第60話 私、若君に願い事一つする。
私たちは晶露様のお部屋戻って来た。
2度目の訪問となるが、1人で来れる気がしない!
松也さんは若君に続き部屋へと入ると、私と晶露さまを部屋の隅にあるソファの上にそっと下ろしてくれた。私と晶露様が並んで座っても余裕があるふかふかソファである。
そして松也さんはすっと扉の近くに下がる。
晶露様の部屋は洋風なお部屋である。
扉も木質の片開き扉である。
先程はそこまで見る余裕がなかったであるが、晶露さまの部屋は広い。ベッドに応接セット。勉強机。本棚、テレビなど。それらが置かれていてもゴロゴロ子どもが転がれるスペースが余裕である。
立派な部屋であるが、ここに1人で寝起きしてるのか、晶露様。
部屋の広さと比例して寂しさが増しそうである。
3歳で1人部屋が必要か?
私であれば羨ましいが先に立つ。色々なものを集めて部屋に飾りたいのである!
が、通常ならば少し切ない。
3歳だったら、日本では親と同じ部屋で寝食ともにする子が多いのではないだろうか?
かくいう私は5歳であるが、父と母と川の字になって寝ているのである。
スペース的に、自室を持つのは難しいのが大きな理由の1つだろう。
加え、前世の記憶があるとはいえ、5歳児には夜1人は心細いのもある。
弟君はまだ3歳なのに、ここで1人寝起きをしているのであろうか。
若君ももしかして1人部屋か?
本家はそれが普通なのか?
もう少しホットな家族関係になったほうがいいと私は思うのである。
私と弟君は3人用のソファに、若君はローテーブルを挟んで同じく長ソファに座った。
私たちが腰を落ち着けると、メイドさんがテーブルに飲み物とお菓子をこんもり盛った皿を置いてくれた。
その気の利くメイドさん、なんと明けの明星の館で世話になった、野衣さんである。
野衣さん、晶露様付きの専用のメイドさんであったのか。
だからであろうか、私の飲み物は、蜂蜜いりホットミルクである。
ありがたい!私の好みに合わせてくれている心配り、痛み入る。
若君の飲み物は紅茶である。
ふむ。若君、私の前では大人ぶらなくてもいいよ。
一緒に蜂蜜入りホットミルクを飲もうと私は言いたい。
もう少し気軽に話せるようになったならば、そう私は告げるであろう。
今は何が地雷かわからないのである。迂闊な事はいえぬ。お口にチャックである。
晶露様の分はない。起きたら、きっと持ってきてくれるのだろう。
ホットミルクはほどよい温かさが命の飲み物。野衣さんにぬかりはないのである。
「さて、お前の両親が諸処の手続きの説明を受けている間に、今少し話を詰めたいと思ってな」
若君、口を開くと尊大だな。これが通常仕様なのであるか。
だがしかし、これだけは言わせてもらおう。
「承知しましてございます。ですが、その前に1つお願いがあるのですが」
「なんだ?言ってみろ」
「お前呼ばわりは少し気分がよくないので、名前でお呼びいただければ、幸いです」
「名前、名前か、ふん。よかろう」
「ありがとうございます」
若君!名前呼びをお願いしただけで、この口調。すごい高飛車である。
それでは女性にもてないぞ!
いや、今のままでも十分もてているのか。
だって許嫁候補複数持ちであるからな。
失礼した(←もちろんいやみである)
それにしても学校でもこうなのであろうか。
それでまかり通るなら、学校も通常とは異なるとみた方がよいのか。
私も通う予定の学校。通常とは違っているとみた。
まあそうであろうな。異能持ち専門の学園であるのであるからな!
ふふ。それは面白い。
楽しそうだ!
私は思わず口が緩んだ。
いかん。瞬間口を引き結ぶ。変に誤解をされても面倒である。
私は前世において誤解を招くようなことが少しばかりあった。
その為、親友にも諫められていた。親友、元気でやっておるか。
しかしこれからの話し合い、若君の口調が気になる。高飛車な物言いは控えていただきたいが、無理だろうか。
私は口を開きかけたが、はっと気づいた。
いけない、いけない。
言葉使いのお願いは一日につき、1つまで。
私は心得ているのである。
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