第35話 私、祈る。分家頑張れと
若君がいよいよ核心に近づく。
「お前の力を見て、お前を私の許嫁にという声が出たのだ」
やっぱりかあ!!!!
「いやです!」
即行拒絶である!
「無礼だぞ!」
三弥さんが、負けず即行で私を叱る!
「申し訳ありません!ですが!」
私の気持ちも考えて欲しい!本家の嫁になど言語道断!縛られるのはいやである!
「若君個人がいやな訳ではなく!そ、そう!許嫁にと予め決まっていた方を差し置いて、私ごときが割り込んで、若君の許嫁になるなど、できないと言う意味です!」
本家の嫁から逃れる為なら、私は最下層まで謙るぞ!
「お前、俺の、本家の、許嫁になる意味がわかっているな?」
「いいえ!ちっとも、まったく!わかりかねます!」
なんかもう、墓穴掘りまくりな気がするのである。
私は口を閉じた。
もう、必要最低限の事しかしゃべらないのである!
「許嫁をすげ替えるか、それはまだ審議中だ。会議の中でも、意見が割れていたのだ。そこでお前が目覚めたとの報告があった。ならばと、俺がお前から話を聞き、それを持ち帰ってから、また新たに話し合いがもたれることになっていたのだ」
若君が意味深に、ここで言葉を切る。
私は言いたい!そういう事は最初に言っておいて欲しいのである!!
ああ、私、やらかしたのである。
覚悟するしかないのか?
若君が再び口を開いた。
「この部屋での一連の出来事を審議にかければ、変更に反対の者も黙るだろう。何より当主である父上、それに前当主であるおじいさまが新たな風を望んでおられるのだ」
その言葉から、本家と分家で意見が分かれていたのだろうと察する。
本家は私推し、分家は予め決定されていた娘推しか。
私は一縷の望みをかけて、頼み込む。
「若君!ここでのことを黙っていていただくことは!」
「できないな」
ああ、やはり。
私は父をキッと睨み付けた。
「父!最初からきっちり話してくれていたら!」
「こうはならなかったか?」
若君が口を挟んでくれる。
それも、なぜか嬉しげに。憎たらしい!
「いえ!晶露様をお救いしないという選択肢はなかったです!」
私はヤケクソ気味に叫ぶ。
「けれども!もっと隠れてそっと事を収めることができたかもしれないです!」
だから、父が悪い!
父!帰ったら!母にお仕置きしてもらうから!
これは八つ当たりではない!
最後の、最後の、とどめとばかりに若君が言い渡す。
「本家は新しい異能者を望む。私の許嫁はおそらくお前になるだろう」
「う」
いやだ!拒否権はないのか!
私はすがるように父を見た。
父は青ざめた顔を私に向けて、首を振る。
本家の命令は絶対か。絶対ではある!
父の顔をみれば、逆らうなどありえない。
それに父と母の職場は、本家の会社である。
逆らえば、一家路頭に迷ってしまう。
私は全身全霊で願う!
これから行われる審議の場において、どうか分家の皆様に頑張ってほしい!
どうか予定通りの方を、若君の許嫁に!
推して推して推しまくって欲しい!!
「とにかく、一度持ち帰らせてもらう。沙汰は明日、知らせる」
若君はそう言い放つと、立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
「若君!お待ちください!」
私はそこに食い下がった。
最後に若君の気持ちを教えてほしい。
「若君だって、一生添い遂げることになる女性を、いきなり、はい変更!などと言われても納得できないでしょう!?そうですよね!?」
若君だって、私みたいなぽっと出の幼児よりも、予め決まっていた美少女(←きめつけ)のほうがいい筈である。
若君は顔だけ振り返って、少し考えた後、告げた。
「初見えの前儀は一族の女を集めて、跡継ぎの嫁を決める儀であった。それこそ、昔は一度も会った事もない女の中から、嫁を決めたそうだ。原点に返るという意義からしたらならば、お前に変更もありだろう」
違う!私が聞きたいのは、そういうことじゃないのだ!
「若君のお気持ちは、どうなんですか?」
これだよ!
「私の気持ちか?」
「さようでございます!」
「当主がお決めになった事なら、それに従う。愛だの恋だの、私にはわからない。興味もないからな」
であるな!!
若君だって、まだ7才である。恋愛に興味を抱く年でもない。
だから、親の命令に従う。
わかる、わかるのである!
しかしわかりたくはない!
若君が反論してくれれば、審議の結果も、変わるかもしれないのに!
「それに血が濃くなりすぎるのもよくないと聞く。それを考えると、ここで遠き者と縁を結ぶのもよいかもしれぬ」
若君はそう告げると、三弥さんを連れて、今度こそ出て行った。
そんなダメ押し、聞きたくなかった。
私はソファから崩れ落ちた。
主人公、ずるずると本家へと引き込まれているw
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