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第108話 私、晶露様を自宅にお泊めする

「おまきいただき、ありがとうございます」

「俺も来たぞ!」

「ようこそいらっしゃいました。さあ、なかへ」

 ここのところ週末に行われる挨拶をすませ、晶露様とロウを招き入れる。

 我が家への初訪問を知恵熱という形で、晶露様は強制帰宅と相成ったが、若君は寛大(?)にも我が家への外出を禁止することはなかった。

 それを知った時の私の安堵感は、いかばかりであっただろう。諸君の想像にお任せする。

 そしてそれから、2度3度と、土曜日に日帰り訪問が続き、本日いよいよお泊まりが決行されることに相成ったのである。その為、本家子分はいつもの土曜日よりは多い荷物を持っている。

 晶露様がお熱を出さないとよいと願うばかりである。 

 靴を脱いで、廊下を歩く晶露様も、いつもよりも目の輝きが違う。

 それでも興奮を抑えようとしているのがわかる。

 興奮のあまり熱が出たならば、連れ戻されるのを理解しておられるのだ。

 初回訪問の二の舞は踏まないよう、平静に努めようとしておられるのだ。

 晶露様はまったく賢いお子である。

「晶露様、今日の予定は確認して行きましょうか?」

 居間に案内し、我が母が麦茶を供し一息ついてもらった後に、私はそう声をかけた。

「はい!」

 晶露様は自身の脇に置いた肩掛け鞄から、しおりを取り出すと、テーブルの上に広げた。

「きょうは、これからおだいどころにて、クッキーをつくります。それをおやつにたべたあと、おにわであそび、ゆうしょくをたべたあと、おふろをいただき、ねえさまとねむります」

「はい。そうですね。今日行う中では、クッキー作りが一番のイベントですね。楽しみですか?」

「はい!ぼくはおかしをつくったことがないので、とてもたのしみです!」

 うむ。そうであろうとも。本家のご子息である。厨房になど入ったことすらなかろうて。

 若君がよく許したと思う。

 私と晶露様は週末にむけて、毎回しおりを作る。

 それを予め若君に見せることになっているのである。

 今回のクッキー作りの項目をみて、若君は初め、眉をよせたものだ。

 しかし、晶露様の

「にいさまにも、たべてもらえたらうれしいです!ぼく、がんばってつくりますね!」

 との無邪気な一言に、否の言葉は出せなかったのである。

 若君は弟君に弱い。

 できれば若君にも、料理の1つも体験しておいて欲しいものである。

 人間、何があるかわからない。

 経験はその人の財産である。

 何事も知識だけでなく、実践で学んだものは強い。

 それがどこで活きてくるかわからぬものである。

 前世でも戦地で料理の1つでもしておくべきだったと、嘆いたものである。

 そうすれば、少ない食材でも、最大限活かすことができたであろうに。

 知識、そして実践。これ大事である。

「ねえさま?」

 頭がまたあらぬ方向に向かいだした。

 切に幼稚園の友、ネイちゃんがここにいてくれたらと思う。

「はい。では、これからエプロンをつけて、早速取りかかりましょうか」

「はい!」

 晶露様はさっと立ち上がると、私のそばにとてとてとお越しになられた。私はその晶露様の首にエプロンを引っかける。

 そして後ろを向かせると、腰のひもをリボン結びした。

「うふふ」

 晶露様、フクロウのワンポイント柄のエプロンのつけて、嬉しそうである。

「我は何をすればよい?」

 テーブルで、同じくおちょこで麦茶を飲んでいたロウが、私に問いかけてくる。

「そうですね。クッキー作りには参加が難しそうなので、庭を巡回して来てくれますか?何か気になるものがあったら、すぐに知らせてください」

「わかった!」

 ロウはふんと1つ気合いを入れると、パタパタと庭へと飛んでいった。

 念の為の報告となるが、ロウが家に初訪問した時には、何事も起こらなかった。

 しかしそれは結果であり、用心に用心を重ねることは重要だと、ここでは言っておく。

 もう1つ。ロウについて報告しておこう。

 ロウも遅いとはいえ、少し長い距離を飛ぶことができるようになった。

 これは新宿御苑を訪れた効果である。

 どうやら人間とは違って、妖精たるロウは、ゆりのきの巨木から得たエネルギーを自身の力に変えられたらしい。そしてその祝福を成長に使った。

 くうっ!羨ましい!それをどうにか解明できぬものかと、ロウに尋ねてみたが、ワーっと身体に染みこんで、ポワッとなったら、できることが増えたとの言。

 まるでわからない。妖精に理由を求めてはいけないのかもしれない。

 書籍を調べたりしているが、まだ真相には至らない。

 こちらには精霊や妖精のことに関する文献があまりにも少なかった。

 こんな時、前世の友がいてくれたなら、と、切に思う次第である。

 日々情報の収集に努めておれば、きっと進展があるであろうと信じる次第である。

 なお、ロウのゆりのきの巨木効果について、諸君に報告がこれほど遅れたのは、外出禁止令の発動があまりにショックであったと弁解しておく。

 若君には報告書はすでに提出済みであることを、一言添えておく。

いつもお読みいただき、ありがとうございますv

もし少しでも続きが読みたいっと思っていただけましたら、☆をぽちりとお願いいたします!

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