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平和の戦士達

 結局、話が煮詰まることは無く、三国のトップには一旦自国に戻ってもらい、俺はイースティアに来ていた。

 「あんたが新しい救世主か。フルールから話は聞いていたが、直接会うのは初めてだな。私は防衛軍陸士士官、グリーバだ。よろしくな、救世主さん!」

 「なんだ、こんな怪しさ満点の奴に随分と素直だな。」

 「フルールが大丈夫だって言っているんだ。親友の私が信じなくてどうするんだ。」

 「親友ねぇ…俺は零。よろしくな、グリーバ。」

 俺は握手のために手を出す。

 「ん?なんだ、その手は?」

 「…ああ、悪い。俺の世界では友好の証として握手…分かり易く言うと互いに同じ手で掌を軽く握り合う文化があるんだ。」

 俺はこの世界には無い握手の文化について説明する。

 「なんだ、そういうのは早く言ってくれよ!私の方こそ、よろしくな!」

 納得してくれたグリーバは握手に応じてくれた。

 「それで、グリーバはどうなんだ?」

 「どうなんだって、何のことでだ?」

 「三国の統一の話だ。」

 「なんでそんなことを一軍人の私に聞くんだ?」

 「軍人だからこそ、だ。この間まで殺し合いをしていた相手に対して、今日から国が一つになりますので殺し合いはやめてください、って言われて納得できるのか気になったんだ。」

 「何を言っているんだ。それがイースティアの為になるなら、私は覚悟ある英断だと思う。何も迷う事なんて無い。」

 グリーバは軍人らしい答えを返す。

 「本当か?互いに大切な仲間を奪われているんだ。それでもあっさり受け入れるのか?」

 俺はそれが気がかりになってグリーバに聞く。すると、突然グリーバは俺の胸ぐらを掴む。

 「それは、イースティア防衛軍への侮辱と受け取っていいのか?私達は国の誇りと威信をかけて互いに向き合ってきた。それは向こうも同じだ。互いに手を取り合うことで不要な争いが消えるならば、私達は手を取り合う。例えそれが、友の仇であってもな。」

 グリーバは俺のことを掴んでいる右手を離す。

 「…そうか、悪かったな。」

 俺は一言謝ってフルールの所に向かった。


 「救世主様!」

 「あっ、お兄ちゃん!久し振り!」

 俺に気付いたフルールが俺のことを呼ぶと、ベルはいきなり俺にしがみついてきた。

 「久し振りだな。元気にしていたか?」

 「うん!お兄ちゃんのことを次は絶対に守れるように頑張って鍛えたんだよ!」

 「それは頼もしいな。それで、ここがフルール達の家か。」

 俺はフルール達の親の住む家に呼ばれていた。

 「レイ、グリーバに随分と失礼なことを言ったみたいだな。」

 ラヴェーラは俺のことを睨みつけていた。

 「そうだな。今まで命がけで戦ってきた軍人の意見を聞きたかったが、まさか俺の方が諭されるなんて思っていなかった。」

 俺はラヴェーラに事情を説明する。するとフルールは俺の方を向く。

 「それで、救世主様はどうしてイースティアに?」

 「フルールは三国を統一して、国をどうしたいのかと思って、聞きに来たんだ。」

 「ですから私は、みんなが平和に暮らせるようにしたいんです。」

 「それだと具体性が無いだろう?平和に暮らすために何をしたいんだ?」

 「ですから、三国が統一されれば争う必要もなくなって、みんなに平和が訪れます。」

 「それはサンレイドから分岐した三国の話だろう。それに、平和にしてからはどうするんだ?」

 「それは、統一した後に新政府を設立して議会で決めれば大丈夫だと…」

 「随分と曖昧な答えだな。それに、国家体制の違う三国を一つにするんだ。自分たちの価値観が全て通るはずが無いだろう。ウェステリアは王制国家で一人の王を尊重している国家。サーティアスは高い貿易能力を活かした商業国家。イースティアの価値観はサーティアスとはぶつかり合うだろう。フルールもサーティアスの商業施設は知っているだろう。あれらを全部国営施設にするつもりか?」

 「勿論です!あれだけの施設を野放しにすれば法律違反の温床になります。」

 「そうか。フルール、お前の目指す国の未来は、財源確保が困難となり国家破綻だ。」

 「どうしてですか!?」

 「国内だけで財政を回すことになると、造幣すればするほど貨幣の価値は低下して、物価は上昇する。もっとも、物価も政府が管理しているからそれは起きないだろうが、そうなると今度は品物の価値が下落する。物価が下落すれば国民は買いだめをし始める。そうなれば製造量を増やさなければならなくなる。仕事が増えればそれに合わせた給与の支払いも必要になり、給与が増える分だけ買いだめが増加する。給与を増やさなければ国民に働く意志が失われて製造が停止し、今度は物品の少なさから物価は急上昇。更に買える人と買えない人とで極度の格差が生まれる。イースティアみたいな小国でこぢんまりとやる分には困らないのかもしれないが、三国を纏めた新生サンレイドの国土面積を考えると確実に数十年で国家破綻する未来が見える。」

 「それでは、私達は今の生活を変える必要があると言うことですか!?」

 「残念ながら、俺からはそうだとしか言えない。俺の世界には200くらい国があって、そのうちの一割半程度が今のイースティアみたいな体制をしているが、残念ながら成功した国は一つか二つが限界だ。殆どの国が現体制を辞めるか、財政困難で国家破綻かの結末しか辿っていない。酷いところでは別の国に事実上売却されたなんて場所もある。俺から言えることは、三国に統一するためにサーティアスやウェステリアの体制を受け入れるか、今の体制を維持するために三国統一に反対するか、この二択としか言えないな。」

 「…そうですか。次の会談まであと四日間、それまでに議会と国民投票で決めるようにします。」

 「わかった。俺は明日サーティアスに向かう。と言うより、明日迎えが来るからそれに乗ってラフワールと話す。それじゃあ、俺は宿に帰るから。」

 俺はフルールに挨拶してフルールの家から出て行った。

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