第144話 私、川へ帰還す
着地はスマートに!
そう願ったにもかかわらず、である。
落ちた先は予想した通り、川の中にある術式陣であった。
瞬間移動して来た瞬間、水に包まれる。
水深は大人の膝丈とはいえ、である。
小さな子どもの私たちには、十分な深さである。
包まれるだけでなく、川の流れに浚われた。
「あぷう」
例え、緩やかな川の流れであっても、浅き水深であっても、危険度大である。
つまりはアップアップなのである!
晶露様をお助けせねば!
と思いつつも、自身が川に飲み込まれているのである!
「あぷう」
おお、溺れる!
と思った瞬間、晶露様ともども、引き上げられた。
「ぷひゅーーーー!」
「晶露様!筆頭!」
誰に。言わずと知れた、本家子分ズに、である。
私たちが拐かされた後、待機?をしてくれていたのであろう。
よい判断である。しかし、私の呼び方!なんとかして欲しいものである!
なぜに名前でもなく、筆頭なのか?!
そして、省略しすぎであろう!
序列制度の弊害なのか?!
ともあれ、目下の問題は、びしょ濡れであることである。
暖かくなってきたとはいえ、まだ夏にはまだ早い。
川で泳ぐには早い時期である。
本日2度目のびしょ濡れである。
うう。さぶっ!
と思った矢先、
「くしょっ!」
晶露様が、可愛らしいくしゃみをされた。
「ぶしゅっ!」
可愛くないのは、私である。
「お二方!お着替えを!!」
本家子分ズは、可愛いか否かは問題ではないと、自身が濡れるのも構うことなく、早さ優先で、川辺へと我らを持ち帰ってくれた。
その先には、いつ立てたのか大きめのテントがででんとあった。
「お願いする!」
「おまかせを!」
おおっ!阿吽の呼吸かと思うほどに、騒ぎを聞きつけ、テントの外に出ていたメイドさんズに私たちは素早く引き渡された。
そしてふわふわの大きなタオルに包み込まれ、テキパキと着替えさせられた。
加え、身体が温まるようにと、ホットミルクを、もちろん蜂蜜入りである!を手渡してくれた。
「ふーい」
と、私は気のぬけた声が、鼻から抜けた。
空きっ腹に染みる、うまさである。
「ふーい」
晶露様も私を真似て、同じ声を発する。
私たちは互いに顔を見合わせると、ふふっと笑い合った。
めまぐるしい出来事の数々であったが、ひとまず帰って来られたことに、安堵のため息を吐くのを、誰も止めはしないだろう。
メイドさんズは、私たちにサンドイッチも差し出してくれた。
気がきくのである!
できれば持参したお弁当も食べたい!
私たちは、黙々とそれを食べる。
「「ふーい」」
そして、粗方食べ終わると、私たちは満足のため息をついた。
ああ、このまま、疲れの赴くままに、昼寝に興じたい。
しかし、それは状況が許してはくれなかった。
「何、間の抜けた声を、出している」
その声とともに、テント内に入って来たのは、言わずと知れた、若君である。
「晶露がまねをする。常に己を律せよ」
若君!ちょっと厳しすぎやしませんか?!
少しは労って欲しいのである!
そしてせめて晶露様には、心配したとの声がけを!
もう少し言うなら、私も仮にも女子であるのである。
着替え終わったか確認してから、入ってくるのが筋であろう!
若君は、いつもノックを忘れがちである!
気をつけて欲しい!
大海、晶露、風邪を引かないとよい。
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