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第45話 私、引き続き振り返る

「ふう」

 前半の振り返り終了。

 うむ。冷静に判断できているな私。

 ホットミルクとクッキーが私の脳にしみこみ、回転を助けてくれているのであろう。

 ありがたいことである。

 ふと隣を見ると、若君の弟君であらせられる晶露様がおいしそうにクッキーを頬張っている。

 その頭上で、ロウも同じく頬を膨らませている。

 まだ妖精としてなったばかりでエネルギーを欲しているのであろう。

 たんと食べるがいい。

 2人のシンクロした姿はまさに癒やしである。

 ずっと眺めていたい光景である。

 しかし、今ここで頭をしっかり整理しておかねばならない。

 これから訪れるであろう話し合いに臨む為に。

 先はまだ長い。

 続けて行こう。

 さて、初見えの前儀が多少のトラブルがあったものの、最後まで終了したとのことである。

 私は気絶してしまった為、最後まで見届けていない。

 また聞きである。

 分家序列最下位の灰咲家の退場など気にせずに、予定通りに好配の儀に移行してくれればよかったのであるが、そこで本家の当主と前当主から物言いがついたのである。

 晶露様のトラブル解決に際し、私が見せた見鬼の才や巫女の資質、巫女の資質については誤解であるが、とにかくも私の才を見て、若君の許嫁候補にと強く推したのである。

 いくらなんでも私の異能を高評価しすぎであろう!

 それを不服としたのは、予め決まっていた許嫁候補である。

 当然である。ぽっと出の、それも序列最下位の家の娘に本家の許嫁の席をかすめとられたら、黙っていらないであろう。

 同意である。強く同意である。

 本来の許嫁候補及びその分家の当主のその憤りを、本家のお二人に認めて欲しかったのであるが、本家や分家当主たちの議論の末、若君の許嫁候補が複数人になってしまった。

 若君はハーレムを少しも喜びはしなかった。

 むしろ煩わしく感じられたらしい。同情するのである。

 しかし私にも同情して欲しい!

 どういう経緯なのか、若君の筆頭許嫁候補になったのが、予め決まっていた許嫁候補ではなく、分家序列最下位の娘の私である!

 最終的に当主、前当主と分家5当主たちの話し合いの末、妥協点を見いだされたが、好配の儀に大幅な変更を余儀なくされた。

 それにより、儀式は翌日、本日に持ち越された。

 それでもなんとか無事に好配の儀が終了したのは先程のことである。

 ふう。頭の整理が出来たのはよしとしよう。

 ただ、好配の儀の内容が大幅に変わってしまったのは、決して私のせいではないと一言ここに明記しておく。

 強いて責を問うなら、当主と前当主であろう!

 私のことなど、路傍の石とみて、放っておけばよかったのである!

 くう。

 私は苦い気持ちを残りのホットミルクとともに、飲み込んだ。

 ともかくも、私と父の予定は大幅に変更されたのであるが、なんとか全行程終了と相成った。

 そして幸か不幸か、儀式が2日に渡ったおかげで(?)で、まだ日も高い。

 一日ずれたが、帰宅の途につくには十分の時間帯である。

 お茶で一息ついたところであるし、そろそろお暇したいところである。

 未練があるとしたら、ここの図書室を制圧できなかったこと、そして豪華な食事を存分に楽しめなかったことである。

 が、その未練さえも今は些細なものに思う。

 私は望んだものではないとはいえ、若君の許嫁候補筆頭になってしまった。

 今後どのように若様との接触を持つようにするのか。

 私の住まいは、本家が住む東京都とはかなり離れたところである。

 本家のお偉方との打ち合わせも必要だろう。

 父がな。

 ここではっきりしておこう。

 私ではない。一家の主柱は父。

 父が全面的に交渉に臨むはずである!

 大事な事なので、もう一度言おう!

 声を大にして言っておく!

 交渉は父が担当である!

 応援する!

 父よ、頑張って欲しい!

 もし私の希望が通るのなら、年に一度の顔合わせ位で、いつの間にかフェードアウトという展開が望ましい。

 一族分家の序列最下位であり、分家の分家のそれも末端、それが我が家、そしてその娘たる私が、本家の若君のお側に侍る必要はないと思うのである。

 ちゃんとそれ相応の教育をされている娘が、若君にはふさわしいと、私は考えるのである。

 このあたりの私の意見も家に帰った後、父に伝えなくてはならないだろう。

 が、それは今ではない。

 今はとにかく家へと帰りたい。

 二日前までは、遠出にあれほど心を躍らせていたのに。

 今は一刻も早く家に帰りたい。

 帰って、母と父と馬鹿話をしながら、夕飯を囲いたい。

 家に帰る。これほど強く思うことになるとは思わなかった。

 父もそうであろう。

 父に帰りたいと今願ったら、諾との返事一択であろう。

 若君も儀式が終わったとはいえ、変更につぐ変更で、忙しかろう。

 ドアの近くに控えている野衣さんに若君に伝言して、お暇をしよう。

 そうしよう。へたに引き留められても困る。

 頭でそう結論づけた時、そのタイミングを見計らったかのように、若君が部屋に入ってきた。

 ああ、やはり話し合いは逃れられぬか。

 父、期待しているぞ!


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