表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/18

第6話 私、本家本宮家に到着する

「おお。広い!」

 時は流れて、やってきました、灰咲家の本家筋に当たる本宮本邸。

 もう少し言葉に正確性を持たせるならば、本邸敷地内というべきか。

 受け継がれ、拡げられたものか、はたまた、最初からこの規模だったのかは不明である。

 一つ言えることは、とにかく本邸を中心にした敷地が段ちに広い。

 よって、私と父は、本家の正門、江戸時代に出てくるような高さ3メートル以上はあろうかと思われる木製の両開きの正門で、端についていたインターフォンを鳴らしてから、しばし待つこと、5分。門の内側、私たちを迎えにきた車に乗り込み、ただいま移動中である。

 ちなみに私たちが乗ってきた車は、本家の外部専用の駐車場に駐めてある。敷地内は本家専用の車以外は、進入禁止なのだという。しかし車で移動しなければならないとは。広すぎるのも考え物である。

「やっとたどり着いたね」

 私は隣に座る父に、ぼそりと呟いた。

 父は車の後部座席から、ちらりと運転席に目をやってから、同じくぼそりと答えた。

「そうだな。大海はこんなに長いこと車に乗ったことがなかったから、疲れただろう?」

「うん。でも楽しかったよ」

 そう、それは真実である。車中から眺める景色は見るもの見るもの初めてで、新鮮であった。

 本家の本宮家は東京にあり、我が家は東京より何県かまたいだところにあった。

 県庁所在地からも離れたのどかな町。音色町。そこに居を構えている。家賃も駐車場も安いし、住みやすい土地とだけ言っておこう。

 今回、本家の若君の儀式に参加するにあたり、前乗りで東京のホテルで一泊、そしてゆっくりと本家へと乗り込みたいとのささやかな希望を、私と父は母に告げたのだが、1人お留守番となった母の許しが出なかった。母は自宅で寂しく1人飯をするのに、2人はホテルで楽しく食事など許せない!とのことだ。誠に残念なことである。

 私も父も、母の同行を希望したのであるが、本家にバッサリ断られた。

 今回血のつながりない者は参加不可とのことだ。古い家に、ありがちな考え方だ。

 母は不満を表してはいたが、父方の家系の事情を知っているのか、意外にあっさりと留守番になることを承諾した。

 私だったら、もっとごねただろう。母は大人である。

 そんな理由から、私たちは儀式が執り行われる当日、父の運転の下、早朝に家を出発して、数時間かけて本家へとやって来たのである。

 ずっと運転し通しであった父だが、疲れは見られない。

 父の仕事は警備員である。体力は相当にあるのだろう。

 うらやましいことである。

 学問にしろ、体術習得にせよ、基礎体力がなければ、話にならない。

 スタミナは大事である。私もトレーニングを始めたいと思うのだが、母に止められている。

 どうやら母は、自分がなれなかった華奢で、か弱い女性に、私を育てたいようだ。

 困る。もう一度言おう。スタミナは大事なのである。

 ちなみに、母の仕事も警備の仕事である。

 なんとかして、母を説得しよう。

 もしどうしても、母が願いを叶えたいのであれば、妹を早々に作ることを進めたい。

 しかし、2人の子供であれば、遺伝的に活発な子が生まれそうなので、果たして母の願いが叶うかは、疑問である。

 さて、本筋に戻ろう。

 私たちは無事本家である本宮家に到着し、現在儀式が行われる場に移動中である。

 先にも触れた通り、本宮家は東京にある。

 とはいえ、一等地はおろか23区特別区でもない。

 東京の中心から離れた、木々生い茂る自然豊かな区域に、本宮家はあった。そしてとてつもなく広い。本家の敷地内にはいくつかの家屋というか邸宅、屋敷があるそうで、移動は車を使うことが推奨されているらしい。

 元々、西に本家はあったのが、東に遷都されてから、本家も東のこの地へ移動がなされたとのこと。

 現在西の本家の邸宅は、分家の一つの日陽家が守っているらしい。

 日陽家は分家序列第一位の家である。

 我らが一族は明確な格付けがされているらしく、分家によっては本家からの迎えが用意されるとか。

 上記の内容については、運転手さんがフレンドリーに教えてくれた。

 灰咲家は序列最下位。迎えの車はない。重きを置かれていない分家筋は、ただ参加せよとのお達しがあっただけ。足代も出ない。

 同じ分家なのに、差別がひどい。

 末端なればこそ、足代を強く希望したいところだ。

 もし本家が足代だけでも出してくれたなら、もしかしたら、電車、それも新幹線に乗れたかもしれないのに!

 招集したのなら、足代だけでも出してほしいところである!

 私にとって、車も驚きの移動手段だけども、電車というやつは、一度にたくさんの人を移動させることができる、夢の乗り物である!

 前世ではなかった乗り物!ぜひ乗ってみたかった!

 もし乗れていたなら、私は大いに、本家に対して、感謝の意を表しただろうに!

 ああ、この鬱憤を儀式で出されるだろう、厳選された秀逸な料理の数々を、満腹になるまで食して晴らさんと企む私は、決して悪ではない!

 ちなみに食材も前世のそれと重なるものが多々あるものの、味付けについては今世に軍配が上がる。

 これから出会うであろう繊細な料理が、楽しみでならない。

 それでいいのか?

 厳かな初見えの前儀と好配の儀に、真面目に参加しなくて大丈夫なのか?との心配の声もあるかもしれない。

 諸君、お答えしよう。分家序列最下位の、それも末流の娘を、誰が気にかけるのか?

 私の役割は、その儀にいるだけで十分なのである。

 それに、である。

 私と父は、遠路はるばる車を何時間も飛ばして、やってきたのである。

 いくら分家への呼び出しでも、本家は、我々を慰労する義務がある筈である。

 慰労といえば、食事である。

 そう、きっと間違いなく、本家は豪華な食事を用意してくれているに違いないのだ。

 私は大いに期待をしている!

 移動手段に不満があるが、ご馳走にありつける私は、まだましなのだと思うことにする!

 先ほどもちらりと触れたが、本家に来たのは、父と私のみだ。

 母はうちでお留守番である。

 本家の富を見て思う。母1人増えたところで、問題なかっただろうと思ってしまう。

 本家で本宮家に呼ばれるのは、後にも先にも今日ぐらいだろうから、記念に母も連れてきたかったのである。

 ただ血のつながりがないだけで、のけ者にするとは心の狭き事よ。

 3人で来れたならば、親子3人の、おいしい思い出になったであろうに。

 招待状にははっきりと、よそ者はだめとは、書かれてはいなかった。

 建前の理由としては、この儀式には本家、および6分家の主立った方々が来られるので、付き添いは1人となっていた。

 けれど本音としては、血縁のみで行うからだめ、ということだ。

 せめて豪華な料理をお持ち帰りできぬかと思ってしまう。

 母への土産にだ。

 誤解のないよう、ここで1つ言っておきたい。

 私は決して食い意地が張っている訳ではない。

 ただ、前世の最後の記憶が戦場であり、かつ、そのときの食事が貧素だったことが尾をひいているだけだと、ここに明記しておく。

 しかし、母を思うと切ない。

「父、母も一緒に来たかったよ」

「そうだな。でもな、来たら来たで、肩身の狭い思いをしたかもだ」

 私の切なる希望に対し、一族について、父がこそっと教えてくれた。

 本家、分家通して、血縁以外には厳しいのだと。

 母は本家、分家とはまったく関係ないお家の出だそうで。

 結婚した当時、父の家系について、たいそう驚かれたそうだ。

 父、予め話しておかなかったのか?と、咎めそうになったが、まあ、分家の末流であれば、そこまで話さなくても問題ないのか。

 それにしても。私が属する一族は私が思っている以上に、排他的な家のようである。

 血を尊ぶか。前世の貴族的な考え方に似ている。

 まだ5歳で外部との接触があまりないので、それが常識なのかどうかはわからないが、一応私も元貴族だったから、理解はできる。

 申し訳ない、母よ。料理を土産にできたなら、必ず持って帰る。約束しよう。

 私にとって、母はまさしく血縁だ。だから、母を大切にするのは、当然である。

「もうすぐ、到着にございます」

 そう運転手さんから、前触れがあった。

 運転手さん、色々な情報ありがとう。

 帰りもこの運転手さんに送ってもらいたいものである。

 さて、ここから頭を切り替えよう。

 母の事は一旦置いておいて、私の目的が達成できるか。

 これから降り立つ場に、かかっている!。

 私はわくわくしながら、車が止まるのを待った。

 怖じ気付く?そんな言葉は、私にはないのである。

お読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ