第53話 私、立場について語る
ここで今更ながらの席次の説明をさせてもらおう。
座る席よりも対応する人間が親でないことに対して私の怒りが向いてしまった為、遅くなってしまった。すまないのである。ここで詫びておく。
私の席であるが、本家の子分の松也さんに父の隣におろされ、眠ったまま離れない弟君は必然的に私の横に。
我が母は、その横に座るかと思いきや、父の斜め後ろの方に座った。ロウは私の頭上である。
我が母よ。よそ者だから、少し後ろであるか!
血の繋がりがないからであるか!
前世においての貴族的な考えである!日本の古い家のしきたりでも見られる傾向か。
母はその辺心得ているんだろう。
現代の日本でそこまで気にするのであるか?と思う。
けれど、それでことが円滑に進むならって思ってしまう自分もいる。
うむ。私も貴族的礼儀が抜けきれていないな。
松也さんが座布団を母に勧めてくれる。
よく気配りが出来る子分、加点1としておく。
母は恐縮しながらも、おとなしく座布団を使った。
うん、足痛くなるから、座布団を使ったほうがいいのである!
私も実は正座は苦手である。
洋間にしてほしかった!
そしてまずは願う。
「晶露様にかける毛布をください!」
幼児は風邪を引きやすいのである。
風邪を引いたら哀れである!
私たちがやりとりをしている間に、若君はさっさと自身の席に座っていた。
自身の席、言わずと知れた上座で、前当主の隣、私たちから見て左に座る。
自然、私と父と、それに母は2人を見上げる形になる。うまく出来ているものである。
縦社会の典型であろうか。
本家の前当主、跡取りの若君を前に、私語するのは失礼だろうが、話が始まる前ならと気になったから聞いてしまう。もちろん小声である。
「父、仕事はどうした?」
「ああ、本社から本家宅へとすぐに向かうように言われて、お前たちの少し前にこちらに着いたところだ」
父の勤め先、本家の関連会社であるからな。本家の命令は会社の命令とイコールか。
これはつまりである、私の家族の生殺与奪は本家が握っているということである。
皆様がお忘れであるかもしれぬので、ここで今一度言っておこう。
我が両親は脳筋夫婦である。
頼れるものは使って就職。縁故入社気にしない。それで問題なければいいじゃないっとの感じであったのだろう。
間違いではない。使えるものは使うべきである。
ただ、そのコネ関係で問題があった場合、弱気立場になってしまうのがデメリットであろう。
今まさにである。
若君の弟君であられる晶露様が、私に異常に懐いてしまった、という目前の事案がなければ、本家の圧力など気にせず平穏に過ごせただろう。
誠に残念なことである。
ああ!晶露様に気に入っていただけたことは、決して苦ではないことを、ここに一言付け加えておく。
おい。それよりももっと大きな問題を抱え込んでいるだろう?
それに比べれば些細なことだろうと発する方々がいるかもしれない。
それは私が本家若君の筆頭許嫁候補に選ばれたことを言いたいのであろう。
もちろん忘れてはいない。
だが、それについては私はあまり心配していない。
目の前にいる前当主と今は不在の当主が、私を許嫁に推したそうだが、それも一時の気の迷いであろう。
私の異能などたいしたことではないし、今まで眼中になかった小娘をしばし観察してみれば、正規の許嫁候補であった少女たちのほうが、遙かに嫁としてふさわしいと考え直すに決まっている。
新しい血を入れることも重要ではあるが、それはそれ。どうとでもなる。
正妻以外をもてば解決するのである。
他の女性を持つことに寛容である少女を是非正妻に選んでほしいものである。
そうは言いつつも、側室になるのは、私はお断りである。
いや、誤解しないで欲しい。
側室自体忌避しているのではなく、本家とこれ以上関わり合うのがいやなのである。
私は好奇心の赴くままに、自由に生きたいのある。
窮屈な生き方は前世でもう十分なのである。
話が少しずれてしまったので戻す。
この世界で見鬼の才と言われる能力は、異能を持っている者であるなら、大小あれど、誰でも持っている才である。私はそれが多少秀でているに過ぎないのである。
好配の儀で見た他の許嫁候補に上がっていた方々はおそらく、いや十中八九私よりも能力的に優れているに違いない。でなければ、あの場に居る筈がないのである。
異能以外でも、見目やたたき込まれた礼儀作法など私と比べるべくもない筈である。
私がそう思うのだ、きっと前当主、当主も私を観察する時間を持てば、冷静な判断をされる筈である。
さすれば、私は候補から外れ、めでたくフェードアウトできる筈である。
長々と語ったが、私が自身の若君の許嫁候補としての立場をそれほど問題視していない理由について、おわかりいただけたであろうか。
それでは、元々の事案について更に話を戻すのである。
私がここで言いたいのは、である、この事案、晶露様、分家序列底辺灰咲家、それも末流の娘に懐いた件が、起きた時点で、両親の首根っこを押さえられているに等しい。へたに逆らえば、親が路頭に迷う。そうなれば私もご飯が食べられなくなるのである!
悲しいかな私はまだ5歳、親の庇護がなければ、生きていけない。
つまりは本家に従うしかないってことである。
少し意地を張ってしまったが、こうして親共々呼び出される以上、これから本家に何言われても従うしか道がないのである。
こんちくしょうめ!
その心づもりで、諸君にはこれからの話し合いを聞いて欲しいのである!




