第93話 私、良気取り込み、のち、休憩
目を瞑っていても、一度視認した良気は十分に感じられる。
取り込んだ気を自分の気に溶け込むようにゆっくりと体内を循環させる。
前世の訓練が生きているのか、気の取り込みはすんなりとできた。
途端テンションがあがる。
よしよしよし!
最初は量を増やすというよりは、質が高まったように感じられた。
それだけ、自身の気の力が脆弱であったのがわかった。
先程受けた祝福も影響しているようである!
早くに検証できて、私は幸せである。
少しづつ、取り込む量を増やしつつ、身体に馴染ませる為に循環させる。
これの繰り返しである。
最初はゆっくりと、徐々に、早めて。
イメージとしてはこってりではなく、濃密であっても、さらりと流れる清流をイメージする。
しかし、なかなか難しい。
他からの気だからか。
はたまた流動性の高さからか、取り込みとどめて、自身のものにするのが困難であった。
前世の魔素の取り込みもある意味困難であったが、これはまた異なる困難さがある。
前世の魔素の取り込みは身体に負担がかかるものを取り込む不快さがあったが、今は不快さは皆無であるものの、身体に馴染ませ、自身の力に変え留めるのが、非常に困難であった。
取り込み留めておけるのは、2割もあるか。
これは腰を据えて取り組まなければならないだろう。
しかし、30分ほど過ぎたところで、集中力が切れかけてきた。
効率を考えて、休憩することにし、大海は目を開いた。
横をみると、晶露様がこちらをじっと見つめて座っていた。
「ねえさますごいです。ぼくもがんばったのですけれど、ねえさまにはかないませんでした」
「いえいえ、晶露様はまだ4歳なのです。無理することはありません」
私は自身の力のなさを改善しようと必死だからね!
晶露様はもともと力が多くあるのである。程々でよかれと思われる。
そうだ。ロウはどうしただろうか?
いつの間にか晶露様の頭に戻って来ていた。
そしてへそ天で寝ていた。
とても安らかな顔である。
それだけ、この地は安心できる空気が流れているのかもしれない。
もはや何も言うまい。
「もうひと頑張りしたいところですが、少し休憩しましょう」
私は松也さんに、クーラーボックスからオレンジジュースを出してもらった。
うん。車だからこそ、持ってこれたものだ。
「晶露様、どうぞ」
「ありがとうございます」
晶露様はオレンジジュースを手に取ると、おいしそうに飲む。
水筒の麦茶でもいいが、頭も身体も使っているので、糖分補給もかねてのオレンジジュースだ。
私もいただく。
「はあ、頭に染み渡る」
私と晶露様は、満足のため息をはく。
そこにさあっと爽やかな風が吹く。
「気持ちがいいですねえ」
「はい」
たまには外出もいい。開放感がある。
晶露様も窮屈な本家にいるよりは、こうしてたまに連れ出してあげるのも、悪くないかもしれないな。
「さて、私はもう一度チャレンジしますが、晶露様はどうしますか?」
「ぼくもがんばります」
むんと拳をにぎってやる気をみせる。
いいね。貴重な場所と時間だ。
できる限りやろう。
私と晶露様はもう一度大気に身を委ねた。




