第140話 私、空腹を一瞬忘れる
次の問題は、思考する前に、腹が答えを出した。
「お腹がすいた」
「ぼくも」
「俺もだ!」
それもそうだ。私たちは川辺でお弁当を、楽しく食べる予定だったのである。
それを何の因果か、食べる前にここに飛ばされてしまった。
はらぺこりんである。
お弁当は本家子分の手にある。
私たちが持っているのは、水筒。後は、何かないかとポケットを探そうとしていたその時。
突然、声が響いた。
「何をしておる!早く!祓らわんか!」
「ふへ!?」
素っ頓狂な声が出たことを、許して欲しい。
いきなり怒られたのは、100歩譲ってよしとしよう。
何より私を驚かせたのは、人魚が腰に手を当てて、こちらを睨んで来たからである!
尾ビレをびったんびったんと振っている。威嚇であろうか。
更にである!その人魚、空中に浮かんでいるのである!
いやいや!人魚、魚、は、海から顔を出すのが、セオリーではないか!
私が常識にとらわれている間に、相手はまたも私たちを睨み付ける。
「早うせぬか!不浄のものをこれ以上放置すると、海が荒れるわ!」
ここにいるのは、私たち3人。そして私が最年長である。7歳である。
最年長といっても、心許ない
が、私が対応せねばなるまい。
「そうは言われましても、私たちは突然ここに連れて来られただけで、困惑の窮みであります」
とりあえず状況を説明してみる。
「何を言っておる!ん?奴ではないのか?」
どうやら誰かと勘違いしていたようである。
奴?いったい誰と間違えたのであるか。私たちの誰かがその方に似ているのか?
何にしても、人違いに気づいてくれてよかったのである。
これで話が進みそうである。
「よく見れば、皆小さいの?あれは、どうしたのだ?」
あれとは、きっと我々と勘違いした人間を指しているのであろうが。
それが誰なのかさっぱりわからない。説明求む!
「その、私たちは東京にある細井川より、訳もわからず、金の魚に飛ばされて来たです。こちらこそ説明して欲しいくらいです!」
この人魚様、人外であるのは間違いないが、今までの言から察するに海の守護者、もっと推測するなら、海神の眷属かもしれない。
「金の奴にか?ならば、あれの血を引いているものであろう!金のが間違う筈はないからな!」
「あれの血?」
うーむ。ここで可能性が高いのは、本家の血のことか。私も一応極薄であるが、血を引いているとは言える。ぎりぎりだけれども。私がおまけではなく、ロウがおまけであったか。
そうしてわかったことが一つ。私たちがここに飛ばされた原因。
どうやら、一族のトラブルが原因らしい。
一族の誰かがこの人魚様と約定を結び、この亡霊を退治することになっているのか。
「何を黙って居るか!」
人魚様、意外と短気のようである。
「申し訳ございません。あなた様のわかりやすい説明について、思考を巡らせていたのでございます」
「ふん」
おい。そこは胸を張るところではない。嫌味に怒るところであろう。
まさか。この眉目秀麗な人魚。脳筋であるか。
そう思った途端、残念さを感じる。
「おまえ、なにか失礼なことを考えていないか?」
「いいえ、滅相もありません」
「むむ。まあいい!それよりも、早く祓え!」
だから、私たちにそんな力はないのである!
わかって欲しい!先程小さいと、自らが言ったではないか!
小さいイコール未成熟であると、判断して欲しい!?やはり脳筋なのか!?
「もう猶予もない!私が祓ってしまうぞ!」
どうやら、ここにいる亡霊、悪霊に転換する寸前らしい。
それは判断できるのか。脳筋でも能力が高いのか?それとも格が高いのか?
どちらにしても祓えるなら、祓って欲しい!
ゆえに私の答えは一択である。
「貴方様が祓えるなら、祓って欲しいのです」
私たちにはその力がないからな!
お願いしたいのである!
そして我々を元の場所へ送って欲しいのである!
どうも登場人物に脳筋もどきが多いような気がする‥
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