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第13話 私、若君待ちで、頭が散歩に出る

 灰咲家の家人3人が打ち解け合ってことで、少し肩身の狭さが抜けた気がした。

 親戚付き合いは遠慮したいものの、気苦労が多そうな吉助さんとは、細くてもよいので交流を持っていけたらと思う。

 そして、もう少し仲を深めたならば、灰咲家筆頭の家の書架をみせてもらえれば、この上ない幸いである!吉助さんなら許可してくれそうだ!

 紅茶を口に含みながら、人脈が出来たと私は頬を緩ませた。

 が、これ以上は、望めないだろう。

 何せ私は分家序列最下位のそれも末の娘である。私と交流を持ったところで他の分家の方々には、メリットがない。

 周りを見回して改めて思うが、ここに参加している方々、皆、見目麗しい人が多い。

 鍛錬を怠って、身体がたるんとしている方々も、昔はそれなりにおモテになったのだろうなって、思わせる方々が多いのである。

 分家序列最下位である我ら灰咲家の者でも、容姿自体は及第点をもらえる程度の顔つきである。

 富と権力があると、ふ、皆まで言うまい。

 だからか、序列上位のお嬢様方は自信がおありようで、儀式の決まりに抵触しないギリギリの線で、若君にアピールをしている。

 まるで前世の長兄の婚約者を決める時の、パーティーを見ているようだ。

 現世ではまだ子供と見なされる若君は、ピカピカの小学一年生である。お嬢様方も小、中学生である。

 幼少といえども、女性か女性なのか。

 お子様年代の若君へのアプローチが、堂に入っている。

 幼稚園に通う身としては、少しバグりを感じる。

 私などは、若君の許嫁になど端から望んではいないから、このテーブルに恐れ多くも若君がお越しになって、お声をかけていただいても、控えめに簡潔に、お答え申し上げるだけである。消極へと逆ふりする気満々である。

 本家の嫁など、なりたい者がなるほうがよい。

 やる気と気概がないと、厳しい立場である。続かぬだろう。

 そう考えた瞬間、そこがおまえの悪いところだ!どうして人の輪の中に積極的に入って行こうとしないのか!

 と、前世の長兄に怒られたような気がした。

 前世の父が、私を強制的に軍に入れた際、長兄からはなるべく早く呼び戻す。だから死ぬなとの言葉を賜った。

 そう、長兄は私を見所のあるやつであると、買ってくれていたのだ。

 ちゃらんぽらんの私であったのに。

 だから私なりに奮い立って、戦地でがんばったのだが、呼び戻される前に死んでしまった。

 申し訳なかった。長兄さま。

 長兄の薫陶よろしく、上昇志向を持つべきか?そのために積極的に行くべきか?

 とも、一瞬頭をよぎったが、私は首を振る。

 ここで積極的にならんでもいいだろう。他のところでやる気をみせようと、思い直す。

 分家序列最下位の灰咲家である。万に一つ、若君の許嫁になる可能性はない。

 ここで積極性をみせれば、分家序列上位に睨まれるだけで終わる。

 序列を崩すつもりなら、入念な準備が必要である。

 そして、死闘覚悟をしなくてはならないのだ。

 ここはおとなしくしておくのが、吉だろう。

 それは置いておくとしてだ。

 若君の許嫁とは、どういった基準で、選ばれるのだろう。

 それは興味がある。

 年の近さか。

 フィジカルの丈夫さか。

 地頭のよさか。器量のよさか。

 それとも、富か伝手の多さかか。

 お金は重要だ。

 しかし、本家が一番財産があるだろうから、それは関係ないか。

 やはり父が言っていた分家序列の決め手は力、その力か。

 力って、何の力なのかか?

 私が先に推測した通りの力か?

 ああ、返す返すも、この館の図書室を閲覧できなかったのが、口惜しい!

 今一歩のところであったのに!

 もし入れていたならば、この家の歴史書などがあったに違いない。

 あそこが図書室とは限らないと?

 いやいや、あの部屋は図書室であった!

 私は確信している!

 もし好配の儀が始まるまでに時間があるようなら、書物を読みたいとメイドさんに申し出てみよう。間違っても、私を部屋に連れ戻した貫禄メイドさんに頼んではならない!そうだ!きっとこの一族の歴史書をみれば、私のうちなる魔力もどきのこともわかる!かもしれない。

 うん。ぜひとも今行われている初見えの前儀が終わったら、頼んでみようではないか!

 私は諦めない!

 ふう。若様待ちで椅子に座っているだけなので、どうも頭があちらこちらに回転する。どこまでも思考が散歩に行ってしまう。

 私の悪い癖である。それでいつもねいちゃんに、迷惑をかけている。すまない。幼稚園の友よ。

 私は再度、前方に目を向ける。

 若君の進行。のろのろである。

 建前としては、自分の将来の嫁を探すのだから、じっくり時間をかけるべきである。

「今いらっしゃるテーブルは、クロスが白」

 私の呟きを吉助さんが拾ったのか、答えてくれる。

「分家序列3位の風祭家のテーブルだね。確か風祭からは候補者は1人だったと思うよ」

「はい、確か分家序列第3位の風祭家筆頭の次女、風祭伊吹(かざまつりいぶき)様、10才でしたか」

 父が吉助さんの情報に付け加える。

「可愛らしい方ですね」

 白地に百合の柄の着物を着ている。百合も白であるのに、ちゃんと柄が見える。

 すごいな。

 そして吉助さんも、ちゃんと分家の人物情報が頭に入っているらしい。

 直前に決まったとしても、分家当主代理だ。頭に入ってないと困るか。

 吉助さん大変である。

 私は親戚の名前とか顔など、覚えたくない。

 そういえば、前世でも、社交場では苦労した覚えがある。

 戦地では人と名前は一発で覚えられたのが、不思議である。

 しかし後まだ分家2家が残ってるのか。

 これは腹もこなれてきたし、デザート3巡目を決行すべきか?

 イチゴのミニタルトやマンゴームースを食べたい。

 残りの紅茶を飲み干しつつ、よし行くか!と私が席を立ったところで、

 突如、会場へ私よりも小さい子が、飛び込んで来た。

 何事か!?

いよいよトラブル発生!?

いつもお読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

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