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第155話 私、現当主の望むままに啖呵を切る

「よかったな、嫁筆頭。調査に期待する」

 現当主様よ!

 口角を上げ、上座に座っている明臣様の頬を、つねってやりたい!

 今でさえ、人間関係に苦労しているのに、まだ混乱に落とし入れるつもりであるか!

 いったい私に、何を望んでいるのであるか!

 しかし相手は本家現当主、100パー拒否したいが、それも(あた)わず。

 私はすべてを飲み込み、笑顔を貼り付け、答えた。

「ありがたく、精進いたします」

 そして私は、すぐに前を向いた。

 これ以上、明臣様の顔を見ていたら、ストレスでおやつが食べられなくなりそうである!

 もう一度言おう。

 現当主である明臣様が決められたことを、私が覆すことなどできないのだ。

 私はこの場では、序列最下位の家格。

 個人の功績など、なきに等しい。

 晶露様の状況を、たまたま変えられただけの、ぽっと出の、筆頭許嫁候補である。

 意見を言い、それを通したければ、実力を示さねばならない。

 ああ、普通の家に生まれたかったのである。

 少し嘘をついたのである。今の両親の間に生まれて、私は幸せである。

 ではあるが、なぜに7歳の身空(みそら)で、このような苦労をしなければならぬのか。

 ネイちゃん、我が生涯の幼稚園の友、ネイちゃんに会いたいのある!

 彼女と戯れた日々が、あまりに遠い。

 ふう。心中で愚痴りまくって、少し落ち着いたのである。

 決定事項であれば、その範囲内で、少しでも摩擦を少なくし、最善を尽くす。

 軍隊で培った精神である。

 今、私に求めされている役割を果たすことに、専念しよう。

 改めて、私の前に座る御仁たちを見つめる。

 水音家当主はまだ、明臣様に、意識が集中しているようだ。

 ならば、その隣に座る土出家の当主の様子は、どのような感じか。

 涼しい顔しているな。

 内心では、どうなのであろうか。

 どのような説明を受けて、ここに来たのであろうか。

 コワタミ様との約定うんぬんについては、おそらく聞かされていないに違いない。

 神の眷属であるコワタミ様のことを知る人間は、制限されている筈である。

 私たちからコワタミ様の情報がもれ、悪用された場合、どのような天罰があるか。

 それを考えると、必要最小限の人間以外、詳細は伏せられるであろうからな。

 土出家の力を借りるにしても、詳細を話さずとも、今回は事足りるであろうし。

 私の気持ちが落ち着いた頃合いをみたのかは不明であるが、やっと清めの儀の話に移行した。

 絶妙の間である。悔しい。

泰然(たいぜん)

「ははっ」

 よかったな。やっと、貴方の出番である。そして泰然というのか。響きの通り泰然としている御仁で居て欲しい。

「今回、そなたを呼び出したのは、ある案件の後処理である」

 ある案件ね。

 わざわざ水音の当主の叱責の場に呼ばれたのだ。

 よっぽどの脳筋でなければ、水音家の失態の後始末であると、わかるだろう。

 分家の当主に、脳筋はいないと信じたい。

「ある地の清めを早急に行いたい。が、そこで土出家の力が必要だと、アレがいうのでな」

 そう言って、私の方に、顎をしゃくる。

 今度はアレ呼ばわりか。嫁筆頭と、どちらがましか。

「さようでございましたか」

 土出家の当主のおじさん、はじめてこちらに、注意を向けたよ。

 その目は喜んでいるというより、私を吟味している目である。

 やはり、この御仁は、脳筋ではない。

 活躍の場を提供してくれてありがとう!って素直に喜ばないタイプである。

 面倒である。

「恐れながら!」

 水音家当主が、ぎっと私を睨む。

 まあ、そうであるよな!

 余計な口をきいてくれたと思うだろうよ!

 私は現当主に、そう言いたいがな!

 これで細井川の調査、余計やりにくくなるのは、必定である。

 明臣様、私を窮地に立たせたいのであるな?

 困らせたいのであるか?

 私は父、近平直伝の表情を、貼り付ける。

 即ち、無である。

 現当主を、これ以上楽しませるものか。表情筋、凍結である。

「かの地の管理は、古くから我が水音の家が任されております!かの地の清めの儀式も、我ら水音家だけで行いたく存知ます!」

 だから、余計な口出すなってか?

 その気持ちは、わかるのである。

 自分のけつは、自分でふきたいのであろう。

「だそうだぞ?」

 明臣様が、私に振ってくる。

「土出家の手を借りろと言ってきたのは、先程も言ったが、コレだ。コレがなぜ泰然の力を借りた方がよいか、説明してくれるだろうよ」

 アレの次はコレか。

 突っ込みたいが、今はそれどころではないな。

 ここで求められるのはあれだな。

 ばしっと、びしっと、啖呵を切れと!

 わかりましたよ!

 分家序列第2位に、分家序列最下位の娘が、喧嘩を売れってか。

 了解です!くそっ!

 私は一度大きく息をついてから、まっすぐに水音家当主を見た。

「今回不慮の出来事で、かの場の汚れが例年よりも溜まっていると推測されます。ならば、土の気に秀でた方の力を借りるのが、上策であると愚考致します」

「我らだけでは、できぬと申しますか!」

 いやいや、落ち着いて欲しい。行間を読んで欲しかったが、説明しなければならないらしい。

「そうではございません。私はより上策を取る必要があると思いますれば、具申したのであります」

 なんか軍隊言葉に、戻ってしまったのである。

 分からず屋の上司に、説明をしているようである。

 ふう。水音家の若き当主よ。

 怒りを静めて、よく考えて欲しい。

「口出し無用!我らが、完璧に、元の地に、戻してみせる!」

 だからそこだなのだよ!もうはっきり言うしかないのであるか!

 7歳児に言わせるな!

 でも気づいていないみたいであるな。はあ。仕方がないのである。

「そこが間違って居るのです」

「なに?!」

 水音家だけでも、清めの儀式できるとは思う。しかしもう少し考えを進めないといけない。

「ただ、戻せばいい、と、いうものではありません」

 相手は激高している。私はより冷静に努める。そして言葉は、気持ちゆっくりと。

「今回、かの方に不興を買ってしまっております。ならば」

 私はそこで、一拍おく。

「かの地を清浄に戻す。それは当たり前のことです。しかしそれだけでは足りないのです。我々はそれ以上しなければならない。なぜか」

「信頼回復だな」

 若君がぽつりとこぼす。援護ありがとうございます。若君!話しておいてよかったのである。

「その通りです。今回の件で、少なからず、我らに対する不信が芽生えたでしょう。それを払拭する為に、あの地を以前よりも清浄な地に、かの方が感心するような地にしなければ、信頼回復の一助にならぬでしょう!」

 コワタミ様情報、これくらいなら許されよう。

「だがしかし!」

 まだ言うか。

「それでも我らは幸運であります。すぐに名誉挽回の機会に、恵まれているのですから!かの方がせよとおっしゃってはいない。けれど、こちらから率先してそうすることで、今一度、任を託せるに足る一族であると思っていただけるかもしれません!それが今回の機会です。万全を期せずして、なんとしましょう!だから今一度申し上げます。どうか土出家のお力を借り、2家併せて完璧なる清めの儀式を行って欲しいのです」

「ぐう!」

 ふふふ。ぐうの音もでないか。

 いや実際、水音家の当主の口からは出たな。

 以前よりも清浄な地へ。

 そこまでする場合、土の気が必要であろう!

 たとえ序列が低いとはいえ、土出家はその名の通り、土の気では、一族で随一であろうからな。

 実際の力は、知らないがな。

 それならば、一時を耐え忍んで、土出家の力を借りるのが、ベストであろう。

 一時のプライドより、未来の名誉を取れと、私は言いたいのである。

 他の分家に借りを作るのが、いやなのか?

 そんなプライド、お池に捨てて欲しい。

 目的を見誤らないでくれ。

 一番は、かの地の浄化を、完璧にすることである!

 さあ、受け入れろ!水音家の若き当主よ!

大海、偉そうw

いつもお読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

誤字報告ありがとうございます。助かりました!(08/07/17)

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