第20話 私、要望2つとしながら、実は3つ出す
主人公、下準備進める。
「すべてまかせてもよいのか?何か必要なものがあれば用意する」
はい、協力も含ませた疑問もいただきました。
頼む手間が省けたのである。
若君、いや、弟君の協力が、ぜひとも必要なのだ。
「ありがたきお言葉、痛み入ります。それでは厚かましいとは存じますが、お願いが2つございます。申し上げて、よろしいでしょうか?」
「許す」
「ありがとうございます。まず1つ目の願いは、弟君とお話しする許可を頂きたく存じます」
「晶露と話を?」
「はい。今回の件、弟君が中心でございますれば」
「私が近くにいても、問題ないか?」
「はい」
「ならば、許す」
「ありがとうございます」
なんか前世で、大貴族と話をしているような気分になってきたぞ。
「2つ目の願いですが、弟君の髪の毛をほんの少し、いただきたく存じます」
「髪を?何に使う?」
おっ!いきなり怒らなかったであるか。神経質になっている時に、弟の髪をくれっていきなり言われたら、怒っても不思議ではない。
「髪はその人物の霊力、エネルギーを多分に含むものと考えられております。妖精をこの世界に顕現させる為の依り代として、弟君の髪を使いたいのでございます」
弟君の髪は必須だ。
他の誰かの髪では、だめだ。
妖精未満が、愛し子と定めている弟君の髪でなくてはならぬ。妖精未満の弟君への執着を利用するのである。その執着の力と妖精未満の力で、姿を確立させる。
なお、このやり方が通用したのは、前世で、それもこちらからみたら異世界だ。
更にいえば、このやり方は、元のやり方の応用。
成功確率は実は五分もないかもしれない。
失敗したら、子どものやったことですと、許してもらおう。
だが、成功を目指す!失敗したら、何より格好悪いのである!
どうか成功しますように。
前世でできたことが、今世でも可能なのか?
なんの!
可能だと信じてやるしかない!
若君は使用人にはさみを持ってこさせると、私に聞いた。
「どのくらい必要だ?」
「ほんの一房で。長さは2センチほどでよいです」
どうやら、若君がお切りになってくれるらしい。
それが妥当である。見知らぬ幼女が、はさみを持って近づいてきたら、弟君、恐怖を感じるだろう。
「晶露、お前も聞いていただろう、髪を、少しもらうぞ」
自分の腕の中にいる弟君に、若君がそっと声をかける。
「はい」
弟君は目に涙を浮かべながらも、こくりと頷いた。
可愛い!なんて可愛いのだ!私も弟がほしい!もちろん妹でもかまわぬとも!
ぜひとも父母に、お願いせねばなるまい!
なお、一言言っておく!
私にはよこしまな気持ちは一切ない!
弟君は髪を切られた際、耳元で鳴ったはさみの音に、一瞬身体をびくりとさせた。
けれども、それ以上動くことなく、おとなしくしていた。
うん。よい子である。
「要望の、晶露の髪だ」
「はい。受け賜ります」
俺は恭しく弟君の髪を両手で受け取った。
金色にキラキラ光って、いかにも妖精が好きそうな色である。
さて、次の準備だ。
「弟君に、話しかけてもよろしいでしょうか?」
「許す」
若君、私に言葉が少ないよ。なぜだ。
まあとりあえず、了承を得たので、更に2人近づいて、若君の近くに立つ弟君の前に、片膝をついた。弟君の髪は左手で持つ。
「遅くなりましたが、お初にお目にかかります。灰咲大海と申します。これから、弟君を守っている小さき妖精に、形を与えようと思います」
「ようせいさん?ぼくをまもってる?」
おっ!弟君、怖がるだけでなく、少し興味を持ってくれたかな?
これは、妖精未満が、決して悪いものではないとアピールしておかなくては!
「はい、弟君のおそばにいる妖精、とはいってもまだ形がないので、妖精未満ですが。その妖精は、弟君が大好きで、一生懸命守ろうとしてます。どうか嫌わないでやってください」
そうは言っても無理かな?
この妖精未満、色々やらかしてるみたいだし。
「うん」
弟君、まだ涙の後があるのに、頷いてくださる。よい子である!
こういう子だから、妖精に好かれるかもしれない。
妖精未満。愛し子にお前の事をよく言っておいたから、と後で話そう。
そうすれば、私のことも気にかけてくれるかもしれない。
私は、こちらの世界の妖精にも、大いに興味があるのだ。
「でもね」
弟君、何か訴えたいらしい。
「なんでしょう?」
「ようせいさんだとおもうけどね、ぶんぶんて、だれもいないのにおとがして、こわかった」
「そうですね。それはこわいですね」
それもきっと害意はなくて、弟君を見て妖精未満が喜んでいたのだと推測される。
すべてがすれ違い、悲しいことである。
しかし、この台詞から、弟君も妖精未満をかろうじてだが、認識できていたようだ。
こんな小さい時分から武道をやっているのだろうか?
それとも血筋で勘がよいのか?
弟君は、私に訴えたことで、その時の事を思い出したのか、ぎゅっと兄の腕を掴み、震えている。
お可哀想に。
私が今、解消して差し上げる。
その為には、弟君に妖精の存在を受け入れてもらわないといけない。
「それでも、痛い思いはしなかったのではないでしょうか?」
「うん」
「音はして気配がするのに、見えない。そうです。見えないから怖いのです。形をなせば、妖精未満は可愛いものかもしれませぬよ?」
「かわい?」
ことんと、首をかしげる。
弟君、可愛いのは君だ!
前世での弟も可愛かったな!
いかん!雑念が!
集中、集中だ!
「ええ、きっと、可愛らしい姿になる筈です。弟君がそう望めば。思わず撫でたくなるほどに」
基本、精霊や妖精は可愛らしい姿をしているものが多いのだ。
例外もいるが、それは置いておく。
「なでられるの?」
「はい」
「もうぶんぶんしない?」
「ええ。私も助言をしましょう」
「うん」
弟君に、少し笑みが戻る。
若君はずっと黙ったままだ。私に任せてくれているのか。
がんばらねばならない。
さて、もう一押し。
「可愛い妖精の姿を見る為には、形を与えねばなりません。その為には弟君のお力が必要なのです。力をお貸しくださいますか?」
「ぼくのちから?」
「はい。私めの力だけでは、難しゅうございますれば」
そう、妖精自身の力、そして弟君への執着する気持ちだけでは足りぬのだ。
今世私には力がない。魔力もなく、魔法も使えぬのだ。
あるのはエルフ語の言霊の力のみだ。古き言葉には力が宿る。その力を利用する。
なんとも頼りないものである。
だから、だからこそ、弟君の力が必要なのだ。妖精の一番の関心、弟君の気持ちの力が。
「わかった。ぼく、がんばる」
弟君、こくりと頷いてくれる。
「ありがとうございます!」
よし!掴みはOKである!
「ぼく、なにをすればいいの?」
「待て。晶露になにをさせる気だ。聞いてないぞ」
そこで、若君から待ったがかかった。
ちっ。話の流れで押し切りたかったのに、だめだったか。
弟君の力が必要と最初に話していたら、絶対許可が下りなかったから黙っていたのだ。
私は立ち上がって、弁解を試みる。
言わなかった事実は、スルーする。
「妖精未満は弟君がいることで、形をなしたいと思っております。その為、どうしても弟君のお力が必要となります。ですがご安心ください。危険なことはありません、絶対に」
「本当か?そなたは、肝心なことを言おうとしなかった。信用できぬ」
これは失敗したか。
「それについてはお詫び申し上げます。先に申し上げなかったのは、その段階で申し上げれば、弟君と話す許可はいただけなかったでしょう。そうなれば、弟君の状況は改善せぬままでございました」
「今ならば、私が許可を出すとでも?」
「はい。聡明な若君であれば。私の話をきいて、そして現在の妖精未満の状況を見てもらえたならば」
妖精未満よ。先ほどから、疲れたのか、静止したままである。
そのまま!そのままでいてくれ!
「妖精は、自分の愛し子と定めたものを、決して傷つけません。私が信用できなくても、過去の妖精の行動を思い返していただいて、ご判断くださればと存じます」
若君はしばらく考えて、頷いた。
「わかった。晶露にそなたへの協力を許そう」
「ありがとうございます!」
「ただし、私もそばにいるぞ」
「それは問題ないです。逆にその方が、弟君のお心穏やかにいられるかと存じます
」
若君はそこで大きく息をついて、じとりと私を見る。
なんだ?
「そなた、本当に5才か?やたら弁が立つな」
いや、それはこっちの台詞である。
確かに今の私は前世の私寄り、全開だ。
不審に思われても仕方ないかもしれぬ。
けれど、今更態度を変えてもどうしようもないだろう。
このままで行く。
て言うか、私の年、知っているのか。
もしかしたら、若君、今日の参加者のデータ、すべて頭が入っているのか。
ああ、忘れていた。
そうだ、私も一応は、若君の許嫁候補であった。
年くらい知ってるか。納得である。
とにかくも、体裁は整った。始めよう。
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