだな。頂くとするか。」

 俺達は漸く料理に口をつける。スープは塩気が控えめで飲み口が良く、サラダのドレッシングはやや辛みを効かせているようで主菜のステーキと合わせて食べることを計算した味付けになっていた。

 「なかなかの物だな。」

 「そう言ってくれると嬉しいわ。グランド達に連れ回させた価値はあったみたいね。」

 「最初から、今日の食事会のために俺の舌の好みを調べていたのか。」

 「当たり前でしょ?こういうものは相手の好みに合わせて用意するものよ。それで、私に話って何かしら?」

 「そうだな、まずはこういった食事の場を設けてくれたことに関して、感謝の意を示したいな。」

 「普通にありがとうでいいでしょうに。」

 「形式的なものだ。それから、バン覇王補佐から提案された自動車贈呈の件に関しても、非常に助かる。此方としても、今後の移動手段の確保には困っていたので、良い提案だ。」

 「それだけかしら?そんな形式化した謝礼の為に私と話がしたいわけではないのでしょう?」

 「勿論、本題はここからだ。ウェステリアの政府と一切の衝突もなく協力出来る自信はあるか?」

 「そんなこと、言われなくても出来るわよ。」

 「それを踏まえた上での話になるが、あのグラッドは仮にも由緒正しい王家の生き残りだ。個人的な意見としてはグラッドのことは王のままにしておきたい。」

 「つまり、私に覇道を諦めろ、そう言いたいのね。呆れたわ。実力で今の地位を手に入れた私より、あんなお飾りの王を選ぶなんて、期待外れもいいところだわ。」

 「そう、だからこそ、グラッドは飾りの王として都合がいいんだ。あいつは自分の王としての地位しか考えていない。それに、外交においては力で国を纏めた奴より、正統な王の方が他国からは好印象を持たれやすい。そういう点では、グラッドは目立ってくれる。しかし、そこに政治介入の力が無ければどうだ?グラッドがなんと言おうがそれに力は無い。そもそも、政治的発言を封じてやればいい。無論、国を実際に動かすのはラフワールに頼もうと思っている。どうだ?」

 「それが貴方の提案?愚かね。私がそんな世迷い言に賛同してくれると思っていたのかしら?いい?私はサーティアスの覇王なのよ。そんな私がどうして飾りだけの王に地位を奪われないといけないのかしら?」

 「なるほど、ラフワールは国家の平和より目先の地位を優先すると言うんだな。だとしたら、俺の見当違いだったって事か。」

 「貴方、私を愚弄しているの?」

 「ああ。まさか、地位なんてちっぽけなものに拘って現実的な三国統一の案を白紙に戻そうとしているんだからな。」

 「それならいいわ。貴方をここで斬って、あの二カ国を奪い取ることにするわ。」

 ラフワールは俺に鎌の刃を向ける。

 「それで、そんなことしてイースティアとウェステリアが連合国になって攻めてきたらどうするんだ?確かにサーティアスの軍人の白兵戦能力は高いかもしれないが、イースティアのホーンワームとウェステリアの爆撃機に対抗できるのか?流石に不可能だと言えるな。」

 「この覇王ラフワールに脅迫行為をするなんて、なかなかの命知らずね。」

 「伊達に今までの人生を無意味にだらだら過ごしていないからな。死んだら死んだで、それまでか、くらいにしか思っていないからな。それでも、生きている間は政治については真面目に考察していようと決めていた。だから今回だって、政治の方向性の違う三国にそれぞれ丁度いい落ち度を考えて提案したんだが、受け入れられないなら、俺も諦める。代わりに、サーティアスの意見は取り入れない方針に変更する。覇王と言っても、結局は自分の我が儘を優先したい年頃の小娘だったってことか。」

 俺は敢えて呆れたような言い方をする。

 「そう。流石に私だって、国民の平和を優先したいわ。ただ、その内容は審議する必要があるから時間がほしいわね。」

 「何のために俺がウェステリアに行くのを明日にしていると思っているんだ。そもそも、即答できるなんて思っていないっての。」

 「分かったわ。考えておくことにするわ。今日は貴重な時間をどうも。」

 「こちらも、意見を拝聴してくれて、有り難う。」

 俺達は形式上の握手を交わして、別れた。

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