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第143話 私、晶露様に見惚れる



「そこな術式陣に乗りゃれ」

 人魚様は海からは最奥の砂浜にある、平たい岩を示す。

 そこには術式陣が描かれていた。

 私には魔法陣に視えるが、人魚様はこれを術式陣と呼ぶ。

 魔法陣とは別なのか?

 気になる!しかしここで質問を飛ばす時ではないことは、私にもわかる。

 ここに帰って来た時に質問しよう!

 今は、そう心に留めておくことにする!

 それにしても、この術式陣は、誰が描いたのであろうか?

 人魚様か?それとも金の魚か?

 それとも他の誰か?

 くう!

 知りたい事だらけである!

 それらをぐっと堪えて、私と晶露様は術式陣にのる。

「晶露様にも円陣が視えますか?」

「はい、うっすらとですが」

「私と同じですね」

 そう、この術式陣、言われてわかる程度にしか視えない。

 異能持ちにしか視えないのか?

 それとも、異能を持たない者にも視えるのか?

 異能の力の強弱によっても、視え方が違うのであろうか?

 おそらく私よりも晶露様のほうが、力は遙かに勝るだろう。

 しかし、術式陣の視え方は一緒のようである。

 ならば、視え方は統一なのか?

 ここでも一工夫されているのか?!たいしたものである!

 時間があればスケッチしたい!しかしクロッキー帳がない!時間もない!

 くう!

 絶対戻って来なくてはならないのである。

「その術式陣を起動させるのは単純じゃ。そなたらが持つ異能を、その陣に注入すればいい」

 簡単に言ってくれる!私には外に排出する仕方もわからないし、何よりそれだけの力がない!

 しかしここで1つ、わかった。この術式陣は力を注入しないと動かない系らしい。

「あの、厚かましいお願いなのですが、人魚様が、この陣に、力を込めてもらうことはできないですか?」

 私は恥を忍んで、お願いしてみる。

「ほんに厚かましいの。まあ、やってやりたいところであるが、その術式陣は、そなたら一族の者の力にしか反応しない。自らがやれ」

 それができれば頼んでないのである!

「私にはそれだけの力がないのです」

 人魚様はじっと私を見つめると、ぽつりと呟いた。

「本当じゃ、極小も極小、ほんにないに等しいの」

 言葉で刺した上、哀れみを帯びた目で、見つめないで欲しい!

 泣きたくなるのである!

「じゃが、そちらのこじんまいのは、力があるじゃろ。そちらがやればよい」

 人魚様は晶露様を視て、大きく頷いた。

 なにこの人魚様!私をとことんまでディスる気か!

 負けないのである!うう!

 私は心で涙しながらも、晶露様にお尋ねする。

「晶露様、お願いできるでしょうか?」

「てをあててであれば、だいじょうぶかとおもいます」

 さすが本家のご子息である。

 悔しくなんかない!

「発動にはそなたらの一族の力。微量でかまわぬぞ」

 さっきから極小とか微量とか、私をなぶっているのであるか!

 私は、もう傷つかない!

 久しぶりに使うぞ!

 スルースキル発動!

「行き先を念じて放て!」

「はい!」

 人魚様の術式陣の使い方の教授に、晶露様は返事をすると同時に、陣の真ん中に手を当てた。

「ぼくたちをかわへともどして!」


 瞬間。


 術式陣が光る!


 私たちは浮遊感に包まれる。


「ああ!」

 

 ちゃんと、細井川の川辺に着きますように!!

「必ず戻れよ!」

 人魚様が警告のように、告げる。

 そちらを見ると、人魚様の手の中に不安そうな、ロウがこちらを見つめていた。

「大丈夫!絶対戻ってくる!信じて待て!ロウ!」

「ぴい!」

 その叫びとともに、私たちの視界から、人魚様とロウの姿が消えた。

 くそう!晶露様格好よかった!

 私も、そうなりたいものである!

 せめてあちらで着地する時には、スマートに決めたいものである!

人魚様、人間ができることはやらせる主義。安易に助けない。

いつもお読みいただきありがとうございます!

少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。

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