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第142話 私、川に帰る目処を立てる

 ロウの宣言で、少しテンションが下がってしまった。

 気合いを入れ直そう。

 問題はわかった。今の戦力では、対処は不可能。

 本家子分ズを、若君を呼ぶ。

 どうやって?頭を回せ、私!

 私は頭の中で、状況を整理しつつ、話し始める。

 時間を稼いで、道筋を見つける!

「人魚様、この者たちがなぜ命を落とし、このような姿になってしまったのであるかは、存じません。ですが、人魚様がお祓いになることで、消滅するのは不憫です」

 と言っておく。本音ではさっさと祓って欲しい。しかし魂消滅は不憫である。

 それに先達の契約通りに穏便に進めたい。後で拗れるのは、避けたいのである。

「私たちが浄化し、魂を天に返せればよいのですが、人魚様もお認めの通り、まだ幼く未熟でございます」

 私に至っては、未熟どころか力も極小である。

 人魚様が力がないって視てくれないなら、こちらから申し上げる!

「なれど、これらの者を浄化し、天にあげることが出来る者を存じております。どうか一度、われらを元の場所にお返し願えないでしょうか?」

「自身でそれをなせばよかろう?術式陣を通って来たのであろうが」

 あの川のサークルは術式陣であったのか!魔法陣とは違うのか!?

 気になる!しかし、今は、その好奇心を抑えねば!ぐう!

「違うのです。私たちは、金の魚に強制的に飛ばされてここに参りました。入口は確かに術式陣でございました。が、出口はこの砂浜の中央でございまして、ここの陣はみておりません。況してや使用方法を存じあげません」

 そう!我らは強制的に飛ばされたのである!使い方などわからないのである!

 ここにも術式陣があるのか。見てみたい!

 状況が状況でなければ、人魚様を質問攻めにしたいところである!

 は!また頭が陣に行ってしまった!戻れ、私!会話に集中!

「であるか」

「であります」

 そうだよ。術式陣、使えるなら、とっくに帰ってるのである。

「なるほど。金のは、力業でここに送ったか。術式陣はしるべのみに使用したか。だから少しずれたであるか」

 人魚様!気になる単語を並べて、私を誘惑しないで欲しい!

「使い方など、易いと思うが、そなたらは、豆粒のように小さいから無理か」

 豆粒は言い過ぎであろう!そこまでは小さくない!

 神からすれば、そのくらいに感じるのかもしれぬが、失礼である!

 この人魚様、私の感情を、翻弄するのがうまい!

 脳筋ではないのか!?

 私は怒りを抑えつつ、更に説明する。

「ゆえに、私たちだけで帰ることができないのです」

「ふむ。金のは、こちらの状況を知っているからな。かの血の者を見つけた途端に、問答無用で飛ばしたのであろう。あ奴なら、やりそうなことじゃ」

 納得したように、人魚様が頷く。

「そなたたちを川へ返すのは容易い。だが、本当にここに帰ってくるか?そのまま逃げてしまうのではないか?」

「いえ!必ず帰って参ります。私たちとしても、契約をしているならば、一族としてこの状況を放置することはできませんから。必ず、力ある者を連れて参ります!」

「本当か?」

「はい。あなた様たちとの約定を、破る怖さは知っております故」

「ふむ。それでも、念の為の保険は欲しい」

 保険か。なんて人間くさい神の眷属であるか。

「そうだな、そこの小さき妖精を置いていけ」

「ぴ!!」

 ロウがびくんと跳ねる。

 そしていやいやと首を振る。そしてすがるような目で、私を見つめてくる。

 フクロウの首振り、可愛い。

 だが、それに惑わされない。

「わかりました」

「よし。よかろう」

 人魚様も納得してくださった。

「おーみ!俺はいやだぞ!」

 納得してないのは、本人のロウ。

 怖さと心細さが、先に立つか。

「大丈夫。ロウはどちらかというと神寄りです。ここで待つ間、人魚様に妖精のあり方を教えてもらうとよいでしょう。色々と優しく教えてくれますよ」

 すまない、ロウよ。けれど、見捨てないから、しばらくは耐えて欲しい。

 そうしないと、事態は改善しないのである。

「うむ。妾は愛いものは大好きである。また、幼きものをどうこうしようとは思わぬ」

「ほらほら、ロウ。人魚様もそう申しておられる。安心して待っていて欲しい」

 ならば、人質をとるのもやめて欲しいとは思うが、それは言わないお約束である。

 ロウは私を真剣な目で見る。嘘はないかどうか、判断しているようだ。

 私は自信をもって頷く。

 汚れを持ち込んだ人間の行く末まで考えてくれる人魚である。

 ロウを傷付けはしなかろう。

「わかった。のこる」

 ロウ!男前である!

「ありがとう!なるべく早く帰ってくるからね」

「晶露様も、よいですか?」

 晶露様も逡巡したのち、しぶしぶ頷く。

「はい。ロウ、むかえにくるからまっていてね」

「まってる」

 ロウもけなげに頷いた。

 よし、話はついた!

 早く川辺に戻らないと!これ以上神隠しにあっていたら、若君から外出全面禁止令が発動されてしまう!

 え、もうすでにそれは確定!

 いや、私はまだ諦めないぞ!

ロウ、不憫。頑張れ。必ず大海は迎えに来るよ。

いつもお読みいただき、ありがとうございますv

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