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第158話 私、しばしの船旅を楽しむ

 いよいよ明日、かの地の清めの儀式が行われる。

 前日の金曜日の夜、H県にある水音家傍系の家に到着。

 この地の水音家の総代が、出迎えてくれた。

「このたびは前総代との引き継ぎの不具合にて、本家の方々、また分家当主の方々に多大なるご迷惑をかけ、それに加え、ご足労いただき、誠に申し訳ございません」

 玄関先で、土下座で迎えた水音傍系総代である

 こちらも代替わりしたばかりで、やはり若い。そして顔色が悪い。

 それはそうだろう。きちんと引き継ぎができておらず、水音分家当主、そればかりか、本家にまで面倒をかけたとあっては、満面の笑顔で迎えるのは、難しいであろう。

 しかし、水音総代よ。

 ポジティブに受け止めて欲しい。

 これで代替わりの引き継ぎだけでなく、家の中の連携も、改めてしっかり見直せる良い機会になったと、思って欲しい。

 そしてしっかりとこの地の水音総代として、発展していって欲しい。

 ちなみにこの地の若き水音総代の名前は水音亜真里(あまり)さんと言う。

 そして、あれ?今思ったのであるが、各県毎に6分家いや、我が分家は除こう、5分家同族がいるのであろうか?

 そこまで我が一族は、日本に根を張ってるかは不明である。

 のちほど、調べておこう。

 ‥‥‥覚えていたらである。

 どうもそういった関係についての私の関心は、底辺なのである。

 好きな人はいるのか?いるのであるな。

 私はそういった方々とは、友になれそうもない。

 若君は、この地の水音総代の、延々と続きそうな謝罪を、強引に切り上げさせて、明日に備えた。

 ふう。若君が強権発動してくれて、よかったのである。

 そして本日、清めの儀式である。

 早朝から準備に取りかかった。

 この地の水音総代、亜真里さん始め、地元の水音家の家人及び親戚筋は、迅速に無駄なく動いてくれた。

 気持ちはわかるよ。

 君たちの心労は、計り知れないであろう。

 早く無事に終わるとよいよね。

 移動はなんと船であった。人魚様との出会いの場である、あの浜辺は、島にあったのだ。

 なおその島は、亜真里さんち所有の島だそうである。

 島の名前は、水島。

 ひねりがない。わかりやすさが優先か。

 ともあれ、島に着くと、術式陣を使わずとも、かの浜辺に通じる道はあり、今回はそこから向かう。

 おそらくだが、亜真里さんたちは、亡き前総代の手帳を頼りに、この数日で浜辺までの道を調べあげたのであろう。

 苦労が計り知れない。

 ちなみに、亜真里さん宅にも、術式陣が発見されたらしいが、1人用でかなり小さいので、そこからの移動は効率が悪いと、今回は使用しないことになったらしい。

 もし!もしも時間が許すなら!どうかその術式陣を見せて欲しい!

 できれば、すぐにでも!

 無理か!もう水島に向う船の上である。

 いや!亜真里さんの家にあるなら、私は川の術式陣の調査を、本家当主から依頼されているのである! きっと調べる機会があろう!

 少し遠いが、その調査対象の術式陣を使えば、一瞬である。

 未調査の術式陣を、使わせる訳なかろう!との、若君の声が予想できるが、それはそれ!

 私は希望を胸に、今日を乗り切るのである!

 私はそこで、ふと疑問が浮かんだ。

 よく浜辺に通じる道から、前水音総代以外の者が立ち入らなかったなあと。

 その疑問をそのまま亜真里さんに尋ねたところ、すんなりと答えてくれた。

 水島は、とても小さな島であり、島の所有も水音家。その為、島には、島を管理する為の建物とその管理人しか住んでいないとのことである。

 そしてもちろん、その管理人は、傍系水音家の者である。

 その管理人も高齢になってしまい、島で暮らせなくなって、ここ1年くらい、島は無人であったらしい。

 うーん。色々重なってしまっていたのだな。

 残念である。

 そう感慨にふけっていると、船の先に、島影が見えて来た。

「おお!島が見えてきましたね」

「はい!」

 私の隣で元気にお返事をしているのは、晶露様である。

「島か!島?」

 島の定義を知らないのか、ロウが晶露様の頭の上で、首を傾げている。

 妖精の共通知識から、導き出せていないらしい。、

 やはり知識には、むらがあるようである。

 この2人、本来はお留守番組である筈であったが、私が同行するのが決まるや、晶露様は色々な理由を述べ、最後には幼児の最大の武器である泣き落としを使用し、当主に同行する許しを得たのである。

 当主としては厳しくしなければならないのだろうが、憑きもの付きとして放置していた後ろめたさがあるのか、泣き落としに、まんまと落とされてしまったようである。

 今回はそれほど危険がないとかなんとか、理由をつけていたようであるが、私は真相を見抜いているのである。

 若君同様、もしかしたら、明臣様も、晶露様の泣き顔に弱いのかもしれぬ。

 いい!今まで寂しい思いをしてきた分、存分にわがまま言って泣けばいいよ!晶露様!

 ちなみに今回の儀式に向けての本家関連のメンバーは若君、私、そして晶露様、ロウ、お付きの者面々である。当主、前当主は多忙の為、来ていない。

 今回の責任者は、若君である。

 まだ弱冠9歳であるのに、もう一人前として仕事をしなくてはならないのか。

 本家として生まれてきた不運か。

 とにかくも、晶露様も当主様の許可が下りて、来れてよかったのである。

 お留守番は、いやなものである。

 それにこの案件に深く関わっているのであるから、最後まで見届けたほうが面白い、いや!学ぶ事が多いのである!

 ちなみに我が両親に、同行を打診してみたが、完全拒否された。

 可愛い子には単独で旅をさせよ!とかなんとか、理由をつけていた。

 私は真相を見抜いているのであるぞ!両親よ!!



大海の両親と大海本人、どちらが気苦労が多くなるのかw

いつもお読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

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