第129話 私、脳に糖分を補充する
「母、一緒にテーブルについてくれて構わないんだよ?」
晶露様がいらしても、いつもなら一緒におやつを食べる母がなぜか、本家子分ズと同じように、私の後ろに控えるように、正座して座っている。
今日はいつもと違うと、感じたのだろうか。
頭を使う話し合いが行われることを察したように、すっと身を引いている。
ここは、父と同じである。
話し合いの場では、多数の色々な角度から、意見が出されるのが望ましい。
けれども、我が両親は、極力そういった場を避ける傾向にある。
残念似たもの夫婦である。
私は頭を切り替える。
「晶露様、ロウ、まずは頂きましょう。暖かいうちがおいしいですからね」
「はい!」「うむ!」
2人ともよい返事である。
私も目の前にあるホットケーキに、ナイフを入れる。
ホットケーキには蜂蜜とバター。最強の組み合わせである。
ああ、甘さが脳に染みわたる。
「晶露様、おいしいですか?」
「はい!」
「ロウもどうかな?」
「うむ。美味であるぞ!」
2人とも幸せそうである。ちなみにロウのホットケーキは小さく切られて、食べやすくなっている。
私たちはしばし、むぐむぐと食べた。
そして食べ切ると、紅茶を飲む。
これで栄養補給は、満点である。
栄養が回るまで、しばしのんびりお話しよう。
食べてから、すぐに考察モードに入るのは、消化にも悪かろう。
「晶露様、今日は大発見をしてしまいましたね」
今日も、と言った方がよいのか。ゆりのきの巨木でも、不思議体験しているからな。
「はい。びっくりしました」
「そうなのか?」
ロウはわかっていないようだ。ロウにしてみれば、魔方陣は珍しいものではないのかもしれないな。
私も前世では見ているので、それほど驚くものではない。
ただ、転生したこの日本においては、初の魔方陣である。
「晶露様は、はじめて「黒き森人の井戸」に行かれたのですよね。こういったものを見るのは初めてですか?」
「はい、ごほんでも、みたことがありません」
そうなのか。日本では、もしくは、こちらの世界では、魔法陣はメジャーなものではないのかもしれない。学園の図書室で、調べてみなければならぬだろう。
「俺は見たことがあるぞ!」
ロウがシュピッと、右翼を挙げる。
「ほう!それは日本でですか?」
なんと!てがかりか!?
「うむ!テレビのアニメでだ!」
「なるほど!」
アニメ。私も知っている。架空の設定にて、作られる物語であるな。その架空の中で魔法陣があると。元ネタが現実にあるのであろうか?可能性はあるか。
私はついと、本家子分ズに目を向けた。
「貴方たちは井戸に魔方陣があったことを、知っていましたか?」
「いえ」
そうだろうとも。私とともに驚いていたからな。
「このような円を見たことはありますか?」
「ヨーロッパにおいて、妖退治に使われる魔方陣に類似しているかと」
「ああ!日本以外ではその、ここに書かれている魔方陣なるものを、現在も使用されているのですね!」
「はい。そう聞いております」
「日本では、使用されないのですか?」
「日本では、呪符や護符などが使用される場合が多いです」
素晴らしい!素晴らしい情報である!
前世の私が住んでいた世界の魔方陣と、類似の魔法陣が、この世界にもあるのであるか!
ぜひとも調べてみたいものである!
ああ、興奮を抑えきれない!
が、抑えなければならぬ!そうしなと、前世の記憶を元に、ぺらぺらと色々しゃべってしまいそうである。
前世の記憶、それも異世界の記憶があることは、秘密にしなくてはならない。
色々調べられるのはごめんである。自分が観察対象にはなりたくないものである。
私はお茶を母に片付けてもらうと、再度魔法陣を描いた紙を広げた。
さあ、これから考察タイムである。
「近くに」
本家子分ズ。君たちも協力して欲しい。
そして松也さん、いづこに行かれたのであるか。
戻ってきて、意見を聞かせて欲しい。
私の呼びかけに、少しのためらいののち、本家子分ズ2人がにじり寄ってくる。
晶露様も、魔方陣をのぞき込む。ロウに至っては、ケント紙の余白にのって見ている。
「これは何を表しているのだと思いますか?」
期待を込めて、本家子分ズに尋ねる。
「わかりません。我らは魔方陣を使いませんから」
「そうですか」
がっかりである。
ある程度知識があるかと思ったが、先程披露したまでのようである。
私も前世で戦場で使用していたが、専門家ではない。
ああ!!エルフの友が今、ここにいれば!
私が肩を落とした横で、ロウがじっと魔方陣を見つめる。
「これは水を浄化する陣だろう」
何を悩むことがあると、いうようにぼろりと零した。
「な!!!」
なぜにわかる!?
そうか!エルフの共通知識かーーーー!
ロウ!いてくれてよかった!
ロウ!ここにきて活躍するのか!?
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