第78話 私、しくじりを自覚す
そこではっとした。
今質問をしたのは誰だ?
私は今どこにいる?
答えは瞬時に悟った。
ここは晶露様の部屋で、ご本人が質問をした。
しまったのである!そう思った時にはもう遅かった。
私は顔から血の気が引くのを感じた。
いや、ほんと私は馬鹿か?!
夢中になりすぎて周りが見えなくなるとは!
その上に私を煽る鳥が一羽。
「大海!パワースポットへ行くのか!?なら、俺も連れてってくれよな!」
ばかもの!それは今一番言ってはいけない台詞だ!
私は自分の失態を棚にあげて、ロウを心の中で罵った。
確かに貴様がパワースポットなる場にいけば、格上げされるかもしれぬがな!
晶露様!どうか、ロウの台詞は無視してください!
お願いします!
しかし、その願いむなしく、晶露様は叫ばれた。
「ねえさまがいくなら、ぼくもパワースポットにいきたい!」
ああ、やはりである。
繰り返しになるが、晶露様が遊戯で外出されたことがない。
土日に外出しているのではと思い、お尋ねしてみたが、首を振られてしまった。
そんな晶露様である。
私が行くところに行きたがるのもわかる。
こんな状況であるが、自分の願いを口に出せるようになったのは、何よりであろう。
問題から目を背けるな、私よ。
滅多に願いを言わない晶露様である、連れて行ってあげたい山々であるが、本家のご子息である。
それが困難であるのもまたしかりである。
私は身を切る思いで、晶露様の説得を試みた。
「えーとですね、晶露さま?パワースポットなる場、はきっとここから遠いところにあります」
テレビを示しながら、私はそう説明する。
実際今テレビで紹介されているものは、東京でも23区にあるし、先程紹介されたものは東京以外の他県のものだ。
「晶露さまは御年3歳です。まだ遠出するには早いお年かと存じます」
家族とならともかく、他人である私と遠出するのはまだ早かろう。私とて、まだ5歳であるが、子どもの2歳差は大きい。大きいと思いたい!多少の遠出も許されるだろう。いや、許してもらう。
繰り返しになるが、加え次男と言えど、本家のご子息様である、きっと許してはもらえまい。
いや、許してくれるな。
連れ出して何かあったら、私の責任になろう。私はまだ5歳、野外で晶露様を守れるか不安が先に立つ。異能も極小であるしな!
「ん~。ちゃんとしたりゆうがあれば、きょかがおりるとおもうのです。にいさまもそうでした。だから、こんきょがちゃんとしてればだいじょうぶ」
なんと見事な切り返しか。
やはり晶露様は頭の回転が速い。
そして若君、3歳から遠出の外出をしておったのか!
「ですが、遠出ともなると、行く日は土日になるかと存じます。土日はご家族とご一緒に過ごされたほうがよろしいかと」
「おやすみのひでも、ぼくいがいのみんなはいそがくて、しょくじのじかんいがいあえないからだいじょうぶ」
「そうですか」
そうですか。土日でも家族の交流は改善してないのですね。
わかってました。それを言わせてしまい、申し訳ありません。
となると、私が家族と過ごしている間、この部屋で晶露様1人お過ごしになっているのか。
今はロウがいるのが救いか。
私はここで沈黙を守ったままの幹斗殿に救いの目を向けた。
刹那、私は驚愕した!
無である!
幹斗殿の顔が!
無の顔である!
まるでいつぞやの父を見ているようであった!
おかしい!
幹斗殿は教師と名乗られるくらいなのだから、脳筋ではない筈である!
そして私よりも個人の序列は上の筈である!
なぜそのような顔を!
勉学以外は口を出すなと言われているのであろうか!?
いや、この案件は野外学習になろう!
口添えを願いたい!
私が必死に目でそう訴えたが、幹斗殿に通じることはなかった。
この話題が終わるまで、無で通すおつもりのようである!
くっ!役に立たない家庭教師である!
今ここに助け手はいないのか!
晶露様の顔をちらりとみる。
そして私はそこで、己の敗北を悟ったのである。
ぐぬう。しくじった!




