第86話 私、新宿御苑へ出発
そしてやってきたのが本日、念願のお出かけの日なのである!
長かった!長かったのである!
今は本家の玄関先で、車待ちである。
車を待つ数分など、待ち時間にはならない!
今の私たちにはな!
だが時間があるのは確かである。
ではここで私たちの服装について話しておこうか。
私と晶露様の服装は礼装までは行かないが、略式正装並の服を身につけている。
とはいっても私が用意したのは、1年前好配の儀で身につけていた灰色のワンピースである。1年経ったことで、成長した分、母に手直しを頼んだ。なんとか間に合った。もし間に合わなかったならば、学園の制服を着ていくつもりだった。制服は礼服の代わりになるからである。晶露様も私の指示通り、外出用の少しばかりフォーマルな服を身につけている。
「ねえさま、これでいい?」
と両手を広げて見せてくれる。
晶露様白いシャツに家色である深紫の上着、半ズボンそして、蝶ネクタイである。可愛らしい。
「はい。よくお似合いですよ」
私は力強く頷いた。
「よかった」
晶露様がにこりとする。
「おれも!おれも毛繕いしたぞ!」
「はいはい」
ロウはすっかり日本語で話をするのにも慣れた。
そのロウも今日は、晶露様とおそろいの深紫の蝶ネクタイをつけている。
礼装に準じた形だ。
妖精なので、そこまでする必要がないのであるが、ロウが羨ましそうにしていたので、用意したのである。用意したのは私ではない、本家である。
そのロウは少し得意げに晶露様の頭の上で、興奮して羽をばたばたさせている。
「落ち着いて。でないと頭から落ちるぞ」
「大丈夫だ!あ!」
私が忠告した矢先に、ころりと転がったロウである。
お約束すぎる。
まあ、気持ちはわかる。ロウになってから、あるいは意思を持ってから、初めての遠出だろう。
私も初めて本家に来た時には、興奮したものだ。
その後、その初めての遠出が、大いなる人生の転換期になった訳である。
いつ人生の分岐点が来るのか。それは誰にもわからないのである。
はっ!フラグなるものを自ら立ててしまったか!?
いや、違うぞ!
私は軽く頭を振り、その考えを打ち消した。
その時、丁度タイミング良く、車が目の前に滑り込んできた。
「さあ、晶露様、出発しましょう!!」
私たちは車の後部座席に乗り込んだ。
「さあ、いざいかん!希望の地、新宿御苑へ!」
やっと出発です。長かった。




