第15話 私、今世で初めて捉える
主人公、何かを見つけた!
「む!!」
前当主の隆源様も、異変に気づいたようだ。
周囲を見回している。その隣にいる当主明臣様も、同様の動きを見せている。
「にいさま?」
弟君晶露様が不安げに、兄を呼ぶ。
「静かにしていろ」
若君は弟君を抱き寄せて、周囲を警戒する。
本家一族に感化されたのか、分家の方々も皆、警戒するように周囲を見回した。
「大海、パパの傍を、離れてはだめだぞ」
父も異変を察知したのか、椅子から滑り下りて、私を抱きしめる。
「はい」
そう返事をしつつ、私は視線をあちこちに巡らす。
何かいる?何だ?
どこだ?
なぜに?何が起っている?
と、そのとき、女性の悲鳴が上がった。
「きゃあ!!!」
すばやく視線をそちらに向ける。
緑の着物を着た女性が、持っていた扇子を、風ではじき落とされたらしい。
手首をおさえて、うめいている。
明らかにおかしい。風でそんな事は起こりはしない。
やはり何かいる!
それを皮切りに、次々と悲鳴や怒声が響く。
「うわ!」
「なんだ!」
胸ポケットに入っていたハンカチが、不自然に飛んだり、テーブルに立てかけてあった杖が、倒れたりしている。
そのたびに小さいが、強い風の流れが起っているようだ。極小な旋風。
これはまるで。まるで。
私の背中が、ぞくりと泡立つ。
これは、先ほどに感じた恐怖からではない。
そして、不快なものではない。
歓喜である!
そう!私はこの感じを、前に感じたことがある!
今世ではない!前世でだ!
これは妖精の怒りだ!
妖精が自分が目をかけている者に悪意を向けられた事、それに怒っているのだ!
妖精が、この世界にもいる!
私は歓喜のあまり、大声で、神に感謝の意を叫びたくなった!
ありがとう!
これでこの世界での楽しみが増えました!
私は今日、何回、神に感謝を伝えねばならないのか!
後でまとめて、祈ったほうがいいのか!
興奮していて、考えがまとまらぬ!
落ち着け!私!
まだ妖精の姿を確認したわけではないぞ!
姿を視るまでは、私の憶測に過ぎない!
早くそれを現実のものにする為に、妖精を探せ!
妖精を確認しなければ!
いや!言葉で言い繕うのはよそう!
はっきり言おう!
妖精が視たい!!
私は懸命に目をこらす。
父の腕の中から、できる限り、顔をあちこちに向けて、周りに視線を走らせる。
いない!いないよ!
どうすれば、見つけられるのか!
早くしないと、妖精がどこかに行ってしまうかもしれない!
回せ!回せ!頭を回せ!大海!
その時、前世の長兄の言葉が、頭に蘇った。
「幽霊や精霊を視るのは、普通のものを見るように、目を使って見るのではなく、魂が直接視ているのかもしれないね。だから、結構遠くに彼らがいても、近くにいるように、はっきり視えるのかもしれないね」
どんな時に、言われたのかは覚えていない。
ただ長兄がそう私に言った時には、へえそうなのかなと、軽く流していたけれど。
この言葉がヒントになるかもしれない。
「目で視るのではなく、魂で視る」
って、わからないのである!長兄!
けれど、もしこの肉体ではなく、私の魂が、人よりも、よりよく、物事を視ることができるなら!
どうか今こそ!それを発揮してほしい!
私は一旦目を閉じて、心を静めた。
それからそのまま目を閉じたまま、視界を目から顔、身体全体、そしてその先へと視野を広げるように、イメージする。
目を閉じたことで、物質的に見えるものが排除される。
暗闇の視界、その中で、動きのあるものを捉えようと、神経を集中する。
集中、集中!
「あっ!」
全神経を外界に解放して、捉えたもの。
反射的に目を開いて、そちらに素早く視線を走らせた。
今度こそ、私は目でも確認出来た!
こちらに来て、初めて視た。
まだ形もなさない、けれど強い意思と力を持つ、「妖精」を。
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