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第47話 私、憂鬱な気分におちいる

 どうすればよかったのか?

 私は父が運転する帰りの車の中で、外の景色を眺めながら思った。

 泣きじゃくる晶露様を見てしばらく、ようやく若君が動き、不器用ながらも晶露様をなだめにかかってくれた。

 三弥さんも内心はどうあれ、ぎこちないながらも若君と共にあやしてくれた。

 が、晶露様は首を振って、私にしがみついて泣き続けた。

 私も必死にお慰めして、説得を試みたが、泣き止んではくださらなかった。

 最後には無理矢理引き離して、三弥さんが部屋の外へと連れ出してくれた。

 それでも、必死に私のほうへと腕を伸ばしてくる晶露様の姿が忘れられない。

 ギャン泣きし続ける晶露様におろおろするするばかりのロウ。

 私は、ただただ私の代わりに傍にいてやって欲しい。お慰めして欲しいと告げるしか出来なかった。

 それが私にできる精一杯のことであった。

 私のなんと無力なとこか。

 晶露様が私を殊の外気に入ってくれたらしいことは感じていた。

 憑きものがついているとずっと遠巻きに見られていた晶露様。

 それを私が解決したからかもしれない。

 もしくは、偏見もなく優しく接したからかもしれない。

 しかし泣きじゃくる程に思ってくれていたとは。

 大粒の涙を浮かべて、しがみついてくる晶露様に、私は困惑してしまった。

 それとともに、腹も立って来たのである。

 昨日会ったばかりの私をこんなに頼りにするくらい、晶露様は追い詰められていたのだ。

 寂しい思いをされていたのだ。

 それを誰もわかっていなかったのだ。

 本家がどんな家か、家族関係かは知らない。

 が、晶露様にとっては、かなり寂しい環境だったに違いない。

 くそっ!子供は世の宝物である!

 親は何をしてる!

 父親!うむ。ご当主は、本家の仕事でほったらかしにしてそうである。

 妖精もどきが暴れているのに、放置だったことでわかる。

 期待できない。

 母親だ!母よ!出てこい!

 我が子に愛情をじゃぶじゃぶ注ぐのである!

 それが親の務めであろう!

 でも、あの晶露様の不安定さをみると、それも期待出来なさそうである。

 誠に誠に!遺憾である!

 当主夫婦は子供より、お家、大事か!

 ギリまともなのは若君であるか!

 若様がいればいいというのであるか!

 若君とて、まだ愛情を注がれる側であろう!

 本家の若君であれば、幼少から愛情はいらぬというのか!

 腐っているのである!

 できれば関わりたくないな!

 出来なさそうだけども!

「そばにいて!」

 怒りに爆発しそうになっている私に必死にしがみついて、帰らないでと訴えてきた晶露様。

 かなえてやりたい。

 けれど、いつまでも本家にいるわけにもいかない。

 私も5歳だ。前世の記憶があるとしても5歳なのだ。

 帰るべき家があり、家族がある。

 どうしようもない。

 どうもできない。

 ごめんよ。

「おおみねえさま!」

 必死に手を伸ばしてくる晶露様を振り切って、私は父とともに、帰宅の途についた。

 すまない。本当すまない。晶露様。

 願わくば、慰めてくれる人間がいてくれることを切に祈る。

 若君以外にである!ロウ!頼むぞ!

 姿が元に戻ったことで、偏見の目はなくなった筈である。

 見目で扱いが変わるのは、腹だたしいけれどもだ。

 この際、晶露様の心が少しでも和らいでくれるのなら、私の心情など関係ないのだ。

 もう一度願う!

 ロウよ! 晶露様の従属の妖精よ! どうか晶露様を頼む!

 晶露様のさみしさが一時のものであるように願うばかりだ。

 どうかどうか、晶露様に幸多からんこと!

 はあ。楽しかった筈の初の遠出。

 最後は後ろ髪引かれる後味の悪さが残ってしまった。

 残念な限りである。

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