第43話 私、癒やされ、腹立ち、反省する
細かい事は後。
まずはお茶を飲んでからだ。
私はいくつかの言葉を飲み込み、部屋の奥右手にあるソファに座る。
私たちが座ると、メイドさんである野衣さんが、すかさずお茶とお菓子をローテーブルに用意してくれた。タイミングに抜かりなし。
また出された品を正確に言うならば、私と晶露様にはホットミルク、父にはコーヒー、そして市松模様のアイスボックスクッキーを出してくれた。
ああ!今の私にとって究極の癒やしである!
若君もいない。親戚もいない。
存分に休憩をと思うが、ホットミルクを飲む前に、やはり突っ込まずにいられない!
細かなところはと前置きしたが、やはりここは言うべきであろう!
ふ、私にもまだ気力が残っていた証拠であるか。
突っ込み処、それは座る席である。
おかしい。並びがおかしいのである。
私の隣に晶露様。そして正面に父。
本来ならば、私と父が隣同士で座り、上座正面に晶露様が座るのが正しいのである。
晶露様は本家のご子息である。私の隣に当然のごとくお座りになっておられるのは誤りである。
父よ。どうして指摘しないのだ。
スルーしてコーヒーを飲むんじゃない!まだ晶露様はミルクに口をつけてないのであるぞ!
私は内心で突っ込む。
なぜ内心であるのか。正しいと思うなら、口に出すべきであろう!
そういうご指摘もあろう。ごもっともである。
しかし、私がそれをしたら、晶露様が悲しまれるような気がするのである!
私は極力彼を悲しませたくないのである!
晶露様は十分に悲しい思いをしてきたのである。
これ以上、3歳のお子がするべきでないのである。
だから父に指摘して欲しかったのである!
おそらく父からであれば、晶露様は普通に受け答えをしてくれる気がするのである。
おごりもあるかもしれないが、父より私に心を許してくれている気がするからだ。
それはいやな役を父親に転嫁しているだけではないか?
そのご指摘もごもっともである!
しかし、父はその役目を果たす気はなさそうである。
いいのか?父よ?後で、三弥さんあたりに文句を言われなければよいが。
何せ、野衣さんがドアの近くに控えて見ているのであるからな。
ふう。私がそこまで考えるまでもないか。
父は大人だ、当然そこまで考えているだろう。
脳筋であろうともな。
そう私は結論づけて、一層肩の力を抜いた。
昨日今日は色々なイレギュラーが起りすぎた。
父の座る場所など小さきことか。
他に気にすべき事がありすぎた。
そうだよ。そこまでうるさく言わないで欲しいとの父の声が聞こえてくる気がするのは気のせいか?
私はコーヒーを飲む父を見ながら、頷いた。
そうであるな。今座る場所など拘ることはないか。
私はホットミルクに口をつけて、ほうと息をつく。
もちろん、隣の晶露様がミルクに口をつけた後であるぞ。
一口、二口。じわじわとミルクが染み渡る。
すると、少し頭が働き出した。
そしてむくむくと腹が立ってくる。
まったく。昨日今日濃密すぎるであろう!
私たちが予定していた計画から大きく逸脱しすぎであろう!
斜め上を遙かに行きすぎである!
雲を通り超して、星になるレベルである!
なぜにこうなった。
どこでボタンをかけ間違えたのであるか?
そうだ。父だ。原因は父にあろう。
本家の生業を詳しく話してくれてさえいれば、こうはならなかったのではないか。
いかな私でも慎重に動いた筈である。
私は憤懣やるかたなしで、お茶を飲む父を見る。
その視線に気づいた父も責めるように見つめ返してきた。
なぜに?!
その目がこう言っている。
大海よ。力があるなら、最初に言っておいてくれないと。パパも対応できないから。
こうなったのも大海のせいだからねっ!
うむ。私たちは確かに親子である。
お互いになすりつけあいである。
とはいえ、父の視線にも一理ある。
私も反省が必要かもしれない。
反省、それは大事なことである。
もう一度冷静になって振り替えってみようか。




