第154話 私、いつかの間に連行される
私を大いに慌てさせた現当主。
乱入してきた!?と思えば、すぐに出て行ってしまった。
私に爆弾を落としたまま、退場であるか!
本家ご当主!食えない御仁である!
それに怒りを覚えるが、更に怒りを覚える件がある!
おい!晶露様への労りは、ないのであるか!
「昨日は眠れたか?」との一言があってもよかろう!
子が一時的とはいえ、神隠しにあったのであるのだぞ!
まったく!本家の親子関係はどうなっている!
言えないけどな!
私が現当主に憤っているのが伝わったのか、晶露様が、私の手を握る。
「よいのです。ぼくには、にいさまとねえさまがいますから」
くう!けなげなお子である!
そして察しがいいのも、この場合、悲しい。
私がぎゅっと晶露様を抱きしめてしまったのは、避けられない行為である!
反論は認めない!
そして、私に難題を落とした現当主も、許すまじ!
言えんがな!
私が怒りに震えて、本家現当主を心の中で、罵倒してから5時間後。
本家の応接室。いつか通された場に私はいた。
うーん。相変わらず広い日本間である。
そして一段上がった上座には、現当主と若君。
その右下手には、私と晶露様。そして晶露様の頭上にロウ。ロウにはお口にチャックと言ってある。
そして相変わらず晶露様の席次が違う。もはや誰も突っ込まない。慣れとは怖いものである。
左下手には水音家と土出家の分家当主。
本家現当主と若君を上座に置きながら、私たち下座組は向かい合うように座っていた。
今回水音家の失態、管理不行き届きの事案である。
本家が絡んでしまったこの案件、コワタミ様と約定していたかの地の水音傍系の者ではなく、水音家の当主が出張って来たらしい。当然といえば当然か。
それにしても若いな。まだ20代ではないか?
あ、本宮本家の当主様も若いよな。皆、代替わりしたばかりなのか?
私はこそりと晶露に尋ねてみた。
5歳でも聡明なお子である。
何か知っているかもしれない。
「さいきん、まゆみのちちおやが、なくなりました」
むむ!水音家不幸が続いておるな!
なにかあるのか?
晶露様はそこまでは存じ上げないらしい。
それはそうである。
だが、基本的なところは教えられている。
一族の序列に関わることであるからであろうか。
そして水音家当主、まゆみという名前らしい。真に弓である。
しかしなるほど、だからであるか、水音現当主は若いのは。
合点がいった。
理由を聞けば、当然とは思うが、随分と気を張り詰めているようである。
最初からそんな気張ると、息切れをしてしまうのである。
大丈夫?ちゃんと昨夜は休めたであるか?と問いたくなるくらいである。
誰かちゃんと、若き水音分家当主を、補佐してあげて欲しい。
私は、出来んがな。
生意気と言われるだろうし、分家の序列最下位の家の者から言われたくなかろう。
それにしても、今回の案件、やむを得ない部分はあるとはいえ、神の眷属絡みのうえ、本家が尻拭いしたとなると、大失態であるのは間違いないであろう。
代替わりしたばかりで目が届かなかったのだろうと、邪推されるのも致し方がないか。
若いだけで、軽くみられがちであるからな。
家の序列までは下がらないだろうが、個人の序列は下がりそうである。
水音家の若き当主、試練であるな。若さで侮られるなら、逆にそれを利用してやれ。
励めよ。
なんて私、上から目線で、考えている場合ではないのである。
いや、もう上から目線で、イメトレしておいた方が、いいのであるか?
なにせ私はこれから序列上位の者に、上から物申さねばならないのであるからな!
なぜにこうなった!
いけない。私、冷静になれ。
観察を続ける。
水音家の観察は、ここまでにしておこう。
次に土出家である。
今回ヘルプする側だから、平静だな。
こちらはうん、当主だろうっていう、壮年の男である。
さて、どのように振る舞うのか。家の序列は第5位。我らが灰咲家の1つ上である。
ブービーである。分家序列2位の水音家に対し、どのように振る舞うのか。
大いに参考にさせていただこう。
「さて、話はすでに聞いているな?真弓」
口火を切ったのは、当然本家当主様、明臣様である。
分家当主でも呼び捨てである。本家強しか!
「は!今回は誠に申し訳ございませんでした!我が家の管理不行き届きで、御次男様を危険にさらし、果ては若君のお手まで、煩わせてしまいました!」
水音家の当主、真弓様が、ずいと本家当主明臣様に身体を向け、頭を深く下げる。
「うむ。不意の代替わりが重なったとはいえ、大事になるところであったのも、また事実。これを期に、地方の同族の家にも足を運ぶなりして、指揮系統を強化しておくことだ」
「は!肝に銘じまして!必ずや!二度とこのような失態がなきよう、管理を徹底してまいります!」
「ああ、期待している」
「はは!」
やはり気張りすぎではないか?水音分家の若き当主様よ。肩の力を抜くがいい。
「まあ、今回の件、嫁筆頭や篁、晶露にも、よい経験ができたのは不幸中の幸いであったな」
おい!なぜに私を一番最初に挙げた!そして嫁筆頭ではない!許嫁候補筆頭である!そこのとこ、重要であるから間違いなきように!
「とはいえ、咎めなしともいくまい。さて、どうするか?」
やっぱりペナルティがあるのか。仕方がないか。
「うむ。そうだ、嫁筆頭よ」
「はは!」
嫁筆頭ではないが、返事をせぬ訳にいくまい。
悲しいがな。
「今回の発端となった細井川を自らで調べたいか?」
「はい!お許しいただけるのならば!」
えっ!いいのであるか!?もしかして明臣様は、よき人なのか!
そういうことなら、私、この場でしっかりと役割を果たし、立派な啖呵を切ってみせようではないか!
「わかった。その望み叶えてやろう。真弓よ、この嫁筆頭の手伝いとして、誰か人を出せ。そして嫁筆頭に成果をあげさせろ」
なるほど。働けど、成果は他者にか。ぬるいが、確かにペナルティにはなるか。
「男はだめだぞ!篁が焼くからな」
いや!現当主!その念押しはいらない!若君においてそれはないから!一切な!
「そうだな。成人してない、できれば年の近い者がよいな。ほれ、許嫁候補から外れた子がいたな、あれを出せ!」
「はは!かしこまりまして!」
待って欲しい!それは私に対してのすごい罰ではないか!?
家の序列でも、個人の序列でも圧倒的に低い私に、絶対に私を認めていない女子をつけるとか!
喧嘩上等の雰囲気になるの、確実ではないか!
私は平和に細井川を調べたいのある!
明臣様、現当主様、ひどい仕打ちである!
本家明臣、さりげなく大海にもペナルティを科すw
いつもお読みいただきありがとうございます!
少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。
励みになります~。




