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第92話 私、良気を取り込む

「これからどう致しますか?」

 松也さんが尋ねてくる。

 結界内のことは聞かないのか、松也さん。

 ああ、帰りの車中で、あるいは帰った後に、じっくり聞くつもりか?

 もしくは直接、若君に報告させようというのであるか?

 ああ、くそ!

 いかん、腐ってばかり居られぬ。ここに居られる時間は有限であるからな。

「私たちはどのくらい、結界内にいたのですか?」

「15分ほどかと」

 ふむ。それだとまだランチの時間には早い。

 ならばやることは1つである!

 ここでもう少し良気を取り入れるべきであろう!

 それが第一の目的なのだから。

 ゆりのきの巨木にご挨拶もすませたのであるし、より一層良気を自身に取り入れるのだ!

「少しここで、ロウともども、ゆりのきから清浄なる気をもらおうかと思います」

「了解しました」

 私は隣にいる晶露様に顔を向けた。

「晶露様、当初の予定通り、ここに留まり、気を高めようと思いますが、よろしいですか?」

「はい!ぼくもりょうきをやしなって、にいさまのおやくにたちたいのです!」

 もう、この子は!

 放っておかれても、家族思いなんだから。

 ほろりとさせる。

「わかりました」

 では。

「ロウ」

 晶露様の頭に戻って来ていた彼に、まずは指示を出す。

「結界内よりも清浄なる気は濃密ではないかもしれないが、今でも十分ロウの力になるだろう。ここでゆりのきの巨木からのエネルギーを取り込んで成長につなげるんだ。それにより力が増進するだろうからね」

 おそらくな。

「了解した!」

 彼はぱたぱたとゆりのきに飛んでいった。

 具体的なやり方については指示はしない。というかできない。

 妖精には妖精のやり方があろうからな。

 人たる身の私にはそこまで指示はできないのである。

 さて次は私と晶露様だ。

「晶露様、まずここにレジャーシートを敷きましょう」

「はい!」

 ここまでの巨木である。そんなに近寄らなくても十分なので、ある程度距離をとってレジャーシートを敷く。何事も独占してはいけないのだ。

 ここは皆の癒やしの場。

 パワースポットなる場所なのだから。

 私と晶露様はレジャーシートに、少し離れて向かい合って座る。

「ここに来る前に、お教えしたことを思い出しながら、やってみましょう。よろしいですか?」

「はい!」

 よいお返事である。

「ゆりのきの巨木が発する澄んだ力ある気は、ただ浴びているだけでも、効果はあります」

 実際、ゆりのきの巨木からは結構な強い力を感じる。すごい霊木である。

 私はこの力強い気を頂戴し、少しでも自身の力を高めなければならないのである。

 しかし、これだけの気である。

 ほんの少しでよい。空気中にきらきらとある気をもらうだけである。

 独占はいけないし、すぎれば私が壊れてしまう。

 霊木であるゆりのきの巨木よ、私はこの力を正しいことに使うとお約束します。

 決してよこしまなことには使いません。

 本当に?なぜか前世の友の声で、問いかけられた感じがした。

 むむ。自分の力の研究は、邪なことには入らない筈である!

 やれやれといった感じが伝わってくる。気のせいだと思いたい。

 私は1つ首を振ると、晶露様を見た。

「では、晶露様、力を抜いてください」

 気の取り込みは、前世の魔素を取り込むやり方を踏襲(とうしゅう)する。

「私にはゆりのきの巨木から発するきらきらした気の結晶が視えます。晶露様は視えますか?」

「少し視えます。でもさっきよりは視えません」

 レジャーシートに座った晶露様はしょんぼりする。

「十分ですよ」

 やはり本家のご子息である。ある程度の濃度のある気であれば、視認できるらしい。

 それならば、取り込みもやすかろうものである。

 ここで私は本家の視る力についてうっすらわかってきたことがあるが、あくまで仮説なので、披露はしない。

 それは確定してからである。

 話を戻そう。

「それらは優しく私たちに降り注がれてますね」

「はい」

「そのきらきらを指先から、頭から、浸透すると想像するのです」

「しんとうする」

「いつものようにです」

「はい」

 このイメージトレーニングは、ここに来る前に何度も練習しているのである。

 残念なことに、本家や我が家においては、清浄なる気は感じることができなかったからである。

 空気が澄んでいるなあとは思うものの、力になるほどの気がないのである。

「取り込めたなら、それらを身体のなかで自分の気と一緒にぐるぐるとめぐらせるのです。そうすれば、ゆりのきの巨木のエネルギーが晶露様を高めてくれます」

「わかりました」

 晶露様は正座をすると両手を広げ、目をつむった。

 うーん。様になってる。私との練習以外にも、きっと、本家での力の訓練で、いつもさせられているのだろう。

 周囲の目も気にならないようだ。

 幸いにも、観光客であろう周囲の人々も、子どもが遊んでいるのだろうぐらいの視線である。

 さあ、時間は有限。

 私も負けていられない。

 晶露様の隣に座って、私も、ゆりのきのパワーを取り込むべく、目をつむった。

いつもお読みいただきありがとうございます!

少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。

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