第59話 私、本家移動中、思考ちらばる
移動に悩んだのは一瞬であった。
いつの間にか本家子分の松也さんが近づいてきて、先程と同様に、私と晶露様を運んでくれたからである。
松也さんといい、三弥さんといい、気配が薄いのである。
意識的にそうしているのであろうが、心臓に悪いので私に近づく時には普通にして欲しい。
切に願う。
我が両親は平然としていたから、ある程度武術の心得があれば、気配を読めるようになるのかもしれない。
父母脳筋といえども、武術には秀でているらしいからな。
やはり私も母の反対しても、武術は習うべきであるな。
前世で私も気配を消す方法を学んだ筈ではあるが、その記憶は頭での記憶のみである。
それにである。今は私は幼児である。
普段から気配を消すなどしなくてもいいのである。いい筈であるな?
あー、抱っこされていると、思考がちらばる。
直近で気になったのは、気遣い上手の子分、松也さんである。
松也さん、晶露様のお側控えぽいから、個人の序列は上位なのであろうなあ。そつもなさそうである。
前世で当てはめるならば、侍従としての身のこなしが素晴らしい。
主人の邪魔にならず、指示を待たずに、自分で考えて行動に移れる。
私もそうありたいものである。
いや、私は本家への就職は望まないがな。
上下関係がダントツに厳しそうである。
上と衝突するのが目に見えている。
私は前世を思い出し、遠くを見つめた。
ふ。窮屈な思いは軍隊でたくさんである。
今我々が向かっているのは晶露様のお部屋である。
両親とは先に別れた。
これから両親は引っ越しや仕事の移動、そして私の転園の手続きなどについて三弥さんから話があるのであろう。
煩雑であり、面倒そうである。
父よ、母よ、できるだけ本家の人の手を借りるがいいよ。
本家の願いを聞くのであるからな!
使えるものは本家でも使うのである!
そこは脳筋でも頑張ってもらいたい。
私をあてにしないで欲しい。
が、だしにするのはやぶさかでもないよ。
現実的な手続きの話し合いには子どもの私たちは不要であるからな。
若君がこちらに移動したのも頷けるのである。
そういえば、今日は平日。
若君は学園をお休みしたのであるか。
このところ欠席が多いと学校側から指導が入らねばよいが。
それでも仕方がない。弟君、晶露様の為である。
その晶露様、全然起きないのである。
眠りが深い。
昨晩は本当に一睡もしなかったのであるか。
なかなかの根気である。
そして私の頭上にはロウ。先程の話し合いでも、一言も口を挟んで来なかった。
私は確信している。眠っておるな!身体を100パー預けきってるのがわかる。
昨晩、ロウも彼なりに頑張ったのであろう。言葉が通じず苦労もしたであろう。
眠っているのはいい。だが、落ちてくれるなよ!
ちゃんと私の頭に掴まっていろ。晶露様のようにな!
大海、5歳にしては考えすぎか?
しかし大人としての思考、隠せていない気がします(笑)




