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第34話 私、若君をうらめしげに見る

「よし。まずは今日ここに呼ばれた理由は理解しているか?」

「は、はい。今日は若君の許嫁を決める日であると聞きました」

 声が上擦(うわず)ってしまった。落ち着け、私。

「そうだ。その為の初見えの前儀、そして本儀式の好配の儀が行われる予定であった」

 過去形である。そうか。今は午後も大分過ぎている。

 晶露様と妖精との騒ぎがあった為、予定が遅れてしまったのか。

「本来儀式はスムーズに進めるために、綿密な打ち合わせとリハーサルを行っている。もっと言えば、許嫁候補も予め決まっていた。儀式はあくまで形式として滞りなく行われることになっていた」

 うむ。推察通りである。

 どうか遅れたとしても、明日予定通り、行って欲しい。

「だがここで初見えの前儀で、予定にない出来事とそれに伴う新たな発見があった」

 新たな発見、な、なんだろうか?

 若君の嫁取りと関係があるのか?

「その為、好配の儀は延期。急遽本家と分家序列第3位までの筆頭とで、話し合いが必要となった」

 ひたりひたりと何かが私に近づいてくる感じがする。

 やな感じである。

「延期だけでなく、儀式自体変更を、それも盛大な変更をしなければならぬ事態が起きた。なんだと思う?お前ならわかろう?」

 ものすごい悪い予感がする。

 私はそれでも、気づかないふりをする。

「さ、さあ、なんなのでしょう?私にはわかりかねます?」

「そうか。ならば、ヒントをやろう」

「ヒント?で、ございますか?」

 今の私はクイズを楽しむ余裕はない。悪い予感が、もうすぐ後ろに、ある気がするからである。

 本家の若君の前でなければ、父ともども、脱兎のごとくここから逃げ出してしまいたいと思っているほどである。

 それでも、相手は本家の跡取りの若君である。

 逃げ出すことは許されない。

「そう、有力なヒントをやろう。ありがたく思えよ」

 ちっとも!ありがたくないのである!

 できれば、聞かずに済ませたいくらいである!

 だが、若君は容赦なく続けてくる。くう。

「我が本宮家は警備会社を経営している。しかしそれは表向きの仕事であり、本業を行うまでの力がない一族の者の、受け皿という側面も持っている」

「本業?」

 なにそれである。なんか本気で聞きたくないのである。仕事は一本化して欲しいのである。

「ああ、我らの本業は、異能を使った(あやかし)退治なのだ」

「異能?」

「異能とは、お前が持つ見鬼の才もその一種よ」

(あやかし)退治?」

(あやかし)は、そうだな、物の怪、亡者、生き霊、大きな意味合いでは妖精もそうだろう。その中で、人間社会に害をなすものを我らは退治する」

 やはり、そちらの力だったか!!

 前世の記憶がないなら、私はなにそれ、おとぎ話ですか?と首をひねっていただろう。

 しかし私には前世の記憶があり、(あやかし)や物の怪という表現ではないが、魔物やレイスと言ったものはしっかり現実にいて、私自身も倒した記憶がありありとある。

 だから笑えない。

 そして異能。魔力ではないが、確かに私の中にある魔力もどきの力。これがここでは異能と呼ばれる力なのか?

 ということは。本家の許嫁の判断基準は、この異能の力か!

 私の顔色が変わったのを、理解したと取ったのか、若様がさらに追求してくる。

「わかったらしいな?」

「いいえ!まったくわかりません!い、い、異能?そんな不思議なものがあるのですね?あ、あ、あやかしって本当にいるですね?」

「いるだろう?お前が今さっきまで、平然と話していたではないか。妖精と」

「知りません!わかりません!わかりたくありません!」

 あ、最後言い方間違ってしまった!私の正直者!

「くく。どうやら、ちゃんと理解してくれたらしい」

 くそう!若君がすごい楽しそうだ!私の苦しむ姿がそんなに楽しいのであるか!

 そして最後のとどめとばかりに、若君が告げる。

「そう、我が本宮家の、嫁の選定の基準は、異能の力だ」

「ああ!聞きたくありませんでした!」

 私は思わず断言してしまった。

「ははっ!無礼だな!だが、許してやろう!私は今、気分がいいからな!俺と同じように混乱するがよい!」

 くそう、くそう!憎らしい若君だ!

 私は悔し紛れに、言い放つ。

「私に力なんてありませんよ!全然!これっぽっちもです!」

「全否定しても、もう遅い!先程お前も認めたではないか!見鬼の才があると!」

「くう」

 少し前の私を殴ってやりたい。もう少し慎重に言葉を発しろと!

「それだけではないぞ。忘れたとは言わせない。我らの前で、我らが知らぬ言葉を使い、妖精を鎮め、なおかつ形を与えた」

「あれは頭に浮かんだ言葉で!力ではありません!妖精も、そう偶然!頭に形を持たせるやり方が浮かんで!妖精が形を成したのは、晶露様と若君のお力でございます!」

 苦しい!流石に苦しい!でも認めたくないのである!

 ああ、父よ。なぜに本家の本業の話を、私にしておいてくれなかったのか!

 嘆いても、後の祭りである。

「はは!認めたな!巫女の素質があることも!あやかしを退治するだけが力ではない。知力も立派な力だ。そして我らの知らぬ知識を持つ女子、つまりお前の存在は超貴重な存在なのだよ」

「知識なんてありませんよ!今回で打ち止めです!」

「なぜそう言い切れる。それにたとえそうだとしても、エルフ語なるものを自由自在に操れるお前の存在は、今後妖精が現れた時に、役に立とう」

「妖精なんて滅多にいませんよ!」

「へえ?そうなのか?」

 しまった!余計なことを言ったのである。

「今のお話は図書館の本に書いてありましたから!」

 おとぎ話として!多分!

 私はこれ以上墓穴を掘らないように、口をつぐんだ。

 ああ、いやな予感が当たった。

 更に不吉なワードが若君から出た。

 儀式の変更。

 それが私にどう関係してくるのか?

 ああ、事態は私の望まない方向に進んでいるようである!

 私はただもう、お家に帰りたいだけであるのに!

主人公、若君に押されてますw

いつもお読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

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