第126話 私、興奮し、描きつづる
これは描き写さねばなるまい!
前回の新宿御苑での外出時に、クロッキー帳を持参しなかったのを私は残念に思ったのだ。
今回はそれを教訓として、持参しているのである。
私はその場で急ぎ、それをスケッチした。
しかしそれは、とても骨が折れた。
なぜなら、私が井戸の水に触れていないと、魔方陣は浮かびあがらない。
加え、魔法陣を視えるのは、私のみであったからだ。
どういう仕組みなのであろうか?
異能の力が微弱だからか。それともこの魔法陣を視る為には、何か条件があるのか?
いや、追求は後にする。
今は人の来ぬ間に、この魔法陣を記録しなければならぬ。
視える私が描くのが、一番正確ではある。
が、魔法陣が浮かび上がるのは、私が井戸水に触れている間だけ。つまりは、私は井戸に片手を触れていなければならなかった。
が、幸いにして、少し触れていればよいだけであった為、私は小指を水に浸しつつ、急ぎ魔法陣を描き記していった。
いつ人が来るかもわからない。できるだけ早く、できるだけ正確に。
私はあらゆる角度から、気になる箇所はズームして数枚スケッチする。
夢中になりすぎて、小指が水から離れてしまい、魔法陣が消えてしまうなどのプチトラブルを起こしつつも、なんとか描き終えることができた。
前世の記憶により、魔法陣を描き慣れていたのも、素早く描き写せた一因だろう。
やはり何事も経験である。
「もう、戻して大丈夫です」
私は納得いくまで描き終えると、本家子分ズに、玉砂利を戻してもらうように頼んだ。
井戸が元に戻ったのを確認すると、私はほっと息を吐いた。
いたずらをして居た訳ではないが、自身の所有物でないものを無断でいじるのは、やはり抵抗感があった。無事、元に戻せて幸いである。
そう言いつつも、鉢の底以外にも、魔法陣が隠されていないかと、井戸の周りを、集中して視たり、ぺたぺたと触れてみたりしたが、他に魔方陣は見当たらなかった。
ふむ。特出すべき点は1点だけであったか。
いや、1点だけでも僥倖であろう。
私の気が済んだのがわかったのか、黙って見守っていてくれた晶露様が、近寄ってきた。
「申し訳ありません。つい夢中になってしまって」
晶露様をお一人で、放っておいてしまった。
「いえ。よいのです。おおきなはっけんがあったのですから」
私がスケッチしているのを見ていた晶露様である。察してくれたのか。
誠に出来たお子様である。
「ええ!大発見です!それでできれば、これから家に帰って、この魔法陣について考えたいのですが!」
本当!すぐにでも!
「おひとりで、ですか?」
途端、晶露様が悲しそうなお顔をする。
違うのである!決して部屋に1人こもって、心ゆくまで考えたいとは、ちらりとも思っていないのである!
「いえ!もちろん!晶露様もご一緒にですよ!お泊まり会は継続です!それに、1人で考えるより、2人で考えたほうが、考えが広がりますから!お力を貸していただけますか?」
「はい!」
晶露様の顔が、ぱっと明るく輝いた。
ふう。あぶない、あぶない。
もう一度言おう。決して晶露様より、魔法陣を優先しようなどとは、考えていないのである!
こほん。
かくて、私たちは急ぎ我が家へと、車を走らせたのである。
この「黒き森人の井戸」、外れではなく、大当たりであった。
大事なことなので、締めに記しておくのである!
2連続で、当たりを引いたのである!
やはり私は引きが強い!
新たな謎が登場。
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